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2017/07/21

僕のオススメ 〜 マイルズの必聴曲10選

この手のことを書こうとすると、マイルズ・デイヴィスについてふだん書いている内容のリピートになるだけで、だからいつも僕の文章をお読みのみなさんには目新しい内容がぜんぜんないものに仕上がるはず。マイルズでなにがオススメかなんて、どんどんいつも書いているもんなあ。でも「10曲」まとめて並べるというのは僕はまだやっていないので、まあその点でだけちょっとは読んでもらえる部分があるかも。

こういうことを書いてみようと思い立ったのは、英紙『ザ・ガーディアン』の電子版が、今2017年4月付で以下のような記事を掲載していたからだ。題して「マイルズ・デイヴィスのベスト10曲」。三ヶ月ほど前のものになるのでいまさらだけど、マスコミが出すマイルズ関係のこの手のものに対し、なにかちょっと言わないと気が済まない性分な僕なもんで。申し訳ない。
でもこの『ザ・ガーディアン』紙のマイルズ・ベスト10曲は、かなりよくできた内容じゃないかと僕は思う。マイルズ専門家やジャズ専門家が同じことをやっても、だいたい似たようなものができあがりそうだ。なぜならば、この『ザ・ガーディアン』紙の選出基準もまた、時代を形作ってきた先進的音楽家としてマイルズを捉えて、その基準で10曲選んでいるからだ。専門家だってみんなそういう視点でマイルズを見ているもんね。だからそう違ったものにはならないはず。

しかしはっきり言うが、リンクを貼った記事をお読みになれば分るように「マイルズは音楽の流れをなんども変えた」とか、ま〜たまたこれかよ…、って、もうウンザリなんだよね。少なくとも僕はそう。マイルズだけじゃなく、音楽をそんな視点でしか捉えないなんて不幸じゃない?だからいつもみんなからそうとしか捉えてもらえないマイルズはすごく可哀想だと僕は思うんだよね。音楽の楽しみ・本質って、そういう部分には「ない」。絶対に。

だから僕もちょっと10曲選んでみよう。それでちょっと違ったマイルズ・ベスト10曲を書いておく。たぶん半分程度は『ザ・ガーディアン』紙の記事のチョイスそのままで、残り半分程度が入れ替わるはず。マイルズであれ誰であれ、いまの僕が音楽のオススメを選ぶ基準は、先進性、斬新さなどではなく、聴いて楽しいか、美しく感じられるか、リラックスできてくつろげて部屋のなかがいい雰囲気になるかどうか 〜 こういうことだ。新しい時代を招いたかどうかだけで、それで楽しさや美しさを犠牲にするなんてありえないだろう? 

以下、僕の選んだマイルズのオススメ・ベスト10曲。録音年順に。括弧内が収録アルバムで、その右が録音年。


1. Dr. Jackle (All-Star Sextet/Quintet With Milt Jackson)- 1955

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 またま〜たこれか!お前、いつもこればっかり推薦してんな!って言われそう。でも本当にいいもんねえ、このブルーズは。いいのはボスじゃなくミルト・ジャクスンのヴァイブラフォンだけどね。この曲、このアルバムがマイルズの推薦品になったことがないっていう事実が、いかにみんなしっかり「音を聴いていない」かという確固たる証拠だよ。マジで楽しいぜ。みんな、楽しいの、嫌なのか?
2. In Your Own Sweet Way (Collector's Items) - 1956

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 デイヴ・ブルベックの書いたこのプリティなバラードをマイルズは二回録音している。どちらも1956年。有名なのはファースト・レギュラー・クインテットでやった『ワーキン』収録ヴァージョンだけど、僕にはこの、ソニー・ロリンズやトミー・フラナガランらと共演したものの方が美しくチャーミングに聴こえる。
3. Solea (Sketches Of Spain) - 1960

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 ギル・エヴァンスとのコラボでやったものから、『ザ・ガーディアン』紙の記事は「アランフェス協奏曲」(『スケッチズ・オヴ・スペイン』)を選んでいるが、う〜ん、どうもあれはちょっとなあ。『マイルズ・アヘッド』から僕はできれば選びたかったが、あのアルバム、A面B面がそれぞれ「一つ」のメドレーみたいにつながっている(録音後の編集で)。一曲単位では抜きにくいんだよね。だから「アルバム」の10選には『マイルズ・アヘッド』を入れた僕だけど、「曲」単位では、同じ『スケッチズ・オヴ・スペイン』から、アルバム・ラストの「ソレア」を。マイルズの大好きだったスパニッシュ・スケール・ナンバーを一つ入れたかったというのもある。この曲のトランペット・ソロは絶品だ。

4. My Funny Valentine (My Funny Valentine) - 1964

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 1960年代中期のハービー・ハンコック&ロン・カーター&トニー・ウィリアムズ時代のライヴからこれを。『'フォー’&モア』の「ソー・ワット」でもいい。どちらも問題ない推薦品なんだけど、アクースティク時代のマイルズによるバラード吹奏最高傑作じゃないかと僕は(たぶんみなさんも)考えている、この「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を。リズム・アレンジも面白いが、(この YouTube 音源だと)6:29〜6:33 のハイ・ノート・ヒットに続き、そこから 下る 6:39 までが極上のカタルシス。
5. Frelon Brun (Filles De Kilimanjaro) - 1968

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 現在、僕が個人的にどハマり中の『キリマンジャロの娘』から、かなり面白いオープニングのこれを。こんなカッコいいクウェラ・ジャズ、なかなか聴けないよね。マイルズもこれ(と同アルバム四曲目の「キリマンジャロの娘」)しか、こんなアフリカン・ジャズはやっていない。この1968年前後のマイルズにいったいなにがあったのか?というのが、僕が目下探求中のテーマ。
6. In A Silent Way / It's About That Time (In A Silent Way) -1969

