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2017/05/28

町に新しいヴァイブ・マンがやってきた

New_vibe_man_in_town









ジャズ・ヴァイブラフォン奏者ゲイリー・バートンのリーダー・デビュー作『ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン』。1961年7月6&7日録音で同年リリースの RCA 盤。なかなかの快作じゃないかなあ。ヴァイブ+ベース+ドラムスというシンプルなトリオ編成で、この初リーダー作時点で、既にヴァイブ奏者としてのスタイルを確立していると実感できる充実した内容。

ただし、僕はアナログ・レコードでは一度もこの『ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン』を聴いたことがなかった。だいたいこれ、レコードは日本盤しかなかったんじゃないの?そのあたりよく分らないというか、1961年作品で日本盤しかないなんてありえないとは思うんだけど、調べてみるとそうかも?と思えるフシがある。それに CD リイシューもなかなか叶わなかった。僕の記憶では21世紀に入ってからアマゾンで見つけて買った。履歴で2012年6月にご購入と出てくるので、たぶんそのあたりのリリースなんだろう(どこにも発売年の記載がない)。

僕の持つゲイリー・バートンの『ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン』は、別のアルバム『ジャズ・ウィンズ・フロム・ア・ニュー・ダイレクション』との抱き合わせ 2in1。後者の方はゲイリー・バートンが参加しているとはいえ、彼のリーダー作ではなく、ギタリスト、ハンク・ガーランドのものだから、それとの合体はちょっとイマイチ。でもこれしかなかったもんなあ、その頃は。いまアマゾンで見ると、その後日本盤で『ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン』単独のリイシュー CD もあるみたいだ。それはしかし2015年のリリースだから、そんなに待てませんって。

ゲイリー・バートンの『ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン』。アナログ時代を全く知らないので、CD で1〜8曲目という書き方をするけれど、いきなり一曲目の「ジョイ・スプリング」のドライヴ感がものすごい。クリフォード・ブラウンの曲なんだけど、こりゃブラウニーのオリジナル・ヴァージョンよりいいんじゃないの〜?

「ジョイ・スプリング」
ゲイリー・バートン→ https://www.youtube.com/watch?v=f6wW4nappNY

テンポをグッと上げているから、バートンの方がこんな痛快なスウィンガーに仕上がっているのは当然かもしれないが、僕が最高にカッコイイなと思うのは、テーマ演奏後のヴァイヴ・ソロ部分での叩き方だ。バッピッシュだし、しかしそうでありながら引っかかるようなところはなく流麗で、フレーズが次々とよどみなく溢れ出てきて止まらないといった様子。デイヴ・ブルベック・カルテットのジョー・モレーノもブラシで躍動感のある伴奏。

この一曲目「ジョイ・スプリング」を一回聴いただけで、僕は(2in1であるとはいえ)『ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン』を買ってよかった、大成功だったと大喜びした。だいたいこのヴァイブ奏者にそんなに大した思い入れのない僕で、ずっとあとにやったチック・コリアとのデュオで ECM に残したアルバムはかなりいいなと思うものの、その程度しかちゃんと聴いていなかったのを大いに反省。

『ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン』二曲目はスタンダード・バラードの「オーヴァー・ザ・レインボウ」。アルバムの全八曲中、スタンダード・ナンバーだと言えるのは、これと三曲目の「ライク・サムワン・イン・ラヴ」とラストの「ユー・ステップト・アウト・オヴ・ア・ドリーム」の三つだよね。それら三曲とも、もちろん元々は歌手が歌うヴォーカル・ナンバー。スタンダードって全部そうなんですよ、まだ一部に、かなりしつこく、残っていることが最近も判明した「ジャズのインストルメンタルとヴォーカルは別の世界」とお考えのジャズ・リスナーのみなさん。

