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2017/06/24

ハーモニーこそがグルーヴだ 〜 原田知世と伊藤ゴローの世界(1)

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(1)といっても(2)をいつ書けるのやらサッパリ見当もつきませんが。もうすぐリリースされるのもそれなんだそうですが。きっといつか…。

こりゃ素晴らしい、原田知世のラヴ・ソング・カヴァー集二枚『恋愛小説』『恋愛小説 2 - 若葉のころ』。原田知世の歌がいいんだとは前々から聞いていたものの、たくさんあってどれから買ったらいいのか分らず。ある音楽マニアにして知世ちゃんファンの方に相談はしたけれど、結局は僕自身の判断で、曲そのものはほぼ全てよく知っているものばかりだという理由で、カヴァー・ソング集の『恋愛小説』『恋愛小説 2 - 若葉のころ』を買って聴いてみたら、こ〜れ〜が!大正解。

二枚ともいいんだが、6月18日に届いたのを毎日毎日リピート再生するうち、いまの僕には『恋愛小説 2 - 若葉のころ』の方が沁みてくるような気になっている。ハードでコアな音楽マニアのみなさんの一部は(僕が最近までそうであったように)、歌手としての原田知世は相手にしていないかもしれないので、『恋愛小説』『恋愛小説 2 - 若葉のころ』二枚の収録曲をちょっとだけ説明しておこう。

2015年リリースの『恋愛小説』は、二曲を除き有名アメリカン・ポップ・ソングを歌ったもの。ジャズ歌手がよくやるようなスタンダード(「ナイト・アンド・デイ」「ブルー・ムーン」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」)もあるし、あるいはひょっとしたらもっと有名なエルヴィス・プレスリーの「ラヴ・ミー・テンダー」。イギリス人女性歌手ダスティ・スプリングフィールドが初演だが、曲はアメリカ人であるバート・バカラックが書いた「ザ・ルック・オヴ・ラヴ」。またノラ・ジョーンズのレパートリーや、レナード・コーエンなど。

アメリカの歌じゃない二曲のうちどっちが有名かというと、絶対に間違いなく一曲目のビートルズ・ソング「夢の人」(アイヴ・ジャスト・シーン・ア・フェイス」だよね。七曲目「イフ・ユー・ウェント・アウェイ」を書いたマルコス・ヴァーリはブラジル人だから、これもアメリカン・ソングのなかに入れなかった。しかしこの曲は、マルコス・ヴァーリのアメリカ合衆国時代に、全曲英語詞をつけて歌われた1968年の『サンバ ’68』のなかのもの。読みかじる情報では、初期のブラジル時代に書いていた曲ばかりのアルバムだそうだけど、僕はオリジナルを知らないので、まあアメリカン・ポップ・ソングに入れてもよかったかもしれない。

これに対し2016年リリースの『恋愛小説 2 - 若葉のころ』の方は、同じくカヴァー集といっても日本の歌謡曲をとりあげている。僕の世代だと、だいたいどれも懐かしい思い出が蘇ってくるものばかりだが、個人的に特に大好きなのが、四曲目の太田裕美「木綿のハンカチーフ」(1975)と、六曲目のキャンディーズ「年下の男の子」(1975)、七曲目の久保田早紀「異邦人」(1979)、九曲目の山口百恵「夢先案内人」(1977)の四つ。ネットで検索すれば他の収録曲も全部出てきて、誰が初演歌手で何年か全部書いてあるので、ぜひお願いします。

だがしかし『恋愛小説 2 - 若葉のころ』で、僕にとってこれが一番グッと来るのは、上記四曲ではない。一曲目の「September」(竹内まりや 1979)だ。これが!もうすんばらしいのなんのって!まずだいたいこの原田知世ヴァージョンはファンク・ミュージックだもんね。ウソだ〜!と思うそこのあなた、ぜひちょっとこれを聴いてみて。
これはティーザーだから短くて、どうもイマイチ分りにくいもかもしれない。4/4拍子を使ってあるサビ部分からはじまっているしね。でもその後ファンク・ビートに戻っているじゃないか。これしかし、曲の出だしのイントロ部分がもんのすごくカッコイイんだけどなあ。Spotify で問題なく聴けますのでお願いします。 エレベ(鳥越啓介)がくぅ〜んと鳴って、そのままビートを刻みはじめ、ドラムス(みどりん)が入ってヘヴィ・グルーヴになり、二枚とも全曲でプロデュースとアレンジもやっている伊藤ゴローのエレキ・ギターが単音弾きでリフを奏ではじめた瞬間に、僕は降参。知世ちゃんが歌いだしたら、もう泣きそう。