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 これはぜひ一曲(ワン・トラック)扱いでお願い。そうじゃないと11曲になってしまう。1968年末から共演をはじめるジョー・ザヴィヌルとマイルズの関係は、いままで僕もしばしば書いてきた。この二名共演のベスト・トラックがこれじゃないだろうか?だろうか?っていうより、僕のなかではこの評価はおそらく永遠に揺るがない。
7. Miles Runs The Voodoo Down (Bitches Brew) - 1969

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 同じ1969年録音から二つ選ぶのもどうかとは思ったが、上の六つ目とはグルーヴが違っているので許して。左チャンネルで叩くドン・アライアスのドラミングは、まるでニュー・オーリンズのミーターズのジガブー・モデリステみたい。グルーヴのタイプ、フィーリングも「なんちゃら・ストラット」みたい。あ、ニュー・オーリンズの音楽に似ているって、マイルズのこれはヴードゥーと曲名にあるじゃないか…。いま初めてこの意味のニュアンスに気が付いたような気がするぞ(^^;;。
8. Right Off (A Tribute To Jack Johnson) - 1970

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 ロックなマイルズ。ジョン・マクラフリンのギターもビリー・コバムのドラムスも完璧なロック・マナー。でもエレベのマイケル・ヘンダスンの弾き方は、やっぱりリズム&ブルーズ/ファンク系だ。少なくともブラック・ミュージックのものだよね。フロントで吹くマイルズのオープン・ホーンも絶好調。この1969/70年あたりは、64年ごろと並び、マイルズのオープン・ホーン・トーンが最もブリリアントだった時代の一つ。いやあ、カッチョエエ〜。
9. Prelude (Agharta)- 1975

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 やっぱり1973〜75年のツイン・ギター・バンドのライヴから一つ選んでおこう。僕の一番好きな1975年2月1日大阪公演盤の一つ『アガルタ』一枚目のトップ・トラック。ピート・コージーの一回目のギター・ソロが終わって、しばらくしてボスのオルガン・インタールードをはさみ、その後テーマ・モチーフみたいなものを二管で吹く前までの18:08〜21:58 までの展開は、なんど聴いてもいまだにシビレる。マイルズの全録音中、この約三分間こそが僕はいちばん好きだ。なんど聴いてもいまだに「いちばん」好き。この音楽家の全生涯で「いちばん」。
10. The Doo Bop Song (Doo-Bop) - 1991

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 1981年復帰後のものを一つ入れたかったというよりも(『ザ・ガーディアン』紙の記事は75年一時隠遁までからしか選んでいないね)、これを選んだ理由は、ヴォーカルものを一個だけは入れておきたかったということ。ジャズでもなんでも人声の歌が聴こえた方が楽しんじゃない?いまの僕はそういう気分なんだけどね。でもマイルズでヴォーカルものというと、あまりパッとしたものがないんだよね。イージー・モー・ビーと共演したこの「ザ・ドゥー・バップ・ソング」も、人によっては面白くないかもしれないが、僕はけっこう好きだよ。

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コメント

いやぁ、マイルスを堪能してるというよりもとんちんデービスを堪能してる感じで楽しめるね。
60年代終わりから70年代マイルスなんかは、ツイッターでとんちんによく勧められたことなんか思い出したよ。それから最近の話題でもニューオリンズとマイルスの心なんかは好きだしね。そしてコレクターズアイテム、いいよね。あの頃のだとオレオも良くて、トレーンとやってるのとロリンズとやってるのと迷うね。
まったく関係ないけど、ビル・エヴァンスが加わった「ラブ・フォー・セール」や「いつか王子様が」なんかは、部屋の雰囲気を良くしてくれるので聴きやすいし個人的に好きだね。まあ、耳の肥えたマイルス・リスナーからはSo whatとか言われちゃうんだろうけどな。
楽しい選曲と解説を、どうもありがとう😊

「オレオ」は、『リラクシン』のより、ロリンズやホレス・シルヴァーらと一緒にやった『バグズ・グルーヴ』の方が僕は好きだね。「いつか王子様が」のスタジオ・オリジナルのピアノは、ビル・エヴァンスじゃなくてウィントン・ケリーだよ。(とくに『カインド・オヴ・ブルー』の)「ソー・ワット」は、耳の超えたマイルズ愛好家は、あまり推薦しないと思う。

「いつか王子様が」のピアノはウィントン・ケリーだね。ぼくがまぎらわしい書き方だったなぁ。このピアノもすごく好きだよ。
So whatは、What about itのつもりで引っ掛けて書いたので、「耳の肥えた」マイルス・リスナーがこの曲を推してるってつもりで書いたんじゃないんだよ。ぼくが書いたことに意味なんかないよって言ってくるマイルス・ファンもいるだろうなぁってことを意識してみただけさ。
でも、とんちんが言ってるように、肩が凝らないいい演奏を、好きなものは好きって言った方が楽しいってことをぼくも言いたかったんだ。わかりづらかったねw

ただまあホント「僕好みの」マイルズっていうことだから、ほかのみなさんに喜んでもらえる自信はあまりないんだよね。

友達の多分最近ジャズファンになったばかりの女性の方に送ってあげたらすごく喜んでました。わたくしもマイルズの海賊版さがしていた時に聴いたフライデー・マイルズとかにはぶっとびました。かなり前ですが。いつもブログ楽しみにしてます。

masaさん、それはメチャメチャ嬉しいご報告です。そうやってどんどん入ってきてほしいんですよね。

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