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2017/01/19

ブルーズ・ギタリストとしてのアイク・ターナー

Unknown

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なぬ?!アイク・ターナーってピアノも弾くのか!そもそもピアニストで、その後ギターもはじめてそっちにスウィッチして、その後は両方こなすようになったのか!たった今初めて知ったぞ(恥)!僕、無知なアホです。こんなのでアメリカ黒人音楽愛好者のようなことを言っているんだから、聞いて呆れるよねえ。まあ僕の文章なんて普段から無知・アホ丸出しであるのがとっくの昔にバレバレのはずだから、この程度でどなたも驚かないだろうが、僕にとってはアイクがピアノも弾くと知ったのは、17歳で音楽に熱中するようになって以後現在までで、最大級の衝撃だ(←大袈裟)。

じゃああれか、あの「ロケット・88」ではアイクはギターじゃなくピアノなのか?冒頭ギターよりもまず先に聴こえはじめるピアノによるブギ・ウギ・パターン、あれがアイクの演奏なのか?あの1951年録音時点でアイクはまだギターははじめていないのか?既に両方できたとしてもまだ多重録音などはほぼ不可能な時期だから、どっちかだけだ。

と思って記載がないか探してみたら、僕の持つアイクの単独盤はどれもそのあたりの正確なパーソネル記載がなく、困ったなあと思って、あ、そうだ、 中村とうようさん編纂の『ブラック・ミュージックの伝統〜ブルース、ブギ&ビート篇』に「ロケット・88」があったよなと思い出して、附属ブックレット掲載のディスコグラフィカル・データを見たら、確かに、アイクはピアノとなっているじゃないか。ギターはウィリー・カイザートとなっている。

そうだったんだぁ。いつ頃だったか「ロケット・88」を初めて聴いて、なんてカッコいいブギ・ウギ・ロックンロールなんだと感じて以来愛聴しつづけること長い間、たった今初めて、あの曲でのアイクはピアノを弾いているんだと知りました(爆恥)。

まああれだよね、アイクの写真ってどれもこれもギターを抱えているものばっかりだもんなあ。そんでもって世間一般的に大有名人になったのは、間違いなくアイク&ティナ・ターナー時代であって、あるいはもっと正確に言えば、この二人の離婚後、ティナが復帰して再び人気が出て、自伝も出して、そのなかでアイクは暴力亭主だったと書いてあったりするので、それでかえって元夫であるアイクの(ネガティヴな面でも)知名度が上がったんじゃないかなあ。

だってさぁ、例えば今、Google でアイクの画像検索をしようとしたら、僕は入力もしていないのに自動的に「Beats Tina」っていうタブ項目が勝手に表示されるくらいだもん。つまり今では元夫時代にティナに暴力をふるった男性で、ちょろっとギターを弾く人間で音楽関係者、まあこの程度の認識なのかもしれないぞ、一般のファンには。

一般のファンには、なんて言ってはみたけれど、僕だってつい二・三分前までアイクは専業ギタリストだと思ってて、ピアノも弾くことをま〜ったく知らなかったわけだから大差ない。五十歩百歩だ。一応言い訳させてもらうと、ギタリスト、セッション・マン、レコード・プロデューサー、A&R マンとしてのアイクにかんしては、まあまあ少し知ってはいるつもりの僕です。

アイク&ティナ時代のことはまた機会を改めて(暴力亭主云々ではなく音楽家として)考えて別記事にしたいので、今日はアナ・メイ・ブロック、のちにティナと名乗るようになる女性歌手と一緒に活動をはじめる1960年より前の、アイク単独時代の話を少ししておきたい。

なんといってもアイクといえばこの一曲となるのが、やはり今日も最初から書いている1951年の「ロケット・88」だよね。歌いサックスを吹くジャッキー・ブレストン&ヒズ・デルタ・リズム・キングズ名義のレコードだが、このバンドは実質的にアイクのキングズ・オヴ・リズムに他ならず、曲を創ったのもアイクだ。

だから「ロケット・88」は実質的にアイクの大ヒット曲で、実際当時から現在までも、世の中の全員にそのようにみなされている。これを録音した1951年時点では、スタジオ・セッション・ミュージシャンから成るアイクのバンドは、南部ミシシッピ州クラークスデイルに拠点を置いて活動していた。51年以後も数年間はそう。

そうだけど、「ロケット・88」はメンフィスにあるサム・フィリップスのスタジオ、すなわちサン・スタジオで録音されている。この時に初めてこの曲を歌うことになるジャッキー・ブレストンと知り合ったらしいが、引き合わせたのは B・ B・キングだった。アイクは B B のセッションにも関わっていたので。

