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2017/05/14

ライオネル・ハンプトンのヴィクター・セッション名演選

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前々から繰返すように、1930年代後半というスウィング・ジャズ全盛期のスモール・コンボ録音では、テディ・ウィルスンのブランズウィック・セッションとライオネル・ハンプトンのヴィクター・セッションが二大名演集。これにくわえ以前書いたように、同じ頃に渡仏したアメリカ黒人ジャズ・メンがフランスのジャンゴ・ラインハルトと一緒に繰拡げた録音集も素晴らしい。これら三種類こそ、いろんなジャズのなかで僕の最も愛するもの。そしてジャンゴのものについては、僕なりに以前そこそこ詳しく書いたつもりだ。
テディ・ウィルスンのブランズウィック録音集についても以前一度書いたのだが、それはいま読むとちょっとどうしようもない文章でしかないというか、僕の個人的思い出話だけが書いてあって、音楽的にどこがどう面白いかなどは全く説明していないので、これは改めてちゃんとしたものを書く腹づもりでいる。
今日はライオネル・ハンプトンのヴィクター・セッションについて話をしたい。ハンプのヴィクターへのスモール・コンボ録音は1937年2月8日から41年4月8日まで。別テイクなども含めると全部で107トラック、再生時間にして計5時間21分。これをリイシュー専門レーベルのモザイクが CD 五枚組のボックス・セットにしてコンプリート・リイシューしたのが2007年のこと。僕はもちろん問答無用で即買い。

アナログ・レコードでは一枚物のセレクションが日本盤で出ていて、大学生の頃からそれをずっと聴いていたが、タイトルは忘れてしまった(が、音源を聴くと、あっ、これは憶えているぞ”!というものがたくさんある)し、ネットで検索しても出てこないので、どんな曲が収録されていたのか、もはや分らない。確か「RCA なんちゃらかんちゃら」とかそんなシリーズ名でたくさんあった。デューク・エリントン楽団のヴィクター録音アンソロジーなどもあった。エリントンの方は擦り切れるほど聴いたので、いまでも収録曲だって憶えている。そのほか本当にたくさんあったなあ、RCA のなんちゃらかんちゃら。

だがいま書いたように音の記憶があるので、モザイクがリイシューした五枚組『ザ・コンプリート・ライオネル・ハンプトン・ヴィクター・セッションズ 1937-1941』五時間超を通して聴きながら思い出しつつ、そこに、これは憶えていないが面白いというものもくわえて、全部で27曲のセレクション・プレイリストを自分で作った。1時間25分。この程度なら楽に聴けるはず。CD にすれば二枚組で収まるので、どこかリイシューしてくれませんかね?このプレイリスト?といっても、これも同時期のコンボ録音だけど、名義がハンプではなく、当時所属していたベニー・グッドマン・セクステットのものを一曲だけ入れた。それはヴィクターではなくコロンビア原盤だから、まあちょっとあれかもなあ。


以下、そのプレイリスト一覧。(基本的に)録音順。


1. Buzzin' Around with the Bee
2. Hampton Stomp
3. On the Sunny Side of the Street
4. I Know That You Know
5. I’m Confessin' (That I Love You)
6. I Surrender, Dear
7. After You've Gone
8. You're My Ideal
9. Ring Dem Bells
10. Don't Be That Way
11. Shoe Shiner's Drag
12. Muskrat Ramble
13. High Society
14. It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)
15. Sweethearts On Parade
16. Memories Of You
17. The Jumpin' Jive
18. Twelfth Street Rag
19. I’ve Found A New Baby
20. Dinah
21. Singin' The Blues
22. Shades Of Jade
23. Flyin' Home
24. Tempo And Swing
25. The Sheik Of Araby
26. Dough-Ra-Me
27. Jivin' With Jarvis


