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2017/08/30

「Pチャン」の快楽 〜 渋さ知らズのダンス天国

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デューク・エリントンやサン・ラーが21世紀の日本に降臨したら、きっとこんな音楽をやるだろうという渋さ知らズ。 P ファンク軍団っぽい感じもあって、面白いよねえ。いちおうジャズ・ビッグ・バンドに分類されているけれど、そんな枠内におさまるような音楽集団じゃない。ジャズをベースにしながらも、いろんな音楽要素がゴッタ煮のヤミ鍋状態でドロドロに混在しているのが渋さ知らズだ。

渋さ知らズはなんでも1989年から不破大輔を中心に活動を開始しているらしい。少なくとも初リリース作品が1993年の『渋さ道』だけど、そのころ僕は全く気づいてもいなかった。アンダーグラウンドで活動していたようだ。まあ僕も東京にいた時代だから、アンテナを張っていればなんとかなったのかもしれないが、う〜ん、鈍感だった。まあレーベルも地底レコードなんていう名前だしな(笑)。

僕が渋さ知らズを初めて知ったのは、2002年のライヴ・アルバム『渋旗』がリリースされたとき。この CD は HMV 渋谷店のジャズ・フロアで見つけた。この記憶は間違いない。全く知らない名前だなあと思ったけれど、なんだったか、ちょっと信用してもいいかなという筋の推薦の言葉が添えられていて、じゃあちょっと飛び込んでみようと思ったのだった。ジャズ・フロアにあって、しかもビッグ・バンド作品だということは HMV 店頭で分っていた。

自宅に帰って聴いてみたら、即座に一発で KO されてしまった『渋旗』。こ〜りゃスゴイ!こんなものすごいビッグ・バンドがいま日本にいるのか!何者なんだ?!と思ってネットで調べてみるものの、2002年だからまだネット検索はいまみたいに手軽ではないし充実もしていなかったのだった。だからあまり分らず、とにかく CD ショップ店頭で見つかる渋さ知らズの CD を根こそぎぜんぶ買うことになる。

2017年現在でも、僕にとっての渋さ知らズ最高傑作は、やっぱり『渋旗』なんだよね。この作品でゾッコン惚れてしまったという弱みだけなんだろうが、う〜ん、他のアルバムにはないなにかがこのライヴ・アルバムにはあるような気がする。僕の耳にはそう聴こえてしかたがないんだよね。

アルバム『渋旗』は全七曲で計72分。何年にどこで行われたライヴ・パフォーマンスなのか、どこにも記載がない。収録曲は、もっと前からやっていたレパートリーもあるみたいだけど、僕は当然ぜんぶ初体験。最初はこりゃぜんぶ凄い凄いと感じて嬉しくて、なんどもなんども繰返し聴いていたが、なかでも特にお気に入りだったのが四曲目の「諸行でムーチョ」と六曲目の「Pチャン」。グルーヴが明快だからだ。三曲目の「股旅」もフランク・ザッパみたいで面白くて好きだし、五曲目の「反町鬼郎」のタメの効いた深いリズム・フィールも大好きだ。

まあでも僕にとってはやっぱり「諸行でムーチョ」と「Pチャン」だなあ、『渋旗』では。も〜う楽しいったらありゃしない。「諸行でムーチョ」は諸行無常にひっかけてある曲題なんだろうが、「Pチャン」ってなんだろう^^;;?まあいいや。前者はヴォーカル・ナンバーで、意味不明の、たんなる言葉遊びのナンセンス・リリックを(たぶん)女性二名が歌うのが最高に楽しくて大好き。しかもななんだかちょっとセクシーじゃないか。

一回目のヴォーカルに続きテナー・サックス・ソロがあって、しかし二名クレジットされているテナー奏者のどっちが吹いているのか、僕には分らない。二回目のヴォーカルのあとにはエレキ・ギター・ソロがあるが、ギタリストも二名いる。ドラマーも二名いて、パーカッショニストもいるから、「諸行でムーチョ」だけでなくほかの曲でもそうだが賑やかで、しかも統一感がない、というかピッタリ合致した合奏をしていないのがいいんだよね。音を出すタイミングが少しづつズレているのが最高のカオス・グルーヴを生み出している。管楽器アンサンブルも、それはハーモニーがなくすべてユニゾン合奏だけど、それも微妙なズレが生むサウンドが広がりとキラメキをもたらしている。

