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2017/01/17

ジャイヴがジャンプするだって〜!

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ジャズのなかでは、前々から言うように1930年代後半〜40年代末までのジャイヴとジャンプが今では一番好きな僕。ある時期以後は、ジャイヴとかジャンプとかいう言葉にはすごく感じやすいカラダになってしまっていて、だからこの二つが合体していたりなんかするような文字列は、もう見ただけで随喜の涙を流してしまうのだ。

ジャイヴとジャンプの合体名。一番有名なのは、間違いなくキャブ・キャロウェイの「ジャンピン・ジャイヴ」だよね。オリジナルは1939年7月のヴォキャリオン録音。当時から売れて、キャブのやった曲のなかでは最も有名になったものの一つ。キャブ自身その後も繰返しやっているばかりか、直後からいろんな音楽家にカヴァーされ、さらに1981年にはジョー・ジャクスンがやったりもした。

「ジャンピン・ジャイヴ」、キャブの1939年オリジナルはこれ。
もちろん楽しいが、もっと楽しいのは1943年の映画『ストーミー・ウェザー』のなかでニコラス・ブラザーズと共演したこれだ。
ご覧になればお分りの通り、キャブのパンチの効いたエンターテイナーぶりが非常によく分るものだが、映像なしで音だけ聴けば、楽しく立派ではあるけれど普通のジャズだと僕には聴こえる。特にそんな珍妙なものとは全く感じない。タップとの合体だってたくさんあるじゃないか。

キャブの音楽については、英 JSP がボックスでリリースしている同楽団の1930〜40年の録音全集、四枚組二つをじっくり聴き返してみて、一度しっかり書いてみる腹づもりでいる。ちょっとだけ言っておくと、ジャズ喫茶でキャブなんてとんでもなかったとおっしゃる方もいるけれど、日常的にレコードがかかっていたジャズ喫茶もあったし、自分でだって普通に LP を買えたので、自宅でも大学生の頃からはどんどん聴いていた。

キャブの話は改めてするとして、ジャイヴとジャンプというこの二つの言葉が合体している曲がアルバム・タイトルに使われている CD アンソロジーがある。英ウェストサイド・レーベルが1998年にリリースした『ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン:RCA&ブルーバード・ヴォーカル・グループズ 1939-52』だ 。

タイトルでお分りのようにいろんなジャイヴ・ヴォーカル・グループのこの時期のヴィクター系録音をいろいろと集めたアンソロジー。この一枚、全22曲で計1時間1分、楽しくない瞬間がない。全編悶絶するほどエンターテイニングで仕方がない。聴いていると、僕なんかイキっぱなし。

『ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン:RCA&ブルーバード・ヴォーカル・グループズ 1939-52』のなかで一番重要なのは、おそらく三組。四曲収録のフォー・クレフス、五曲収録のキャッツ・アンド・ザ・フィドル、三曲収録のデルタ・リズム・ボーイズだろう。

まずアルバム・トップに四曲収録されているフォー・クレフス。その一曲目が「ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン」なので、これこそ最も面白い一曲だとウェストサイド・レーベルもみなしたということなんだろうなあ。この二つの言葉の合体曲名、フォー・クレフスの録音は1939年6月なので、キャブの「ジャンピン・ジャイヴ」初録音よりも先だ。

正確には、フォー・クレフスの「ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン」が1939年6月5日ブルーバード録音、キャブの「ジャンピン・ジャイヴ」が1939年7月17日ヴォキャリオン録音なので、当時の事情からすればキャブの録音時にフォー・クレフスのそれがレコードで発売されていたのをキャブが参考にしたとは考えられない。

たぶんレコードはまだ発売前だったんじゃないかと思うし、そうであろうとなかろうと、1930年代末頃にはジャイヴとジャンプの二つの言葉をくっつけて遊ぶような発想が、当時のジャズ・メンのあいだで既に一般化しつつあった、拡散しつつあったということだろう。

フォー・クレフスは少人数コンボで、ギターのジョニー・グリーンとドラムスのウィリー・チャップマンが中心。その他、ピアノ、ベースという楽器編成で、全員が歌う。ただし「ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン」ではチャップマンはドラムスではなくヴァイブラフォンを担当している。
その他三曲でもフォー・クレフスはホットでタイトでパンチが効いている。特にいいのがアルバム三曲目の「V・デイ・ストンプ」だ。曲名で推察できるように、第二次大戦勝利を願ってのものだ。1945年2月録音なので。僕も以前 V ・ディスクというもののことを詳しく書いたけれど。
フォー・クレフスの「V・デイ・ストンプ」では、特にギター・ソロとリズム・ワークが極めて精緻だ。ヴォーカルが楽しいのはもはや説明する必要がないと思うので、詳しいことは省略する。ただしこの曲ではリード・ヴォーカル(ギター担当のジョニー・グリーン)だけで、バック・コーラスはなし。
ジャイヴ・ヴォーカル・グループに共通するあのワッワッっていうスキャットでのバック・コーラス。あれは最大の特徴の一つなので、だから「V・デイ・ストンプ」でそれがないのは残念だけど、他の三曲ではもちろん全部それがある。やっていないグループを、同傾向の音楽で探す方が難しい。

