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2017/08/10

グルーヴ、それは溝に刻まれた楽しい躍動感

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Unknown






(いま耳が聴こえにくいので音楽の細かいことが分らないシリーズ 19)

音楽用語として使われる際のグルーヴ(groove)とは、もちろんアナログ・レコードに刻まれた溝のこと。そこを針が進んで、最終的に音になる…、ってちょっと考えただけじゃ、物理的な溝から最終的にスピーカー(など)がつくる空気の振動=現実の音になるまでのプロセスは、やっぱり僕なんかにはピンとこない。CD でも配信音源でも同じだけど、摩訶不思議というに近い感覚すらあるもんなあ^^;;。

そんなレコードの溝=グルーヴ。このグルーヴはいったいいつごろから演奏のノリとか、賑やかで楽しい一体感とか、ダンサブルで高揚するフィーリングなどを指すようになったんだろう?形容詞化してグルーヴィとか言うもんね。

グルーヴもグルーヴィも、僕だってふだんかなりよく使う言葉だ。アナログの溝に針を落とすことはなくなった僕だけど、グルーヴは毎日たっぷり味わっている。しかし溝のことを意味したグルーヴが、いったいどうしてダンサブルに高揚する演奏のノリ、フィーリングを指すものへと変化したのかは、ちゃんと調べないと、僕にはいまちょっと分らない。

レコードの溝には波のような感じがあるみたいだから(顕微鏡で拡大した写真などを見るとね)、寄せては返す波のうねりのようなものを指すようになって、レコードのグルーヴは音楽用語には違いないので、次第に音楽演奏のうねりを指すようになり、結果的にノリノリの快感ダンサブル・フィーリングを指すことになったのだろうか???まあちゃんと調べりゃ分るんだろうが。

音楽作品で、レコードの溝という意味ではなく演奏のノリノリ・フィーリングという意味で、このグルーヴという言葉を使った最初の一例は、僕の知る範囲では、ジャズ・ピアニスト、レッド・ガーランドのプレスティジ盤『グルーヴィ』だ。1957年12月リリース。もちろんもっと早い例があるはずと思うんだけど、いまいちばん最初にパッと思い付いたのがレッド・ガーランドのこれ。

レッド・ガーランドの『グルーヴィ』、 僕はレコードも CD も一度も買ったことがない。むかしジャズ喫茶でよくかかっていたので、その記憶があるだけなんだよね。確かにグルーヴィなピアノ・トリオ演奏に違いないと僕も思うが、自分で買う気にはなれない程度のアルバムだったよなあ。悪口言っているみたいになってスミマセン。もちろん悪くはないと僕も思うよ。買うこたぁないけれど。いま YouTube でふつうに聴ける。

レッド・ガーランドのアルバム『グルーヴィ』に同名の曲はない。だから全部録り終えて、ポスト・プロダクションも終えたプレスティジのボブ・ワインストックが、1957年12月のレコード発売時に考案したアルバム・タイトルなんだろう。楽しくてダンサブルだし、跳ねるようなフィーリングもあるし、特に A 面一曲目の「C・ジャム・ブルーズ」(デューク・エリントン作)なんか相当いいじゃんねえ。マイルズ・デイヴィスのアルバムのいろんな曲でさんざん聴けるのと完璧に同一パターンだけどね。
こういう(のやその他の収録曲の)ジャズ演奏を「グルーヴィ」と名付けたボブ・ワインストックのネーミング・センスはなかなかいいよね。といっても1957年時点で彼が考え付くわけだから、彼のまったくの独案なわけがなく、グルーヴやグルーヴィをこんな意味で使う用法は、もっと前からしっかりあったのだということになる。ホント、いつごろから溝→演奏のノリと意味が変化するようになったんだろう?