泣きそうになるのは、松本隆の書いた「September」の歌詞はトーチ・ソングだからだ。しかし、竹内まりやのオリジナルって、ここまで良かったっけなあ?原田知世ヴァージョンではホーン・リフの入り方もカッコよくグルーヴィだ。伊藤彩ストリングカルテットも素晴らしい。アレンジとプロデュースをやっている伊藤ゴローの仕事ぶりが見事すぎるということなんだろうけれど、このサウンドとリズムに乗って知世ちゃんにこんな内容を歌われたら歌詞内容が沁みすぎて、だから泣いちゃいそうになるんだよね。

ブラック・ミュージック路線は『恋愛小説』の方にもある。二曲目のノラ・ジョーンズ「ドント・ノウ・ワイ」だ。これの原田知世ヴァージョンは、まごうかたなきハイ・サウンドのソウル・ミュージック。誰が聴いてもそうだと分る鮮明なハイ・サウンドなんだよね。これもかなり短いティーザーみたいなものがあったのでご紹介しておく。こっちはこの約1分程度のティーザーでもハイだと分るはず。これも伊藤ゴローのアイデアなんだろうなあ。CD を買う気がない方は Spotify でお願いします。
伊藤ゴローの持味の一つであるボサ・ノーヴァ仕立てがいくつもあって、『恋愛小説』だと例えば五曲目の「ナイト・アンド・デイ」とか、八曲目「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」などが典型的。僕が大好きなバカラック・ナンバー「ザ・ルック・オヴ・ラヴ」もリズム・フィールがちょっぴりブラジリアンだけど、これはしかし北米合衆国のブラック・ミュージックっぽい要素もある。特にエレベではなくウッド・ベース(やはり鳥越啓介)を使ってヘヴィなリフを演奏させているあたり、そんな感じがする。このウッド・ベース・リフはかなり重い。フリューゲル・ホーン(織田祐亮)はちょっとジャジー。バカラックの書いた曲が持つ官能性は弱くなっているが、露骨なセクシーさを求めるアルバムじゃない。

『恋愛小説』の方は、全体的にフワ〜ッと優しいサウンドに原田知世のヴォーカルが包まれていて、だからブラック・ミュージックになっている二曲目「ドント・ノウ・ワイ」でも、激しいものじゃなくハイ・サウンドをチョイスしたというのが非常によく理解できる。そこが伊藤ゴローの目論見だったんじゃないかな。空中に漂うアンビエント・ミュージック風な部分も感じるサウンドで、それでも BGM にもなるがしっかり耳を傾けると感じる歯ごたえがある。

『恋愛小説 2 - 若葉のころ』は、書いたようにいきなりのファンク・ビートではじまりますがゆえ、それもやや賑やかめですがゆえ、しかもそんな強靭なビートとサウンドで切なく哀しい失恋を知世ちゃんに歌われますがゆえ、聴感上のイメージが『恋愛小説』とはかなり異なっている…、とアルバムを一回目に「September」だけ聴いたときは思ったけれど、二曲目の「やさしさに包まれたなら」以後は、やはりフワリ優しいサウンドが漂っている。しかしそのサウンドは、妙な言い方になるけれど、「コード・ヴォイシングこそがグルーヴだ」とでも表現するしかない伊藤ゴロー独自の世界だなあ。

一曲目の「September」で泣きそうになる『恋愛小説 2 - 若葉のころ』だけど、聴き進むともっと大波が来てしまう。四曲目の「木綿のハンカチーフ」と六曲目の「年下の男の子」だ。前者は、やはり上で書いたようなハーモニー = グルーヴみたいな伊藤ゴローのプロデュースとアレンジ手法を感じるもので、あんな歌詞内容だからこりゃイケマセン。だが後者「年下の男の子」は全然違う。かなり激しく賑やかなリズムとサウンドで、愉快で楽しげに知世ちゃんが歌っている。そりゃあんな歌詞だからね。あ、これも若干ファンク・ミュージックっぽいね。

僕が年上女性をこそ好きになってしまうタイプの男であることは、いまさら繰返すまでもないだろうが、だからこそこんな「年下の男の子」みたいな歌を、まあ原田知世は僕より年下だけど、そこを僕みたいな趣味の男性音楽ファンにも説得力あるように、「あいつは、あいつは可愛い、年下の男の子」「私のこと好きかしら、はっきり聞かせて」「憎らしいけど好きなの」などというのを納得できるように、聴かせてしまうのが、芸の力、音楽の魔力ってもんだよなあ。

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