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2017/01/10

これぞ正真正銘のレア・グルーヴ・ライヴ

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間違いなく例のレア・グルーヴ・ムーヴメントによって CD リイシューされたジャズ・オルガニスト、ロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』。間違いなくと言えるのは、僕が持っているそのアメリカ盤 CD パッケージに「ブルー・ノート・レア・グルーヴ・シリーズ」という文字があるからだ。

というこの書き方は実は正確ではないというか間違っているんだよね。ロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』は、タイトル通りデトロイトのクラブ・モザンビークにおける1970年5月21日のライヴを収録したものだが、これはなぜだか当時はリリースされなかった。

ロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』の初リリースがなんと1995年の CD によってだったのだ。だからそれは CD「リイシュー」ではなく、世に出た最初だ。現在僕が持っているキャピトル(が当時ブルー・ノートの権利を持っていた)盤 CD もその95年のもの。

つまりロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』は、録音されてから25年間も全く世に出なかったってことなんだなあ。すんげえカッコいいジャズ・ファンク・グルーヴなのに不思議だ。今ではジミー・スミスの1972年盤『ルート・ダウン』と並ぶ、僕の大好物なんだよね。

ファンキーな弾き方をするジャズ(系)オルガニストの1970年代におけるライヴ・アルバムでは、ジミー・スミスの『ルート・ダウン』と、ロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』が僕にとってはモスト・フェイヴァリットに他ならない。しかしロニー・スミス盤の方が演奏・録音は先だったなんてねえ。

ジミー・スミスの『ルート・ダウン』にはソウル・マン、アル・グリーン最大の代表曲「レッツ・ステイ・トゥゲザー」のカヴァーがあるが、ロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』にはファンカーの代表曲のカヴァーが二曲あって、やはり同趣向の音楽だと分るようなものなんだよね。

ロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』にあるファンク・カヴァー二曲は、一曲目の「アイ・キャント・スタンド・イット」と七曲目の「アイ・ウォント・トゥ・サンキュー」。ファンク・ファンであれば、いやそうじゃなくたって、だいたいみなさんこれらの曲名だけでピンと来るはず。

そう、一曲目の「アイ・キャント・スタンド・イット」はジェイムズ・ブラウンの、七曲目の「アイ・ウォント・トゥ・サンキュー」はスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの、それぞれ超有名曲だ。後者の方は最大のシンボル、ファンク・イコンだと言っても差支えない聖典だもんなあ。

しかしロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』では、七曲目の「アイ・ウォント・トゥ・サンキュー」ははっきり S・ストーンとコンポーザー名が明記されているけれど、一曲目の「アイ・キャント・スタンド・イット」は L・スミスと書いてあって、自作曲みたいになっているのは解せない。

こりゃオカシイね。アルバム一曲目のそれが鳴りはじめた瞬間に、全員、これはジェイムズ・ブラウンのあれだと分っちゃうのになあ。  全くおんなじじゃないだろうか。以下に音源を貼っておくので、ちょっと聴いてみて。

七曲目の「アイ・ウォント・トゥ・サンキュー」はこれ。一曲目にかんしては作曲者名クレジット問題が残るものの(だいたい初リリースが1995年なんだから、ちゃんとしたらよかったのになあ)、ロニー・スミスのカヴァー・ヴァージョンもカッコイイね、どっちも。
一曲目の「アイ・キャント・スタンド・イット」では、いきなりエレキ・ギターがジェイムズ・ブラウン・オリジナルと同じ単音弾きリフを演奏するが、それはジョージ・ベンスンが弾いているんだよね。ファンク・マナーでのドラミングはジョー・デュークス。二人ともブラザー・ジャック・マクダフと深い関係がある。

ジョージ・ベンスンもジョー・デュークスも、1950年代末頃からジャズ・オルガニスト、ジャック・マクダフのバンドにレギュラー参加していて、当時ブラザー・ジャック・マクダフ・カルテットと名乗っていた。もう一名はサックスのレッド・ハラウェイ。バンドがこの四人編成だったのはいつまでだったんだろう?

