« ジャズ史上初の単音弾きギタリスト〜エディ・ラング(その1) | トップページ | チャック・ベリーのある見方 »

2017/03/20

特にサンディニスタとは関係ない(?)1980年代風アフロ〜ジャマイカンなシンセ・ポップ

Unknown










アンタこれを聴くのか?と言われそうなヴァンパイア・ウィークエンドというロック・バンド。いちおうインディ・ロックに分類されているようだけど、そんなことはどうでもいい。まあまあ好きなアルバムがあるんだよね。それが2010年の『コントラ』。このバンドのアルバムはこれ一枚しか持っておらず、これ以外は聴いたことがない。といっても他には二枚しかないみたいだが。

ヴァンパイア・ウィークエンドなんて興味もなかった。だいたいこのバンドの名前がちょっとなあ。でも2010年の『コントラ』を買ったのはかなり評判になっていて、実際評価も高いようだったし人気もあって、そんなことが僕の耳にも入っていたからだ。いわく「アメリカン・シンセ・ポップと、レゲエやスカやカリプソやアフロ・ポップをごた混ぜにしている」と。それなら聴いてみたいよね。

それに、『コントラ』というこのアルバム・タイトル。これはあれじゃん、ニカラグアの親米反政府民の通称じゃないか。例の1979年のサンディニスタ革命の時に、サンディニスタ民族解放戦線に対抗し反革命(contra-revolución)の立場をとった民兵、というか傭兵のことだもんね。へえ〜、どういう音楽になっているんだろうって思うよね。クラッシュのことをどうしても思い出してしまうからね。

ところがこの『コントラ』というのは、そんなニカラグアのサンディニスタ革命への言及ではなく、直接的にはあくまでコナミのテレビ・ゲームのタイトルからいただいたんだそうだ。ということをヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・コーニング(リーダー格?)が明言している。エズラは1984年生まれだそうだから、コンピューター・ゲーム世代だよね。

(コンピューター・)テレビ・ゲームにほぼ全く縁のない人生を送ってきている僕なので、その「コントラ」というコナミのテレビ・ゲームがどんなものなのか、全く分らない。調べてみたら特殊部隊の兵士が謎の軍隊と戦うアクション・シューティング・ゲームみたいだから、コナミもやっぱりニカラグアの民兵から名前をもらっているんじゃないのかなあ。いやまあ全く知らないけれども。日本では「魂斗羅」という名前で販売されている(いた?)みたい。

だからヴァンパイア・ウィークエンドのアルバム『コントラ』になんらかの政治的な意味合いを感じて、クラッシュも連想して、へぇ〜、ちょっと面白そうかもと思って買った僕のアテは完全に外れてしまったし、中身の音楽を聴いてもそんなニュアンスはこれっぽっちも聴き取れない。普通にただ楽しいだけのポップ・ミュージックで、でもそれでよかったとちょっと安心した。ホント面白いんだよね。

アルバム一曲目の「オーチャータ」は、デジタル・サウンドをメインに据えたシンセ・ポップとして普通にはじまるものの、途中から打楽器群がメチャメチャ賑やかに鳴りはじめ、マリンバも効果的に使われて、そうかと思うとパッとそれらが止まって静かになったり、また賑やかになったりの繰返し。そのギャップが面白い。ストリングスのサウンドも聴こえるが、これは生演奏の弦楽器を使っているようだ。
二曲目の「ワイト・スカイ」はイマイチなので飛ばして、三曲目の「ホリデイ」、これはスカだ。アメリカ人がやるスカだけど、たぶんジャマイカから直接持ってきたようなものではなく、レゲエ同様、1980年代に英国の労働者階級のための音楽となっていたあたりから影響されているに違いない。でも UK スカ/レゲエ勢のような深刻なディープさは全くなく、底抜けに明るい調子だ。
ラップ・チューンの四曲目「カリフォルニア・イングリッシュ」は歌詞がかなり面白いけれど、サウンド的には特にどうってことはない。途中でやはり生楽器演奏によるストリングスのサウンドが入る。それはヴァイオリン&ヴィオラ担当とチェロ担当の二名しかクレジットされていないから、間違いなく多重録音している響きだ。だけど、まあホントなんでもないような曲だ。歌詞以外はね。
生の弦楽器といえば、アルバム『コントラ』八曲目の「ギヴィング・アップ・ザ・サン」でも使われている。 がしかしこの曲では生楽器よりもデジタルなシンセサイザー・サウンドの方が目立つ、というかほぼそれ一本で組立てている。かなり売れそうな(実際に売れたかどうかは知らない)明快なシンセ・ポップ・チューンで、アルバム中最もとっつきやすい一曲に違いない。リズムも躍動的でいいね。
アルバム九曲目の「ディプロマッツ・サン」。これがアルバム『コントラ』のなかでは最もアフロ・オリエンティッドな一曲だろう。レゲエ風でもある。しかもトゥーツ・アンド・ザ・メイタルズから引用してあるし、さらに英国の女性ラッパー M.I.A. のヴォーカルも一部サンプリングして挿入してある。
この「ディプロマッツ・サン」は、アルバム中もっとも長い六分以上あるし、長さだけでなく音楽的な中身で判断しても、『コントラ』のクライマックス、最も優れた魅力的な一曲に違いないと僕は思う。ヴァンパイア・ウィークエンドのリーダーかどうかよく知らないがヴォーカルを取る、1984年生まれのエズラ・コーニングの音楽的背景がギュッと凝縮されているんだろう。貼った音源をお聴きいただければ、この世代に80年代の UK ジャマイカン・ミュージックやアフロ・ポップがもたらしたものがお分りいただけるはず。

アルバム・ラストの十曲目「アイ・シンク・ユア・ア・コントラ」には、でもやはりクラッシュの1977年のシングル曲「コンプリート・コントロール」から持ってきた歌詞の一節がある。”コントラ”という言葉がタイトルに入った曲のなかでクラッシュに言及するっていうのは、やっぱりあれじゃないのぉ〜。クラッシュの1980年リリースの三枚組アルバム、タイトルは『サンディニスタ!』だったもんねぇ。ヴァンパイア・ウィークエンドのこれは、サウンド的にどこも全く革命的ではないけれど。

« ジャズ史上初の単音弾きギタリスト〜エディ・ラング(その1) | トップページ | チャック・ベリーのある見方 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ジャズ史上初の単音弾きギタリスト〜エディ・ラング(その1) | トップページ | チャック・ベリーのある見方 »

フォト
2019年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