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2017/07/22

キューバの愛の歌をあなたに

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『キューバ恋歌集』(Cansiones de Amor desde Cuba)…、と、こうスペイン語題を付記したものの、これは日本盤しかない CD で、西村秀人さんと竹村淳さんの選曲・編纂でテイクオフから1997年に発売されたもの。しかし僕は今年になるまでこのアルバムの存在を知らなかった。知ったのは今年二月ごろの『ラティーナ』誌にディスク・レビューが載ったからで、それによればオフィス・サンビーニャからの配給だった。

それでオフィス・サンビーニャの公式サイトでこれを買った僕。メール・アプリに残る購入履歴では、今2017年2月21日に商品が発送されたとなっている。だから22日か23日あたりに僕んちに届いて聴いたんだよね、『キューバ恋歌集』。いま僕の手許にあるそれも、ジャケット裏に「1997」と記載があるのだが、それをどうして今年二月にオフォス・サンビーニャが売ったのかは分らない僕。でもそんなことはどうでもいいよね。だって、キューバのラヴ・ソング集、それも失恋関係は一切なく、対象への求愛や告白や褒め称えたりするものばかりが21曲どんどん流れてくるから、いまの僕の気分にはピッタリすぎるほどピッタリ。

キューバン・ソングでそんなような恋愛歌というなら、たいていボレーロとかフィーリンだろうとお考えのみなさん、当たりです。『キューバ恋歌集』の収録21曲は、すべてボレーロかフィーリン。それだけ。ゆったりとしたテンポで甘く優しくスウィートに愛を歌っているものだけが選曲されているのだ。こ〜りゃいいね。二月に買ってなんどか聴いたときは、うんイイネと思っていただけだが、もういまはこういう音楽アルバムこそが、僕にはこれ以上なく嬉しくて楽しめて、しかもここ最近の僕の気分をそのまま代弁してくれているじゃないかとなってしまうのだ。

実際、『キューバ恋歌集』附属ブックレットでは、最初の見開きに曲目と歌手一覧が書いてあるが、それをめくると白紙のページがあって「from 〜〜〜」、改行して「to 〜〜〜」とあり、その下に罫線が引いてあり。だからこれは誰か好きな相手にメッセージを添えて送る、それで愛を告げる、そういうための CD アルバムなのかもしれない。ブックレット本文には竹村淳さんの詳しい解説文に続き、収録全曲のスペイン語原詞と日本語訳詞も掲載されれている。だから、このテイクオフ盤『キューバ恋歌集』は、想いを寄せる異性への愛のプレゼント品として活用されることを想定してあるな、きっと。

いまの僕には、そんなことをしたい、『キューバ恋歌集』を、そのブックレットに相手のお名前と僕の名前を書いてメッセージを添え、CD を送りたい女性がいるんだけど、僕自身この CD を手放したくないので、もし贈るならもう一つ買わなくちゃいけないよなあ。買っちゃおうかなあ。僕が今年二月に買おうとしたときにはアマゾンで品切れだったのでオフォス・サンビーニャ通販で買ったのだが、いま見たらアマゾンでも復活している。どうしよう?

な〜んて、僕の個人的な事情はみなさんにとってどうでもいいことだから、アルバム『キューバ恋歌集』の中身の音楽の話をしておかないとね。書いたように収録の全21曲がボレーロかフィーリンなんだけど、ホントこの手のラヴ・ソングをやらせたら、ボレーロやフィーリンのキューバの歌手、演奏家たちほどうまい音楽家は、世界中探してもいないんじゃないだろうか。もしこれがスペイン語ではなく英語の歌だったりしたら、全世界でもっともっと人気があると僕は思う。しかしそうならない、ちょっとひそやかな世界であることも、いまの僕にとってはいい感じに映る。

『キューバ恋歌集』のなかにはかなりの有名曲もある。5曲目の「君こそわが栄光」(La Gloria Eres Tu)、8曲目の「シボネイ」(Siboney)あたりは誰でも知っているスーパー・スタンダードだよね。

ほかにも、4曲目の「コモ・フエ」(Como Fue)、6曲目の「黒い涙」(Lagrimas Negras)、11曲目の「二輪のクチナシ」(Dos Gardenias)、12曲目の「人生は夢まぼろし」(La Vida Es Un Sueño)、14曲目の「あなたが私を愛してくれたら」(Si Me Pudieras Querer)、18曲目の「しおれたバラ」(La Rosa Mustia)。これらも人気・知名度があるはずだ。僕が知っているくらいなんだから、キューバ〜ラテン歌謡ファンの方なら当然ご存知のはず。

歌ったり演奏したりしているのも有名人が多い。ベニー・モレー(「コモ・フエ」)、オルケスタ・アラゴーン(君こそわが栄光」)、セサル・ポルティージョ(「遠く離れていても一緒」)、ロベルト・ファス(「あなたが私を愛してくれたら」)、オマーラ・ポルトゥオンド(「あなたが必要」)、ホセ・アントニオ・メンデス(「私の恋人」)、アンヘル・ディアス(「しおれたバラ」)、ミゲリート・クニー(「恋人よ、また明日」)。