さて、『ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン:RCA&ブルーバード・ヴォーカル・グループズ 1939-52』に五曲収録されているキャッツ・アンド・ザ・フィドル。一般的にはおそらく四弦ギターのタイニー・グライムズが活躍したので知名度があるグループだけど、このアルバム収録の五曲は全て1940年のタイニー参加より前のもの。

タイニー・グライムズの話と、彼が在籍した時代のキャッツ・アンド・ザ・フィドルの話は、またそれぞれ一つずつの記事にしてみたい。一つ書いておくと、1987年にマイルス・デイヴィス・バンドに参加して晩年は欠かせない重要メンバーだったリード・ベースのフォーリー。彼は一応リード・ベースというクレジットになっているが、出てくる音はエレキ・ギターの音域だ。

ライヴ現場で何度も観たフォーリー。確かに四弦楽器だったけれど、あれってリード・ベースというより、タイニー・グライムズの弾いた四弦ギターと同じ種類のものだったんじゃないかなあ。それをソリッド・ボディのものでエレキ化してエフェクター類も使って、あんなサウンドになっていたんだと僕は思うけれど、フォーリーとタイニー・グライムズを結びつける文章って全然ないよなあ。

それはいいとして『ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン:RCA&ブルーバード・ヴォーカル・グループズ 1939-52』にあるキャッツ・アンド・ザ・フィドルの五曲のうち最も有名で最も重要なのは、間違いなくアルバム六曲目の「アイ・ミス・ユー・ソー」だ。
当然のようにキャッツ・アンド・ザ・フィドルの単独盤にも入っているこの「アイ・ミス・ユー・ソー」は1939年ブルーバード録音だが、既にリズム&ブルーズ系のヴォーカル・グループの歌い方、コーラス・ワークに極めて近い。特にドゥー・ワップ・シンギングへ影響したのは間違いない。

実際、複数のドゥー・ワップ・グループが、この「アイ・ミス・ユー・ソー」をカヴァーしている。オリオールズ、リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズ、リー・アンドリューズ&ザ・ハーツ。どれもこれも楽しく美しく、そして哀しく切ない。
『ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン:RCA&ブルーバード・ヴォーカル・グループズ 1939-52』にあるキャッツ・アンド・ザ・フィドルでは、その他「アイド・ラザー・ドリンク・マディ・ウォーター」「ナッツ・トゥー・ユー」など有名な重要曲が多いので、これらは単独の記事に廻すこととしよう。

『ザ・ジャイヴ・イズ・ジャンピン:RCA&ブルーバード・ヴォーカル・グループズ 1939-52』では後ろの方に三曲収録されているデルタ・リズム・ボーイズ。三つのうち二つはジャズの器楽曲のカヴァーだ。カウント・ベイシー楽団の「ワン・オクロック・ジャンプ」とデューク・エリントン楽団の「A 列車で行こう」。もう一つはハンク・ウィリアムズの「アイル・ネヴァー・ゲット・アウト・オヴ・ディス・ワールド・アライヴ」。

カントリー・シンガーであるハンクの曲のカヴァーは別段どうってことないはず。ハンクのオリジナルからもちろんヴォーカルが入っているし、それのサウンドをフル・バンド・ジャズにアレンジしなおして、ヴォーカル・コーラスをつけただけの話だ。

面白いのはやはり「ワン・オクロック・ジャンプ」と「A 列車で行こう」だなあ。この二曲、もちろんオリジナルにヴォーカルなど存在しない。それに意味のある英語詞を付けてコーラス・ワークもくわえ歌うデルタ・リズム・ボーイズの1947年録音は、つまりヴォーカリーズだ。
1947年時点でのヴォーカリーズは、もちろんアメリカ音楽史上初事例なんかじゃ全然ないけれど、まあでも一般的にはかなり早い方だろうなあ。もっともデルタ・リズム・ボーイズも「A 列車」の方は、エリントン楽団のオリジナル発売の同年1941年に既にやってはいるのだが。
1930年代末からエディ・ジェファースンが活躍していたとはいえ、ジャズ界でヴォーカリーズが一般化するのは、やはり1950年代後半からのランバート、ヘンドリクス&ロス以後じゃないかなあ。その後はいろんなヴォーカル・グループが似たようなことをやっているのはご存知の通り。

1930年代後半から40年代末頃あたりまではアメリカにいっぱいあったジャイヴィーなヴォーカル・グループ。その後は一部ヴォーカリーズ・グループを除き地下に潜ってしまった。それを再び掘り起こして復活させてくれたのが1970年代からのマンハッタン・トランスファーだったと僕は思っているのだが、マンハッタン・トランスファーについてそんな位置付けをしているような日本語の文章って、僕はいまだ見たことがない。

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