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2017/09/25

僕のシャーリーナ!

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1996年と死後のリリースになったが、フランク・ザッパの生前に完成していたプロジェクトらしい『ザ・ロスト・エピソーズ』。僕はそんな大したザッパ愛好家じゃないので、詳しいことはぜんぜん知らないし、事実関係については実を言うとあまり興味も湧かない。作品化された「音」にだけ関心がある。ただ CD アルバムになったものを聴いて、これは楽しい、美しい、面白いんじゃないかということだけ、今日も少し書いておこう。『ザ・ロスト・エピソーズ』、スタジオ・アウトテイク集らしいが、しかし、かなりの録音癖だな、ザッパ。

『ザ・ロスト・エピソーズ』で最初に僕がオッとなるのは2トラック目の「ロスト・イン・ア・ワープール」だ。これは1958年か59年の録音らしく、曲はザッパが歌詞はドン・ヴァン・ヴリート(キャプテン・ビーフハート)が書いて、それぞれギターとヴォーカルを担当。フランクが弾く背後で、やはりギターでリズムを刻む音が聴こえるのがボビー・ザッパらしい。なんでもないふつうの12小節定型ブルーズで、ふつうのみなさんには音楽的にはさほど面白いものじゃないかもしれないが。
あ、待てよ、『ザ・ロスト・エピソーズ』フル・アルバムで YouTube に上がっているじゃないか(笑)。このアルバムは、ある意味、ザッパとキャプテン・ビーフハートとのフレンドシップ・メモリアルみたいな側面もあるような気がして、実際、ビーフハートがヴォーカルを取っているトラックも多いし、その点にも注目したら面白いのかもしれない。
次に僕の耳を惹くのが7トラック目のインストルメンタル「テイク・ユア・クローズ・オフ・ウェン・ユー・ダンス」っていう、この曲題はなにかのメタファーなんだろうか?そこはちょっと分らないが、なにが面白いかって、これはボサ・ノーヴァなのだ。1961年録音。違う録音が1968年リリースの『ランピー・グレイヴィ』ラストにも収録されているが、そのアルバムは CD でも(それぞれ A 面 B 面だったものが)1トラックになっている。つまり連続しているので、一曲単位で抜き出せないので、聴きかえすのがやや面倒。確か1950年代米〜60年代前半英ふうにポップなビート・ナンバーで、しかもサーフ・ロックみたいだったような?記憶違いかもしれないので、指摘してください。

『ザ・ロスト・エピソーズ』の「テイク・ユア・クローズ・オフ・ウェン・ユー・ダンス」はちょっと違っていて、間違いなくこれはボサ・ノーヴァだ。ドラマー、チャック・グローヴがスネアのリム・ショットで、それを典型的に刻んでいる。あ、この曲、『ウィア・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー』 にも入っているなあ。これはトラックが切れているから楽に聴きかえせたが、やはりビート・バンドふうだ。僕はこの『ザ・ロスト・エピソーズ』ヴァージョンがいちばん好き。
次の8トラック目「タイガー・ローチ」なんか、これもドン・ヴァン・ヴリートがヴォーカルだけど、1962年か63年録音というのが笑えるほど納得できてしまうビート・ナンバー。ガレージ・ロックふうでもある。でもアメリカにまだビートルズの影響はあまりなかったはずの時期だから、ザッパのこういうもののばあいは、1950年代の米ロックンロールから直接来ているものなのかなあ?
10トラック目の「ファウンテン・オヴ・ラヴ」(1963)、12トラック目の「エニイ・ウェイ・ザ・ウィンド・ブロウ」(63)、14トラック目の「チャーヴァ」(63)あたりまでは、本当に時代を感じるサーフ・ロックふうにポップなビート・ナンバーで、いかにもこの時代をザッパも生きたんだなと、マジで笑えるほど分りやすい。

マザーズ名義になる16トラック目の「ウェディング・ドレス・ソング」からの3トラック一続き(1967)は、録音年からしても演奏メンツからしても、もはやお馴染のザッパ・ミュージックだ。したがって特になにも言う必要はないだろう。それよりも、22トラック目の「ザ・グランド・ワズー」で、やはりキャプテン・ビーフハートが朗読していたりする(1969)のは面白い。楽器演奏も聴こえるが、それはシンクラヴィアをザッパが1992年にかぶせたものなので、オリジナルはビーフハートの無伴奏朗読だったんだろう。

25トラック目の「Rdnzl」(1972)は本当に素晴らしい。1978年の『スタジオ・タン』で発表されていたものだが、約八分間のそれよりも、約三分間の『ザ・ロスト・エピソーズ』ヴァージョンのほうがいいなあ。完璧なるジャズ・ロック・フュージョンだ。後半は4/4拍子になって、エレベのトム・ファウラーがラニング・ベースを弾き、その部分でジョージ・デュークがジャジーなエレピ・ソロ。
27トラック目の「インカ・ローズ」は大好きな一曲なんだが割愛して、28〜30トラック目の、アルバム・ラストを盛り上げるクライマックス、「リル・クラントン・シャッフル」(1970)「アイ・ドント・ワナ・ゲット・ドラフティッド」(79)「シャーリーナ」(70)のことに書いておかなくちゃ。だってね、ホント〜ッに楽しい三連発なんだもんね。

「リル・クラントン・シャッフル」はふつうの12小節定型ブルーズ・シャッフルだけど、あまりにも素晴らしいドン・シュガー・ケイン・ハリスのヴァイオリンが大活躍。曲全体の約五分間、もっぱらシュガーケイン・ハリスがヴァイオリンでソロを弾きまくるだけのインンストルメンタル・ナンバー。大好きだぁ〜、こういうの。これは1996年の『ザ・ロスト・エピソーズ』まで完全未発表の曲だったらしい。
「アイ・ドント・ワナ・ゲット・ドラフティッド」はテリー・ボジオがドラムスを叩く、軽快でポップなディスコ調ナンバー。だけどこれは徴兵されるのは嫌だという曲だよね。1981年のアルバム『ユー・アー・ワット・ユー・イズ』のラストに「ドラフティッド・アゲイン」という曲題で収録されて発表されていたもののオリジナル・ヴァージョンだ。
さてさて、いままで書いてきたことぜ〜んぶ含め、アルバム『ザ・ロスト・エピソーズ』でいちばん楽しく美しく、いちばん素晴らしいのが、ラスト30トラック目の「シャーリーナ」だ。名前を唱えながら女性に愛を捧げる内容っていう、例によってよくあるパターン。これは1970年のアルバム『チャンガズ・リヴェンジ』に収録されて発表されていたものだが、こりゃもう絶対にだれがどう聴いたって『ザ・ロスト・エピソーズ』ヴァージョンのほうに軍配をあげるはずだ。ドン・シュガー・ケイン・ハリスがやはりヴァイオリンを弾き、ザッパとのコーラスで歌の可愛くてチャーミングな旋律を歌っている。まずヴォーカル、次いでヴァイオリン・ソロ、そしてザッパのギター・ソロ、最後にまたヴォーカルが出る。あぁ、シャーリーナ、大好きだぁ〜っ!

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