僕の作ったこのセレクション・プレイリスト、録音順なら本当はまず「ストンプ」(aka「ハンプトン・ストンプ」)が来ないといけない。それは1937年2月8日のヴィクター初回セッションでの最終録音で、このセッションでのドラマーはジーン・クルーパなんだけど、「ストンプ」でだけハンプがドラム・セットを叩く。猛烈なスウィング感で凄いんだよね。
だがしかし僕のセレクション・プレイリスト一曲目はこれではなく、同1937年4月14日録音の「バジン・ラウンド・ウィズ・ザ・ビー」にしてある。ここだけ順序を入れ替えて「ストンプ」が二曲目。どうしてかというと、「バジン・ラウンド・ウィズ・ザ・ビー」は鮮明な音の記憶があるからだ。大学生時代にレコードで聴いていたはず。RCA なんちゃらかんちゃらの一枚で。オープニングにふさわしい雰囲気だし、大好きだからこうした。トランペット、トロンボーン、アルト・サックスの三管はデューク・エリントン楽団からのクーティ・ウィリアムズ、ローレンス・ブラウン、ジョニー・ホッジズ。躍動的なドラミングは名手コージー・コール。
自分で作ったものなのに27曲全部の話をする余裕はないのでかいつまんで。マイ・セレクション三曲目以下は全て間違いなく録音順だが、その三曲目がお馴染「オン・ザ・サニー・サイド・オヴ・ザ・ストリート」。やはりアルト・サックスのジョニー・ホッジズをフィーチャーし、ハンプ自身が歌う。彼のヴォーカルにはジャイヴィなフィーリングがあっていいよね。これは間違いなくキャブ・キャロウェイではなく、ある意味、師匠格でもあったルイ・アームストロング直系なんだぞ。
マイ・セレクション五曲目・六曲目も、これまたサッチモの得意レパートリー「アイム・コンフェシン(ザット・アイ・ラヴ・ユー)」「アイ・サレンダー・ディア」(1937年8月16日録音)が並ぶ。前者ではハンプのヴォーカルがやはりいい味だなよあ。本当にただシンプルなだけの愛の告白ソングで、それ以外のなにものでもないけれど、僕は大好き。トランペットはジョナ・ジョーンズ。後者はインストルメンタル演奏だけど、前者ではハンプが歌う 〜「愛しているって言っているんだよ、君はどう?」
二曲飛ばしてマイ・セレクション九曲目「リング・デム・ベルズ」(1938年1月18日録音)こそ、ハンプのヴィクター・セッション全音源で僕が「本当に」一番好きなもの。これなんかは絶対に間違いないという音の記憶がある。100%疑いなく大学生の頃から RCA 一枚物日本盤レコードで聴いていた。大好きでたまらず、いまでもこれを聴くと小躍りするほどウキウキして楽しい気分。だって猛烈にスウィング、というよりドライヴするもんね。
アルト・サックスがこれまたジョニー・ホッジズ。ハンプの愉快なヴォーカルのあと、ブレイク部分でドライヴィングなフィル・インを入れるドラマーが、同じエリントン楽団のソニー・グリーア。それに続いて出てくるグロウリングなワー・ワー・ミュート・トランペットがやはり同楽団のクーティ・ウィリアムズ。しかしバリトン・サックスはハリー・カーニーではなくエドガー・サンプスン。アレンジもエドガーがやっている。

問題はマイ・セレクション11曲目の「シュー・シャイナーズ・ドラァグ」(1938年7月21日録音)。いやまあ別に問題ってことはなく、これも音の記憶があるので、普通のスウィング・ジャズとして普通のジャズ・ファンもみんな聴いていたものだが、いま聴きかえすと、ちょっぴりリズム&ブルーズっぽいようなフィーリングがあるよなあ。特にビート感に。う〜ん、1938年録音なんだけどなあ…、と思ってデータ記載を見たら、ドラマーはジョー・ジョーンズ(カウント・ベイシー楽団)じゃないか。
マイ・セレクション14曲目「スウィングしなけりゃ意味ないね」(1939年4月3日録音)も面白いがキリがないので飛ばして、15曲目の「スウィートハーツ・オン・パレード」(39年4月5日録音)。これまた名演としての音の記憶がある。ギタリストをくわえた四人のリズム・セクションとハンプ以外には、テナー・サックスのチュー・ベリーしかいないというシンプルな少人数編成だけど、その、当時キャブ・キャロウェイ楽団在籍中だったチューのテナーが素晴らしいのだ。
キャブのオーケストラって、みんないろいろと面白いことを言うけれど、こういった一流のジャズ名手が揃っていたんだよね。だからそんないろんなことを言わなくたって「普通の」スウィング・ジャズとして問題なく聴けるのだ。実際、僕も周囲もむかしから聴いていた。それもジャズ喫茶のなかですら。まあいいや。

マイ・セレクション22曲目に入れてある「シェイド・オヴ・ジェイド」(1940年2月26日録音) は、間違いなくむかしから誰も選んでいないもの。だが僕はこういう湿り気のある哀感を帯びた独特の情緒が大好きだからセレクトしてあるだけだ。ただそれだけ。誰が書いたメロディなんだろうなあ?(記載がない)。アレンジャーが誰かも記載がないが、このトランペットはジギー・エルマンだ。
23曲目に入れてある「フライング・ホーム」も同じ1940年2月26日のセッションでの録音なので、オリジナルであるベニー・グッドマン・セクステットの39年10月2日録音でも、ハンプの自楽団結成後42年の名演でもない。だが、ここでもまたやはりやっているということは、やはりハンプ自身、「フライング・ホーム」というこの曲に思い入れがあったんだろうなと思い選んでおいた。
25曲目の「ザ・シーク・オヴ・アラビー」だけがハンプ名義のヴィクター録音ではなく、ベニー・グッドマン・セクステットのコロンビア・セッションで、1940年4月3日録音。だがこれはハンプのヴァイブラフォン名演の一つとして、彼のファンなら以前から好きだった人が多いし、ハンプ名義の名演集に入ることがあるのだ。ギターは当然チャーリー・クリスチャン。ボスのクラリネットだって、まださほど悪くない。
ライオネル・ハンプトンのヴィクター録音からのマイ・セレクションのラスト二曲「ド・レ・ミ」「ジャイヴィン・ウィズ・ジャーヴィス」は1940年7月17日録音で、ソロ・デビュー間もないナット・キング・コールがピアノとヴォーカルで参加している。ギターもオスカー・ムーアでベースもウェズリー・プリンスという、すなわちナット・キング・コール・トリオがそのまま参加。 ハンプの完璧なジャイヴ・ナンバーとして、真面目なジャズ・ファンのみなさんにも是非聴いてもらいたい。

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