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2016/12/12

ネット用語「スパム」のルーツとスパイシーな英国(音楽)文化

Unknown

Spam

Montypython_spam2








今ではただ単に「スパム」(Spam) とだけ言えば、それはネット上での迷惑メールや迷惑行為や迷惑アカウントを意味するようになっている。ひょっとして今ではそれだとしか認識されていないだろうか?英語圏はもちろん日本語文化圏でもそれくらい一般的な使用法になっているよねえ。

もちろんご存知の通りスパムはアメリカのホーメル・フーズ社製のランチョンミートの缶詰のこと。すなわち食べ物だ。欧米では一般的に普及しているが、日本国内でスパムの缶詰は、おそらく沖縄県民以外には馴染が薄いかもしれない。沖縄以外のいわゆる本土では、輸入食品を扱う店じゃないと買いにくいからだ。

スパムが(おそらく)沖縄でだけよく知られているのは、もちろんアメリカ統治時代が長かったせいだ。今でも米軍基地がたくさんある。米ホーメル・フーズ社と関係がある沖縄ホーメルもあるし、他社製でもポークと沖縄では呼ばれる肉の缶詰がある。

がしかしそんな食品名であるスパムが、どうしてネット上の迷惑メール/アカウント/行為を指すものとなってしまったのかは、少し説明が必要かもしれない。ご存知の方も大勢いらっしゃるかもしれないが、ひょっとしてご存知ない方のためにちょっとお時間をいただきたい。そしてそれは音楽を含む英国文化とも密接な関係があるのだ。

英国 BBC が1969〜74年に製作・放送した『空飛ぶモンティ・パイソン』というコメディ番組がある。同国のコメディ・グループ、モンティ・パイスンが出演したもので、日本でも1976〜77年にかけて放送されたようだ。僕は英国製のこの手のコメディ番組が大好きで、当ブログや Twitter のアイコンにしている赤いぬいぐるみも、英 BBC 製作の幼児向けでちょっとおかしくノンセンスな教育番組『テレタビーズ』の登場人物(人物?)から拝借している。

『テレタビーズ』は何年頃だったか日本でもテレビ東京が放送したが、僕はそれは全く観ていない。僕はもっぱら英国直輸入のヴィデオを販売する店でテープを買って観て楽しんでいた。幼児向け番組だから英語が非常に簡単で(といってもメイン・キャラクターの四人は意味のある言葉らしきものはほとんど発さず、ナレイションが英語で喋るだけ)、だから初心者向け英語教材としても好適なんだよね。

いやまあその、僕は別に英語教師だから教材として『テレタビーズ』に興味を持ったとか、そういうことではない。最初に見かけたのは確か銀座のソニープラザ(今でもあるの?)でだったと思うけれど、店内をぶらついている時に、ヴィデオ・テープのパッケージに映る四色の四人がなんだかかわいくて面白そうだなと思っただけなのだ。それで観てみようと思っただけ。

『テレタビーズ』自体にはもはや関心はないが、でもあのなかでも英国特有のユーモア感覚が活かされていたように記憶している。そんな何百年間も続く英国のコメディ文化を、現代のテレビ番組に限らず大きく形作ったのが上記1969〜74年の『空飛ぶモンティ・パイソン』だったのだ。たぶん DVD を売っているだろうと思うので、興味のある方は是非。

その『空飛ぶモンティ・パイソン』のなかで1970年に放送された、第2シリーズ第12話のラストに放送されたスケッチがネット迷惑行為としてのスパムの語源だ。そのスケッチは一般に「スパムの多い料理店」とか「スパムの多い大衆食堂」などと呼ばれている。

そのスケッチはそんなに長いものではないので、もしまだご覧になったことのない方は、下に貼る YouTube 映像を是非ちょっとご覧いただきたい。同じものがいくつか上がっていたが、英語字幕が出るこれがリスニング能力に自信のない方にも分りやすいと思う。
ご覧いただければ僕が説明する必要はなにもないようにも思うけれど、このスケッチのなかに頻出するスパムという言葉はもちろん食品名だ。1970年だからまだインターネットなど一般には普及しておらず、そもそもそんな時代が到来するなんて考えていた人は少なかったはず。

食堂にやってきた客がウェイトレスにメニューを尋ねるとウェイトレスはそれを読み上げる。注意してほしいのはその最初の二つにはスパムは含まれていない(笑)のだが、すぐに「なんちゃらとスパム」ばかり連発するようになり、次第にスパムしかないような状態になってしまう。

スパムが連発されスパムだらけになり、すると周囲にいたヴァイキングたちが「スパム、スパム、スパム……」と合唱をはじめ、食堂はワケの分らない大混乱状態になる。料理を注文しようとした客は逆上し、もはやなにもできないというようなことになってしまうのだ。

カットが変わって歴史学者が登場しヴァイキングについて語りはじめるが、その話の内容もすぐにスパムだらけになり、背景の幕が吹っ飛ぶとそこは元の食堂で、結局ヴァイキングがスパムを合唱。食堂をバックに流れるクレジットも「SPAM」で溢れているじゃないか。

とこここまで説明すれば、この「スパム」がどうしてネット迷惑行為を指す言葉になったのか、もうみなさんお分りだと思う。正常なというか普通の行為(このスケッチの場合料理の注文)をやりたいだけなのを、別のなにか(この場合スパム)を執拗に繰返すことによって妨害して不可能にしてしまうので、スパムがそんなネットでの妨害行為、妨害主の意になったのだ。

なお、このモンティ・パイスンのスケッチにおけるスパム(spam)は、発音の類似性を使ってスパーム(sperm)とのダブル・ミーニングになっている。sperm とは精子のこと。料理名やヴァイキングの歌う合唱が男性器や性行為、特に男性同性愛の意味合いを帯びている。これを具体的かつ詳細に説明するのは遠慮しておこう(笑)。

モンティ・パイスンの結成は1967年らしいが、大人気になったのはやはり紹介しているように1969年にはじまった『空飛ぶモンティ・パイソン』によってだった。このコメディ・グループは同時代の UK ロッカーたちと関わりが深い。ボンゾ・ドッグ・バンドのニール・イネスはもう一人のモンティ・パイスンみたいなもんだし、『空飛ぶモンティ・パイソン』の前に流れていたモンティ・パイスン出演の子供向けテレビ・ドラマにはボンゾ・ドッグ・バンドが出演している。

ビートルズとの関わりも深い。しかもそれにはボンゾ・ドッグ・バンドが絡んでいる。リンゴ・スターは作品に出演し、ジョージ・ハリスンもメンバーと親しく映画に出資した。ジョン・レノンは死の二日前にインタヴューで、「もし生まれ変われるのなら、ビートルズではなくモンティ・パイスンのメンバーになった方がある意味では幸せなのかもしれない」と語っていた。

ビートルズの『マジカル・ミステリー・ツアー』をご覧になった方であれば、世界で最も有名なこの四人組の、少し毒の効いたユーモア感覚がお分りだと思う。それはモンティ・パイスンやボンゾ・ドッグ・バンドと共通するものだ。1967年に BBC で初放映されたあのビートルズの映画にはボンゾ・ドッグ・バンドが出演しているし、音楽にも関わっているよね。

ビートルズとボンゾ・ドッグ・バンドの音楽的関係については詳しく書くことがあると思うし、そもそもビートルズと関係なくボンゾ・ドッグ・バンドについて書くかもしれない。またビートルズのなかにあるそんな英国式のスパイシーなユーモア感覚と、それが英国ミュージック・ホールの伝統とどう繋がっているか、その系統にある UK ロッカーたちについても書くことがあるだろう。

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