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2016/07/14

マルディ・グラ・インディアンのプリミティヴかつモダンなグルーヴ

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ニューオーリンズにマルディ・グラ・インディアンという人達がいる。インディアンといっても北米大陸先住民ではなくアフリカ系、すなわち黒人だ。どうしてニューオーリンズの黒人達が「インディアン」と名乗るようになったのかは説明が面倒くさいので、調べてみてほしい。

とにかくフランス植民地時代のフランス系植民者がニューオーリンズに持込んだマルディ・グラ(謝肉祭)の際に、グループ(レベラー)を組んで仮装してカーニヴァルでパレードをす黒人集団がマルディ・グラ・インディアンで、個々の集団をトライブと呼び、現在では50〜60個のトライブが存在するらしい。

マルディ・グラで彼らが練歩く様子は僕は写真でしか見たことがない。僕のもっぱらの興味は言うまでもなく彼らのやる音楽。最初はニューオーリンズのコンゴ・スクエアで行われていたものを発祥とする打楽器アンサンブルとそれに乗せての歌のコール&リスポンスで、それをやりながらパレードしていたらしい。

ってことは奴隷として北アメリカ大陸に強制移住させられたアフリカ人たちが、そのアフロ・ルーツを色濃く出した音楽だったってことかなあ?わずかに読みかじる知識では、かつて奴隷解放前もニューオーリンズのコンゴ・スクエアでの毎日曜日にはまあまあ自由な音楽活動が許されていたんだそうだ。

ただしマルディ・グラ・インディアンの音楽が鮮明に分るようになるのはもちろん録音がはじまってからで、しかもそれはそんなに昔の話ではない。有力トライブの一つ、ワイルド・マグノリアスが1970年に一枚のシングル盤レコード「ハンダ・ワンダ」をリリースしたのが僕の知る最初ということになる。

マルディ・グラ・インディアンの音楽はもちろんもっとずっと歴史が古い。遅くとも19世紀半ばにはトライブでパレードしていたようだから、当然その頃から音楽を伴っていたはず。だからどうして1970年まで録音がないのかちょっと不思議だ。僕が知らないだけであったりするのだろうか?

とにかくワイルド・マグノリアスの1970年「ハンダ・ワンダ」が最初のレコードで、このトライブは続いて74年にファースト・アルバム『ザ・ワイルド・マグノリアス』をリリースした。録音は前年73年。これの一曲目が「ハンダ・ワンダ」なんだけど、それは70年のシングル盤と同じ音源なのだろうか?

その『ザ・ワイルド・マグノリアス』一曲目の「ハンダ・ワンダ」は既に打楽器アンサンブル+チャントのみというプリミティヴなものではない。ドラムセット、エレベ、エレキ・ギター、ピアノ等キーボードなどが賑やかに入る完全なるモダン・ポピュラー・ミュージックだ。同時代のファンクにソックリ。
さらにサックスのソロも出る。リード・ヴォーカルは1964年以来ワイルド・マグノリアスのビッグ・チーフ(酋長)であるセオドア・ボ・ドリスで、「ハンダ・ワンダ」の作曲者もボ・ドリスになっている。1970年代の電化ファンク・サウンドに乗って、リード・ヴォーカルとコーラス隊とのコール&リスポンスが聞える。

一曲目の「ハンダ・ワンダ」だけでなく『ザ・ワイルド・マグノリアス』収録曲はどれもこれもモダンなファンク・ミュージックなんだよね。なかにはトラディショナルとクレジットされている曲もあって、一番有名なのは六曲目の「セインツ」だろう。こういう曲名になっているけれど「聖者の行進」だ。

「聖者の行進」の焼直しである「セインツ」では、最初エレベのファンキーなラインが出て、打楽器が入り、他のバンド・メンバーも演奏をはじめグルーヴしはじめると、ボ・ドリスの声で「オ〜、ウェン・ザ・セインツ・ゴー・マーチン・イン」と歌いはじめるのが聞える。その後の歌詞は独自のものだなあ。
しかしこんな「聖者の行進」は僕は聞いたことがない。完全にファンク化されていて、ファンキーなエレベ・ライン、エレキ・ギターのグチョグチョと鳴るカッティング、デジタル・キーボードのサウンドなど、伝統的ゴスペル・スタイルやジャズ歌手のヴァージョンで馴染んでいるとビックリする。

僕なんか最初に『ザ・ワイルド・マグノリアス』を聴いた時、その六曲目「セインツ」が「聖者の行進」であることにしばらく気付かなかったくらいだ。ただし「セインツ」でも伝統的になる部分があって、曲の終盤に打楽器以外の楽器の音が止み、パーカッション+ヴォーカル・コーラスのみとなる部分がある。

