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2017/08/16

真夏にピッタリ 涼感音楽クロンチョン (3)〜 ヘティ・クース・エンダン篇

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ヘティ・クース・エンダンは別にクロンチョン歌手ではない。広い分野でヴァーサタイルに活躍するインドネシアのポップ歌手だ。『ポップ・ムラーユ』や『うぶ毛がそそり立つ』なんかが有名な人だしね。そんなヘティのクロンチョン曲集が『クロンチョン・コレクション』で、2000年にオフィス・サンビーニャから日本リリースされた。

ヘティの『クロンチョン・コレクション』はオリジナル・アルバムではない。このインドネシア女性歌手のアルバムを、マレイシア国内でリリースしているライフ・レコーズのカタログにもとづいて、日本の田中勝則さんと田中昌さんが編纂したコンピレイション盤で、日本での配給はオフィス・サンビーニャだけど、あくまで『クロンチョン・コレクション』の制作・販売はマレイシア・ライフで、マレイシア国内でも同内容の CD が発売された(はず)。

タイトルだけでお分りのように、このアルバムは幅広く活躍するヘティ・クース・エンダンが歌ったクロンチョンだけにフォーカスを当て、それらだけを集めて一枚にしたもの。これを聴いていると、ヘティの歌手としての素晴らしさも実感するのと同時に、かなりポップなかたちに姿を変えているクロンチョンの面白さ、どうアレンジし歌い方を変えてもクロンチョンらしさは失わない懐の深さみたいなものが、インドネシア音楽素人の僕にだって実感できる。

ヘティの『クロンチョン・コレクション』。一曲目が言わずと知れた名曲「ブンガワン・ソロ」。ヘティもなんどか録音しているらしいが、収録されているのは1978年ヴァージョン。ふつうみんなフルートでやりはじめるイントロのメロディをシンセサイザーで代用。ギター、チェロは生楽器でやっているみたいだけど、チャックやチュックはなし。またドラム・セットが入り、バック・ビートを叩き入れている。

そんな感じの楽器編成、アレンジ、演奏スタイルでやっている「ブンガワン・ソロ」だから、かなりポップなフィーリングに仕上がっていて親しみやすく聴きやすい。米英のポピュラー・ミュージックを中心に聴いている僕やみなさんにも馴染みやすい感じのクロンチョンじゃないかなあ。

それでも一昨日、昨日と書いたクロンチョンのチャーム、すなわちリズム・セクションがややせわしなく細かいクロス・ビートを刻む上で、ヴォーカリストが大きくゆったりと乗って歌い、フルートやヴァイオリン(の代用品)も同じく大きくうねるように演奏するという、この細/大の絶妙なぶつかり合いが生む大海の波のようなノリ(=グルーヴ)は、ヘティ・ヴァージョンの「ブンガワン・ソロ」でもまったく変わらず、しっかり表現されている。

二曲目の「クロンチョン・リンドゥー・マラム」もトラディショナルなクロンチョン名曲だが、ヘティ・ヴァージョンはモダンでポップ。しかもユーモラスというかヒョウキンだ。歌のオブリガートやブリッジ部でシンセサイザーが入れるフレーズなんか、頭の固い伝統派だったら怒り出しそう。でもそんなヒョウキンさが、みなさんご存知、へティの持味なんだよね。

クロンチョンをやりながらポップでコミカルで軽快なフィーリング、というのは三曲目「クロンチョン・クマヨラン」でも同じだ。昨日、ネティの記事でも触れた古典名曲なんだけど、へティのこれはシンセサイザーとドラムスが大活躍し、さしづめ YMO 的テクノ?・クロンチョンとでも呼ぶべき仕上がり。

四曲目以後は、もはやクロンチョンだかなんなんだかよく分らないポップさ。六曲目「竹笛」なんか相当に甘いマイナー・キーのしっとりバラードで、エレベも入り、特にクロンチョンだなんだと言う必要もないものだよなあ。ヘティの歌い方も大人びた(これを録音したころは実際そんな年齢になっていたらしい)もので、普通のメロウ・ポップ・バラードとして聴ける。真夏だと熱帯夜みたいなフィーリングだ。

ところが七曲目の「クロンチョン・バハナ・パンチャシーラ」は、いろんな意味で正統派でトラディショナル・スタイルのクロンチョンになっているから面白い。ヘティのヴォーカルも伝統派クロンチョン・シンガーの歌い方に近づいているし、バック・バンドの楽器編成も演奏スタイルもそう。正体が分らないが小型のギター族弦楽器であろうものが、繰返し細かく小さく同一音程フレーズを弾くのも効果的。しかしエレベは入っている。

そのあたりは、どうやらブディマン・BJ(と彼のグループ)のプロデュースのたまものらしい。ヘティ&ブディマン・コンビで、1978〜84年にかけてオリジナル・アルバムが八枚あるらしい。ブディマンの指導で、ヘティも独立後のインドネシア国民音楽みたいになったクロンチョンをちゃんと本格的に歌おうという決意をしたらしいんだよね。

『クロンチョン・コレクション』では、上記7曲目〜12曲目までの六曲が、ブディマンのプロデュースしたクロンチョン作品で、これがかなりいい。8曲目「スタンブル・ティンガル・クナンガン」でのスケールの大きさといい、9曲目「バリ島」での力の入りようといい、ワルジーナの得意レパーリーである10曲目の「ガンバン・スマラン」で聴ける粘り気のある歌い廻しといい、素晴らしい。

その10曲目からすでにそうだが、またやはりヘティ&ブディマン・コンビの作品である11曲目「キチル・キチル」、12曲目「ダユン・サンバン」あたりは相当にファンキーでもあって、もとからコミカルな味のあるヘティが、正統派本格クロンチョンを経て、それを本来の持味と合体させて余裕たっぷり。かなりポップで面白い仕上がりになっている。

アルバム『クロンチョン・コレクション』の残り三曲は、マントース時代。最後の二曲はプロデュースもマントースで、ポップでモダンでありながら、伝統的な部分も感じられるクロンチョン。ヘティの歌い方にもより一層の余裕(綽々といった印象だ、聴くと)とスケールの大きさが感じられて素晴らしい。

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