上掲の「C・ジャム・ブルーズ」のようなノリは、この曲を書いたデューク・エリントンの、彼の楽団による初演、1942年ヴィクター録音ヴァージョンでもしっかり聴ける。グルーヴィというかスウィンギーだ。12小節定型ブルーズで、シンプルなリフを反復するだけ。あとはアド・リブ・ソロが続くのみという、まるで1930年代のカウント・ベイシー楽団みたいな演奏で、エリントンらしくない(これはいい意味で)。
しかしこれ、共作者としてエリントン楽団のクラリネット奏者バーニー・ビガードの名前も登録されていて、しかもバーニー・ビガード自身のグループで一年前の1941年に録音もあるんだよね。曲題が「C・ブルーズ」だけど。ってことはこりゃまたボスのエリントンがイッチョ噛みした、というよりそのままいただいちゃって自分の名前をクレジットにくわえちゃっただけなんだろうね。この当時の慣例で、楽団員の書いた曲の版権登録には、必ずボスが名前を連ねるか、自分だけの名義にしてしまう。

でも今日だけはシーッ!デューク・エリントンだということにしておきたい。それは今日話題にしている「グルーヴ」という言葉の使い方にかんし、スティーヴィ・ワンダーのあの超有名曲に言及したいからなんだよね。とこう書けば、もうみなさん「な〜んだ」とお分りのはず。そう、1976年リリースのアルバム『ソングズ・イン・ザ・キー・オヴ・ライフ』収録の「サー・デューク」のことだ。
この「サー・デューク」は、アルバム『ソングズ・イン・ザ・キー・オヴ・ライフ』の一枚目 A 面ラストだった。CD なら五曲目。1977年にはシングル・カットもされている、音楽愛そのもの、偉大な先達たちへの敬意を歌った一曲で、エリントンだけでなく、カウント・ベイシーやグレン・ミラーやルイ・アームストロングやエラ・フィツジェラルドの名前も登場するので、ジャズ・ファンのみなさんだってもちろんご存知のはず(?)。あれっ、ジャズ・ファンのみなさんには二枚目 A 面トップだった「イズント・シー・ラヴリー」(可愛いアイシャ)のほうが有名なのかな?

さて、上でご紹介した「サー・デューク」の歌詞のなかに、以下のような一節が聴きとれる。

But just because a record has a groove
Don't make it in the groove

う〜んと、前後もちゃんと引用しておいたほうがいいな。

Music is a world within itself
With a language we all understand
With an equal opportunity
For all to sing, dance and clap their hands
But just because a record has a groove
Don't make it in the groove
But you can tell right away at letter A
When the people start to move

さて、「But  just because a record has a groove / Don't make it in the groove」部分。一回目のほうのグルーヴはもちろんレコードの溝のことだ。しかし二回目のグルーヴを、スティーヴィはどういう意味で使っているんだろう?「レコードにはもともと溝があるからってだけで、それを溝に落としちゃダメだよ」?あるいは「レコードにはもともと溝があるからってだけで、音楽を型にハメちゃダメだよ」ってこと?

しかしスティーヴィだってグルーヴという言葉をそんなシンプルには使っていないはず。「Don't make it in the groove」部分では、 グルーヴ=演奏のノリ、動き出したくなるようなワクワクするダンサブルなフィーリングという意味にだってひっかけてあるはずだ。しかし演奏のノリという意味だと解釈すると「レコードをノリノリでつくっちゃダメ」と歌っているようにも解釈できちゃうので、う〜ん、どうなんだろう?

「But just because a record has a groove / Don't make it in the groove」部分の前で、音楽には歌い踊り手拍子をとる権利がみんなに平等にあると歌っている。後でも似たようなことを歌っている。だからやっぱりこの問題の箇所は「レコードにはもともと溝があるからってだけで、溝にハメる=決まりきったことをするだけじゃダメだよ」という意味で、直接的には、使っているのかも。

前と後で音楽のダンサブルなフィーリングのことをスティーヴィは歌っているんだから、これはあくまで直接的にはということ。暗示的に演奏のノリ=グルーヴィさという意味での groove も含んでの歌詞なんじゃないかと僕は考えているんだけれどねっ。

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