それら三つのスタンダード・ナンバーでは、「オーヴァー・ザ・レインボウ」はゲイリー・バートンもごく普通のバラードとして演奏している。このヴァイブ奏者が静かなバラード調のものをやるときに、リリカルで美しい演奏をするというのは、例えばチック・コリアとやった「クリスタル・サイレンス」などで分ってはいた。まあ「オーヴァー・ザ・レインボウ」は、特にどうってことない普通の演奏だけどね。
三曲目の「ライク・サムワン・イン・ラヴ」は、多くのジャズ・メンとはちょっと違ったアレンジと解釈。まず冒頭部でジョー・モレーノがリム・ショットを効果的に使いながらちょっぴりラテン風なリズムを叩いているかなと思いきや、それは気まぐれみたいにすぐ終り、普通の4ビートになる。がそれでもバラード調にはならず、ミディアム〜アップ・テンポのスウィンギーな「ライク・サムワン・イン・ラヴ」なのだ。中間部や後半部では、ジョー・モレーノが再びリム・ショットでちょぴりラテンを加味。
スタンダードをラテン風にやるのは、アルバム・ラスト八曲目の「ユー・ステップト・アウト・オヴ・ア・ドリーム」でも、テーマ演奏部ではちょっとそんな感じがある。でもすぐに4/4拍子で快速テンポの爽快なスウィンガーになるけれど、そうなってからのゲイリー・バートンの叩きっぷりも痛快で見事。
「ユー・ステップト・アウト・オヴ・ア・ドリーム」って、初演はトニー・マーティンのこれなんだどね。普通のラヴ・バラードだよなあ。
でもこの曲を有名にしたのは、これまたナット・キング・コールのこれだ。
ジャズ歌手やジャズ楽器奏者がたくさんやっている「ユー・ステップト・アウト・オヴ・ア・ドリーム」だけど、ちょっぴりラテン・テイストを加味したような感じでやっているのが多いのは、ナット・キング・コールのヴァージョンがこんな風だったせいなのか?関係ないのか?でもだいたいみんなアド・リブ・ソロ部分ではなんでもない4ビートになっちゃっている。

これら以外の四曲については、僕はあまりよく知らない曲が並んでいるのだが、それらのなかでは四曲目の「マイナー・ブルーズ」が曲題通り短調の12小節ブルーズ。しかしアメリカ黒人ブルーズ愛好家の僕の耳にはどうってことない演奏のように聴こえる。まあそんなに悪くもないから、まあまあ普通の気分で楽しめるものではあるなあ。ところでこの曲はアリフ・マーディンにクレジットされているが、アリフ・マーディンって、あの例のリズム&ブルーズ、というよりディスコ〜ブラック・コンテンポラリー・シーンでの有名人だよなあ。年齢とキャリアのことを考えたら、1961年以前にこんなブルーズを書いたのは不思議じゃないが。
五曲目デイヴィッド・ローズ「アワ・ワルツ」(ウォーツ)はどこも面白くない。六曲目マリアン・マクパートランド「ソー・メニー・シングズ」は幻想的で耽美な雰囲気もあるバラード演奏で、ゲイリー・バートンのヴァイブラフォンも聴きどころがあるような。七曲目ブルー・ミッチェル「サー・ジョン」では、やはりジョー・モレーノがブラシを使うスウィング・ナンバー。これはかなりいいね。後者二曲だけご紹介しておく。

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コメント

ゲイリー・バートン、いいねぇ!!
ジョイ・スプリングは最高だなぁ。でも最後の二曲をはじめみんな良くて、ここでこのアルバムを教えてもらって満足してるよ。
このヴァイブラフォンを聴いていると勝手に昭和を感じる。懐かしさがあるのもいいな。ありがとう。

ひでぷ〜、「昭和を感じる」とは、こりゃまたホントに勝手な感想だなあ(笑)。分るんだけれどね。でもいい音楽はいつ聴いてもいいじゃないか。平成だろうが、もうじき次の新しいものになる元号になってもそれは同じだよね。

ところでゲイリー・バートンってマジで上手いよねえ。

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