なお今日の話題の主人公ロニー・スミスは、そのブラザー・ジャック・マクダフ・カルテット時代のジョージ・ベンスンと知り合っていて、1966年にジョージ・ベンスン・カルテットを結成した際にロニー・スミスがレギュラー参加。だからその時期から継続的に演奏活動をともにしていたんだなあ。

また上掲音源二曲を聴いていただければ、バリトン・サックスのファンキーなソロが出てくるのがお分りだと思うけれど、それがロニー・キューバー。ロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』がリリースされた1995年頃は、ドクター・ジョンのバンドで吹いたりもしていたよね。

そのバリトン・サックスのロニー・キューバーは、前述1966年結成のジョージ・ベンスン・カルテットのレギュラー・メンバー。つまりロニー・スミスの同僚だったのだ。なんだかブラザー・ジャック・マクダフをきっかけに全員ずるずる繋がっているよなあ、ファンキー・ジャズ方面の人たちが。

上でロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』一曲目の「アイ・キャント・スタンド・イット」(ヴォーカルというか声はロニー・スミス本人)と「アイ・ウォント・トゥ・サンキュー」という有名ファンク・チューンの音源を貼ったけれど、この二曲、典型的にこのアルバムの内容が出ている。

それら二曲以外の六曲は、一曲を除きロニー・スミスのオリジナル。アルバム・ラストは、マイルス・デイヴィスがやったので有名なヴィクター・フェルドマンの書いた代表曲「セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン」だ。これも普通のジャズじゃないような感じだ。
一応リズムは4/4拍子のストレート・アヘッドなジャズ風で、サックス二名、ギタリスト、オルガニストと続くソロもハード・バップ・ジャズ風であるとはいえ、ドラマーの叩き方がすんなりとしたジャジーなフィーリングじゃないもんね。どっちかというとやはりファンクに近いようなドラミングだよなあ。

アルバム中、4/4拍子のものがもう一曲ある。二曲目の「エクスプレッションズ」。これはファンクっぽい跳ね方のグルーヴというよりも、フラットにずんずん進む通常のジャズ・ビートで、ドラマーのハイハットの踏み方もそう。各人のソロもジャジーだ。
この「エクスプレッションズ」はアルバム中最も長い11分以上もあるので、まあ目玉というかハイライトなのかもしれないが、ロニー・スミスやジョージ・ベンスンやロニー・キューバーなどなど、その界隈のミュージシャンのこの時期の音楽としては、ちょっと面白味に欠けるかもしれないなあ。

これよりは、ロニー・スミスのオリジナル・ナンバーであれば、アルバム三曲目の「スクリーム」(https://www.youtube.com/watch?v=d5Gl7sinHgY)とか四曲目の「プレイ・イット・バック」(https://www.youtube.com/watch?v=X43jG5BhUdE)とかの方がグルーヴィーでファンキーでカッコイイじゃん。

アルバム通してこんなのがメインで続くので、グルーヴの快感が長続きして気持良いんだけど、一曲だけちょっとおとなしめのバラード風なものがある。五曲目の「ラヴ・ボウル」だ。それでもドラマーの、特にスネアのハタハタとした叩き方はまあまあファンキーだ。
アルバム六曲目「ピース・オヴ・マインド」もミドル・テンポのファンク・グルーヴだが、この曲ではロニー・スミスがたくさん喋り、また歌ってもいる。随分と声が若いよなあ。決して上手いヴォーカルじゃないけれど、トーキング・スタイルで悪くない。
このアルバムでも、ギターのジョージ・ベンスンは全編、空洞ボディにピック・アップの付いたいわゆるフルアコと言われる種類のギターを弾いている。これは間違いない。ベンスンはそういう種類のものしか弾かない人だ。ソリッド・ボディ・ギターでファズをかけていたらもっと僕好みだったけどなあ。

だからこれはこれで充分グルーヴィーだし、ギター・フレイジングもファンキーかつブルージーで(かつてB・B・キングがベンスンを「彼は彼のブルーズを演っている」と褒めたことがある)、ギターと相性のいいハモンド B-3 オルガンを弾くロニー・スミスともピッタリ息が合っていて申し分ないね。

それにしてもロニー・スミスの『ライヴ・アット・ザ・クラブ・モザンビーク』。こんな素晴らしい内容のジャズ・ファンク・ライヴを録音しておきながら、どうして25年間もリリースせずお蔵入りさせていたんだろう?やっぱりこの点だけが不可解だなあ。CD で出たあとは二枚組 LP でもリリースされたようだ。

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