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2017/07/05

シーラ・マジッドの新作がこれからの季節にピッタリ

Unknown









たったの41分しかないなんて。もっと聴かせてくれよ、見た目も完璧に僕好みのシーラ・マジッド…、なんて思ったりする僕はやっぱりポップ・ミュージックが分っていないんだろう。このくらいの長さがちょうどいいんだよね、マレイシアの女性歌手シーラ・マジッドの今2017年の新作『ボネカ』。ホントいい感じのポップ・アルバムだ。それもマレイシア〜東南アジアのローカル色が薄くて、全世界で通用する、だからいままでシーラのことをご存知なかった日本のみなさんにも安心して推薦できる普遍的音楽だ。ちょっと聴いてみてくれないかなあ。一発で気に入ってもらえると思うけどね、J-POP とかを中心にお聴きのみなさんにも。

しかし日本でもシーラ・マジッドは、特に1989年以後は、そこそこ知られているはずだ。アルバムの日本盤だってその頃二枚リリースされている。全世界で活躍するようになっているので、特にマレイシアの歌手だと意識する必要もないし、また音楽性も普遍的ポップ・サウンドが多いので、いわゆるワールド・ミュージックだなんて、シーラについては僕もほぼ意識しない。ただ単にいい歌手だなと思って楽しんでいるだけだ。

そんなシーラ・マジッドのユニヴァーサルなポップ色が、新作『ボネカ』でも全開なんだよね。しかもラテン・タッチが聴ける。音楽のラテン色は本当に世界中どこにでもあるけれど、シーラの新作でもなんの違和感もなくそれが溶け込んでいるのだ。まずアルバム『ボネカ』一曲目の「Melukis Dunia」のリズム・アレンジにおける跳ねるフィーリングはカリブ〜ラテン由来だ。曲も詞も書きアレンジとプロデュースもしているトーパティ(インドネシア)の着想なんだろう。間違いなく打ち込みサウンドが入っているなあと思ってクレジットを見たら、トーパティがプログラミングもやっている。ホーン・リフ(はクレジットされているのがサックス一名だけなので、シンセサイザーだろう)の入り方もサルサ風。この一曲目は完璧なダンス・チューンだ。

同じようなラテン・ダンス・チューンがほかにもあって、三曲目のアルバム・タイトル曲「Boneka」、六曲目の「Lebih Dewasa」(は必ずしもダンス・ビートではないアクースティック・ギターの伴奏によるカリビアン・バラードではじまって、途中からラテン風の打ち込みビートが効き、ホーン・リフも同じくダンサブルに)、九曲目の「Kasih Kamu」も、静かにはじまったかと思った次の瞬間に賑やかなリズムとサウンドになったり、落ち着いたり、また賑やかになったりの繰返し。派手な部分はやはりリズムとホーンがラテンな感じ。

これら四曲以外の六曲はしっとりしたバラードをシーラ・マジッドが歌い込む。といっても濃厚だったり激情的だったり情念をぶつけるかのようなものは一つもない。六曲全てアッサリ、サラリ、軽く、たおやかで、肩の力が完全に抜けているのがいい。ユルいとまで言っても差し支えないほどなんだけど、この場合の「ユルい」とは否定的な意味ではない。ほどよくリラックスしている歌い方なので、トーパティのアレンジとプロデュースもシーラのそんなヴォーカルを上手く活かしていて、聴いている側も心地良いっていう意味なんだよね。

四曲のダンス・チューンでも六曲のバラードでも打ち込みが聴こえるのは間違いないが、しかし多くの場合、ドラマーやベーシストやパーカッショニストなど、生楽器のリズム・セクションも参加しているというクレジットになっている。しかもだいたいの曲でストリングスと女性バック・コーラスが入るのもいい感じにポップ色を加味。ストリングスは生楽器の場合とシンセサイザーの場合があるみたい。女性コーラスは一名か二名しかクレジットされていないので、多重録音しているんだろうなあ。

ダンス・チューンのなかでの僕の特にお気に入りは、ややユーモラスで愛らしい一曲目の「Melukis Dunia」、三曲目の「Boneka」。落ち着いたバラード・ナンバーだと四曲目の「Haruskah Ku Pergi」、そしてアルバム・ラストの英語曲「マイ・オール」が好き。バラードのこれら二つとも、楽曲、アレンジ、シーラ・マジッドの歌い廻し、これらすべて乾いていて、聴き手の感情に決してまとわりつかず、アッサリと聴かせてくれる。これからの季節、まるで陽光のもとゆったりと涼やかにくつろいでいるようなフィーリングで、上質ポップスのお手本みたい。

英語曲「マイ・オール」だけはトーパティではなく、ジェニー・チンのアレンジとプロデュース。英語で歌われているからというよりも、そのアレンジ/プロデュース・ワーク、その結果もたらされたサウンドが見事だと思うんだよね。この「マイ・オール」でだけはコンピューター・サウンドが一切なく、エレピ一台だけを例外とし、ほかは全て生演奏のアクースティック楽器。ギター、ベース(アップライト型のウッド・ベース)、ドラムス、それだけ。それがこの曲の持味と、それを表現するシーラ・マジッドのヴォーカルを際立たせていると思うんだよね。

いやホント、そこらへんにあるような普通のなんでもない、しかし上質なポップス・アルバムだけど、シーラ・マジッドの『ボネカ』、オススメです。乾いた質感があるのでヒンヤリ涼やかなフィーリングもあって、だから猛暑がもうじき到来するという日本人にはピッタリ来る聴きやすい音楽ですから。

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