六曲目の「Pチャン」の、この『渋旗』収録ヴァージョンは、2017年現在に至るまでも、渋さ知らズ全音源のなかで僕のモスト・フェイヴァリット。だ〜ってね、最高にカッコイインだよ〜。キモチエエ〜〜!まず右チャンネルのドラマーが叩くのが合図で、ユニゾンのホーン・アンサンブルでテーマ、でもないモチーフを演奏。渋さ知らズの曲の合奏部はだいたいどれもシンプルなリフの反復なんだよね。テーマみたいなのは。どんな曲でも複雑高度なアンサンブルで楽しませるような部分はなく、だんだんと音を重ねていきながら少しづつ色をくわえていき、それもぜんぶズレているので濁って混沌感があって面白いっていう、そんなやり方だよね。しかしホーン・アンサンブルに絶対にユニゾンしか使わないっていうのは、不破大輔のなんらかのこだわりなんだろうか?

『渋旗』ヴァージョンの「Pチャン」では、ドラムスの音に続きいきなり大音量の管楽器ユニゾン・アンサンブルが出て大迫力。しかもサビ部分でリズム・フィールがちょっと変わる。まあサビでリズムがチェンジするのはむかしからみんなよくやるパターンではある。テーマ・アンサンブルに続きエレキ・ギター・ソロが、こりゃまたジミ・ヘンドリクスみたいでカッコエエ〜!左チャンネルで弾く人がメインだけど、適宜右チャンネルでもう一人のギタリストが弾き絡むのも楽しい。

ギター・ソロが終るとドラマー二名とパーカッショニストだけによる打楽器乱れ打ちパートになって、そこも素晴らしく楽しいが、それが終ると、これは間違いなく片山広明であろうフリーキーなテナー・サックス・ソロになる。最初はフリー・ジャズっぽい吹き方をしているけれど、後半部から同一フレーズの反復をはじめて、それがバック・アンサンブルを導くのもイイ。まるでイリノイ・ジャケーとライオネル・ハンプトン楽団みたい。

それがきっかけに怒涛の大音量ホーン・アンサンブルになって(もちろんユニゾン)、ウィルスン・ピケットのあの「ダンス天国」のあの有名なフレーズを演奏。日本のグループ・サウンズ、ザ・スパイダースもやっているあれだ。ザ・スパイダース・ヴァージョンでは、いきなりそこからはじまっているよね。僕も大好きなんだよ、あの「ら〜、らららら〜♪♫」がね。

「ダンス天国」のリフをユニゾン合奏の大音量でホーン群が演奏して、そのまま最初と同じテーマ・モチーフになだれ込む。『渋旗』ヴァージョンの「Pチャン」では、そのスーパー・ダンサブルなリズムとあいまって(実際これを聴くとき、僕は部屋のなかでいつも踊っている)、その管楽器合奏の雪崩のような怒涛の迫力で、僕はもう完全に昇天。これ以上の快楽がありますかって〜の!

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コメント

 渋さ知らズの初リリースは『渋さ道』で地底レコードからとありますが、正確にはnutmegからのリリースで、『dettramen』と同時発売でした。地底レコードからは再発です。
 『渋さ道』がNCー2065、『dettramen』がNC-2066です。
http://www.geocities.jp/radiodaze76/KKK0nut.htm

 93年の発売当時『ミュージック・マガジン』が好意的に取り上げたのを読んで、ディスク・ユニオンに走りました。

ご教示ありがとうございます。ってことは、nutmegからの初回盤も地底レコードからのの再発も、同じ1993年だったってことですか?

 手元にあるB1F渋さ知らズの『SOMETHING DIFFERENCE』が(おそらく)地底レーベルのファーストだと思いますが、それが94.6月なので『渋さ道』の再発が93年ということは無い筈。

 そこで地底レコードのHPを見たら『渋さ道』について「長らく入手不可能になっていた、渋さ知らズのデビューアルバムがこれ。オリジナルは1993年4月にナツメグ・レーベルから600枚のみがリリースされた。地底レコードからの再発にあたっては、1曲ボーナストラックを追加」とありました。
 地底レコードからの再発は96年でB7F、現在は廃盤とあります。

 私もそんなに前から知っていたわけではなく、CDが出て初めて知りました。なんといっても初めて見た『渋さ道』発売直後のピット・インのライブが忘れられません。
 ここの所聞いてなかったので、久しぶりに聞いてみます。

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