歌詞の中身の話をあまり詳しく書いてもちょっとなあ…、という気分なのと、もしかりにそんなことをしたら僕の気分がどんどん高揚してしまい、いろんな意味でヤバいことになってしまう(^^;;)ので、やめておこう。こうやって曲題を書いているだけでちょっぴり妙な気分なんだからさぁ〜。やはりサウンドやリズムのことを、このあと本当にほんの少しだけ書いておく。

アルバム『キューバ恋歌集』には、ヴォーカル抜きのインストルメンタル演奏が二つある。トップとラスト。1曲目エルネスト・レクオーナの「いつも私の心に」をやるコンフント・パルマス・イ・カーニャと、21曲目「どんな結末にも」をやるコンフント・ペドロ・フスティス。前者はレキント・ギターをかき鳴らす音に続きクラリネットが主旋律を吹き、その背後はボンゴのみ。と思っているとパッとリズム・パターンが変わりレキント・ギター(たぶん二台)が前面に出る。そして再びクラリネット。クラリネットが吹くあいだは官能的で甘いムードだが、レキント・ギター部分ではちょっぴり快活。

21曲目「どんな結末にも」はほぼアクースティック・ピアノ独奏に近い。伴奏はボンゴのみというかなりシンプルな編成で、ロマンティックなメロディをひたすらスウィートに演奏してくれる。これらインストルメンタルがアルバムのオープニングとクロージングになっているのは、間違いなく竹村淳さんの意図だ。前置きと余韻みたいなもんだよなあ。前置きとはすなわちアレで、余韻とはすなわちアレ。

本番(?)のヴォーカル・ナンバーが続く2〜20曲目でのサウンドとリズムは、どの曲もよく似通っている。これも間違いなく選曲意図が感じられる。愛の歌をひたすら甘く官能的に優しくムーディに歌うのを、そのまんま同じスタイルの伴奏サウンドとリズムで支えているものを、あえて続けてどんどん並べているんだよね。でもリズム、というかビート感はやはりラテン・ミュージックらしく強靭さがある。まあそれが感じられないとね、どんな音楽も。

アルバム中、八曲目の、これまたエルネスト・レクオーナ作の「シボネイ」だけ、ガクンと録音が古い。前後とのギャップがあまりにも明白だ。1947年結成のトリオ・タイクーバによる演唱だが、40年代末か50年代初頭か、そのあたりの録音じゃないかなあ(それにしては古い音だが?)。録音年の記載は全曲ないので分らないのが残念。

10曲目「遠く離れていても一緒」は、作者であるフィーリンの音楽家セサル・ポルティージョ本人によるアクースティック・ギター弾き語り。ギターもヴォーカルも素晴らしいが、ギター一台だけでの弾き語りで、こんな「遠く離れていても君は僕と一緒」(contigo en la distancia / amada mia estoy)なんて歌詞、ヤバいだろう?こんなふうに弾き語りできたらなあ…。

自作自演といえば17曲目の「私の恋人」。作者であるホセ・アントニオ・メンデス自身が歌うのだが、これは残念ながらギター弾き語りではなく、ピアノ(兼オルガン奏者)を中心とするコンフントによるものだ。ホセのちょっと鼻にかかったハスキー・ヴォイスがとってもセクシーでいいね。ホセ(ギターは弾いていないみたい)と鍵盤以外にはボンゴだけなんじゃないかなあ。

16曲目、これもホセ・アントニオ・メンデス作「あなたが必要」を歌うオマーラ・ポルトゥオンドの伴奏もアクースティク・ギター一台だけ。弾いているのはオマーラじゃないだろうが、かなりロマンティックな弾き方で、これもいいなあ。アルバム中この曲の録音が一番新しそうだ。かなり最近の音に聴こえる。オマーラの歌い方は、特に「あなたが足りない」(me faltabas tu)という最終盤でかなりグッと迫る節回しだ。

その他、まあキリがないのでやめておくが、管楽器が大きめの音で鳴っているオーケストラ・スタイルでの伴奏も複数あったりするが、だいたい基本的にはシンプルな少人数編成での伴奏が多い。しっとり、じっくり、ゆっくりと情感を込めてのサウンドとリズムで、テンポも落ち着いて緩く、そんな伴奏の上で歌手たちが愛を告白したり、語り合って愛し合ったりしているんだよね。

だからこの『キューバ恋愛歌』の全72分は、僕だけのたった独り暮らしの部屋のなかで、どなたか女性のことを夢想しながら聴いてもかなりいい気分だが、もしかりに一緒に聴けたりなんかしたら、最高の雰囲気になるんじゃないだろうか?

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