僕はそのプリミティヴなサウンドになる部分で初めてこれが「聖者の行進」だと気付いたくらいだ。そのまま曲が終るんだけど、そこまでの部分は電気楽器が派手に鳴るファンク・サウンドだからなあ。ファンキーなアレンジはこの曲含めアルバム収録曲全てキーボードのウィリー・ティーが担当している。

アナログLPではその六曲目の「セインツ」で終りだったらしいが、僕はそれを知らない。CDリイシューで初めて買ったバンドだからだ。そしてリイシューCDには他に五曲追加されていて、そのうち四曲は<トラディショナル>とクレジットされている。有名なニューオーリンズ・スタンダード「アイコ・アイコ」もある。

リイシューCDで追加された五曲のなかで一番興味深いのは、アルバム全体の九曲目「ゴールデン・クラウン」じゃないかなあ。これも伝承歌とのクレジットだけど、この曲では打楽器以外の楽器は一切入らない。聴いた感じ多分ドラムセットも入っておらず、伝承打楽器アンサンブル+チャントのみという構成。
その伝承打楽器+歌だけで構成されている「ゴールデン・クラウン」も、歌はリードを取るボ・ドリスとコーラス隊とのコール&リスポンス形式。その背後で(おそらくは)アフリカ由来の伝承打楽器が鳴り続けている。最初は打楽器と歌だけだったというコンゴ・スクエアでのマルディ・グラ・インディアンの音楽はこんな感じだったんだろうか?

初期の彼らの音楽は録音がないんだから実際に聴いて確認することはできないけれど、おそらくはこんな感じだったのかな?と想像を逞しくすることができる九曲目の「ゴールデン・クラウン」。しかしその冒頭はプリミティヴな雰囲気だけど、すぐにアンサンブルになる打楽器のみのリズムは現代的グルーヴにも聞える。

「ゴールデン・クラウン」のモダンなファンク・グルーヴに近い打楽器のみのアンサンブルを聴いていると、プリミティヴにしてかつモダンであるというアフリカ音楽の洗練を感じるんだなあ。グルーヴ感が現代ファンクのそれに近いってことは、こういうリズムは昔からあったってことなのかなあ?

「ゴールデン・クラウン」はワイルド・マグノリアスの1988年作『アイム・バック・・・アット・カーニヴァル・タイム!』でも再演している。これは最初の二枚の後しばらくアルバム・リリースから遠ざかっていた彼らの久々の復帰作で、僕はファースト・アルバムの次に好きなものだ。

『アイム・バック・・・アット・カーニヴァル・タイム!』五曲目の「ゴールデン・クラウン」も、ファースト・アルバムのヴァージョンと同様打楽器とチャントのみという構成で同じような音楽なんだけど、リズムがよりシャープでタイトになっていて、こっちの方が一般のファンク・リスナーにはウケるだろう。

『アイム・バック・・・アット・カーニヴァル・タイム!』には三曲目に「アイコ・アイコ」のこれまた再演があって、それも打楽器アンサンブルとヴォーカルのコール&リスポンスのみで、しかもグルーヴィーでファンキー。ファースト・アルバム収録ヴァージョンはなぜだか4ビート・アレンジで、エレベがウォーキング・ベースを弾いていた。

『アイム・バック・・・アット・カーニヴァル・タイム!』にはプロフェッサー・ロングヘアにちなんだ曲も二つ入っている。六曲目の「ティピティーナ」と九曲目の「ビッグ・チーフ」だ。どっちもリバース・ブラス・バンドが参加している。このブラス・バンドはアルバム中他にも多くの曲に参加していて賑やかでイイ。

なおファースト・アルバムでも『アイム・バック・・・アット・カーニヴァル・タイム!』でもエレキ・ギターを弾くのはお馴染みスヌークス・イーグリン。後者でのエレベはあのミーターズのジョージ・ポーター・Jr だ。ファンキーなんだよね。ファースト・アルバムのベース、ジュリアス・ファーマーもかなりカッコイイけれど。

また『アイム・バック・・・アット・カーニヴァル・タイム!』の次作1996年の『1313 フードゥー・ストリート』には、既にニューオーリンズに移住していたギタリスト山岸潤史が参加してエレキ・ギターだけでなくキーボードも弾いている。キーボードの腕の方はよく分らないが、ギターは超カッコイイよ。

『1313 フードゥー・ストリート』は二曲目がルイ・ジョーダン・ナンバーの「ラン・ジョー」だ。この曲はニューオーリンズの音楽家がやることがあるよね。ダーティ・ダズン・ブラス・バンドもやっているアルバムがある。ってことはこの「逃げろ、ジョー!」てのは逃亡奴隷のことなんだろうか?

ニューオーリンズの黒人奴隷逃亡は、その後彼らが「インディアン」と名乗るようになる事情と深く結びついているのだが、それは事がやや入組んでいるのとはっきりしない部分もあるので僕もイマイチ分っておらず、だから最初に書いたように説明がちょっと面倒くさい。みなさんで調べてみてほしい。

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