メンフィスのサン・スタジオでアイクのバンドは、1950年代前半たくさん録音している。ザ・キングズ・オヴ・リズムズ・フィーチャリング・アイク・ターナー名義の『ザ・サン・セッションズ』という2001年盤 CD があるんだけど、全20曲。しかしほとんどは自分のバンド名義録音ではなく、他の歌手の伴奏なんだよね。

『ザ・サン・セッションズ』、1953〜58年の録音集だけど、多くがブルーズというよりはリズム&ブルーズだなあ。曲形式としても12小節3コードのブルーズ定型は少ない。そして南部的なイナタさというかダウン・ホーム感というか、泥臭さがあって、サザン・ソウルの勃興形態みたいに聴こえたりもする。

ただ僕のなかではギタリスト(だとしかついさっきまで思ってなかったからさ)としてのアイクは、どっちかというとブルーズ・ギタリストのイメージなんだけどね。『アイクズ・インストルメンタルズ』という一枚の編集盤 CD があって、タイトル通り歌はなしの楽器演奏オンリーで、アイクのギタリストぶりに焦点を当てたもの。英エイスが2000年にリリースしたものだ。

この『アイクズ・インストルメンタルズ』を一枚通して聴くと、まあ歌がないし、アイクのキングズ・オヴ・リズムズは歌手の伴奏をやるサポート・バンドというのが実態・本質なので、イマイチな感じはするものの、アイクのギターの上手さや特徴を知るためだけなら、これが一番分りやすい一枚なんだよね。

この『アイクズ・インストルメンタルズ』、そのまんまなどブルーズから、ソウルっぽいリズム&ブルーズまで、1950年代のモダン・レーベル録音と60年代のスー・レーベル録音からチョイスされた全22曲、ブルーズ・ギター好きにはこたえられない内容なんだよね。

アイクのギター・スタイル最大の特徴は、トレモロ・アームの多用にあるかもしれない。エレキ・ギターのことをひょっとしてあまりご存知でない方のために一応書いておくと、フェンダーのストラトキャスターなどのボディに細い棒が付いていて、その棒はブリッジ部分と直結している。ブリッジ部分は本体ボディ裏にバネでとめられたフローティング・ブリッジになっているので、それと直結したアームを動かすとブリッジも動いて、弦のテンションが弱くなったり強くなったりして音程が変化する。

ロック・ギタリストだとジミ・ヘンドリクス(はロックじゃないかもだけど)とジェフ・ベックがアーミングの名手だね。同じストラトキャスター・マスターでもエリック・クラプトンはアームを一切使わず、ボディから外してしまっているくらいだ。アームを効果的に使うと、音程が非常に細かく震えるように変化するので、ピッキングした直後にアームを操作してトレモロ効果を得ることができる。が使いすぎるとチューニングが狂うこともある。

アイクはこのトレモロ・アーム使いの名手なのだ。『アイクズ・インストルメンタルズ』だとそれが非常によく分る。微妙に震えているようなサウンドになって、ブルージーなフィーリングを上手く出しているんだよね。やっぱりブルーズを表現したいギタリストだよなあ。

『アイクズ・インストルメンタルズ』で一番面白いのは、アルバム・ラストに収録されている「オール・ザ・ブルーズ、オール・ザ・タイム」だなあ。八分以上もあるが、これはブルーズ・スタンダードをメドレー形式でアイクが弾きまくるものなのだ。
お聴きになってお分りの通り、八曲のメドレー。そのなかでも四つ目に出てくる「ブギ・チルン」、五つ目の「ダスト・マイ・ブルーム」、七つ目の「フーチー・クーチー・マン」はあまりも有名すぎるので、出てきた瞬間に全員分っちゃうよね。このメドレー「オール・ザ・ブルーズ、オール・ザ・タイム」は1963年録音。

この九分近い「オール・ザ・ブルーズ、オール・ザ・タイム」は、アイク最大の代表曲「ロケット・88」がオープニングを飾る『リズム・ロッキン・ブルーズ』という一枚にも収録されている。主にクラークスデイル時代のセッション集で、これまた英エイス・レーベルが1995年にリリースしたもの。アイク入門盤としては、これが最も好適かもしれない。

『アイクズ・インストルメンタルズ』には、22曲目に「キューバン・ゲタウェイ(aka バイユー・ロック)」という1955年フレア録音が収録されていて、これがかなり面白い。もちろん歌なしのインストルメンタルだけど、曲名通りキューバン〜カリビアンな一曲なのだ。南部の黒人音楽には実に多いこういったラテン風楽曲。アイクもやっぱりやっているんだよね。

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