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2017/09/28

カァ〜ッコイイ〜!〜 ザッパのインストルメンタル・ロック

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1969年夏録音のアメリカ音楽としては、マイルズ・デイヴィスの『ビッチズ・ブルー』と並ぶ傑作であろうフランク・ザッパの『ホット・ラッツ』。いや、見方によっては『ホット・ラッツ』のほうが上になるかもなあ。少なくともここ最近の僕の気分で選ぶと、マイルズのそれよりザッパのこれがいい。熱心なマイルズ狂である僕にしてこう言いたいほど、ザッパの『ホット・ラッツ』は素晴らしい。

さほどザッパにご執心だとも言えない僕なので、やはりこれにかんしても事実関係の詳しいことは知らないんだけど、レギュラー・バンドであるマザーズ・オヴ・インヴェンションからいったん離れて、ということなのかどうなのか?、フランク・ザッパ単独名義のソロ・アルバムとしては初の?一枚である『ホット・ラッツ』。確かにそれ以前のマザーズ名義作品で聴けた音楽とはかなり違う。

『ホット・ラッツ』全六曲のうち五曲までがインストルメンタル演奏オンリーでヴォーカルなし。だからマザーズ作品で実に頻繁に聴けるサティリカルなヴォーカルのやりとりも当然ない。ムジーク・コンクレートみたいな部分や、その他実験的前衛音楽なものもなく、大胆に編集しまくっているような部分だって少ない。

言ってみればふつうに楽器演奏をやっている『ホット・ラッツ』。だからとても分りやすい一枚なんだよね。フランク・ザッパをまだ聴いたことがぜんぜんないという方々、なかでも特にジャズっぽいような楽器即興演奏ものがお好きなみなさんには、『ホット・ラッツ』こそ格好のオススメ盤になると思うんだよね。ヴォーカル・ミュージックこそが好きだというファンのみなさんにとってはイマイチかもしれない。

じゃあそのヴォーカル入りの一曲から先に話をしておこう。『ホット・ラッツ』二曲目の「ウィリー・ザ・ピンプ」。アルバム中この曲でだけ、ザッパの親友キャプテン・ビーフハートが歌っている。1969年の夏録音だから、ビーフハートもすでにお馴染のあの塩辛いダミ声ヴォーカルが完成しているのだが、しかしこの曲でのヴォーカルはそんなどうってことないように思う。
お聴きになれば分るように、まずヴァイオリンが出るが、それがシュガー・ケイン・ハリス。しかしヴァイオリンもヴォーカルもどこかへすっ飛んでいってしまうもの 〜 それがザッパ本人の弾くエレキ・ギター・ソロだ。圧巻の一言。永遠に終わらないかと思うようなめくるめくギター・ソロで、しかも凄く上手い。通常のコンヴェンショナルな弾き方がなく、この人のギター演奏はいつもそうなんだけど、どこでどうしてこんなフレイジングになるのか分らないようなものなんだよね。ギターって手癖が出やすい楽器なんだけど、それがこの「ウィリー・ザ・ピンプ」でもぜんぜんないもんね。こんなギター、ふつう弾けないんだ。

そう、この曲だけでなくアルバム『ホット・ラッツ』は、ある意味、ザッパのギター・ヴァーチュオーゾぶりを楽しむための一枚でもある。ただ長い時間ジャムっているだけのように聴く方がいらっしゃるかもしれないが、とんでもない!緊張感がまったく途切れないし、アッと言わせるプレイの連続で聴き飽きない。



アルバム中いちばん長尺(16:57)の、CD だと五曲目の「ザ・ガンボ・ヴァリエイションズ」。曲の半分はイアン・アンダーウッドのホンクなテナー・サックス・ブロウを大々的にフィーチャーしたものだが、後半は(シュガー・ケイン・ハリスのヴァイオリン・ソロに続き)やはりザッパのギター・ソロがある。う〜ん、やっぱりちょっとジャムっぽい?しかしこれ、どうしてウッド・ベースを使っているんだろう?
マザーズ時代からのメンバーであるイアン・アンダーウッドは、『ホット・ラッツ』でも八面六臂の活躍ぶりで、このアルバムは、事実上、ザッパとイアンとのコラボレイション作品と呼んでもいいほどなんだよね。複数の木管楽器と複数の鍵盤楽器を担当し多重録音したり、ときに同時演奏!したり。またイアンは音楽大学出身で譜面読解能力が高いので、その意味でもザッパの音楽を表現するのには向いている。「ザ・ガンボ・ヴァリエイションズ」でのザッパのギター・ソロは、しかしたったの四分程度しかないなあ。ギターでやっていると思って聴くと、内容的にはやはり異常で変態的。

三曲目の「サン・オヴ・ミスター・グリーン・ ジーンズ」は、前作『アンクル・ミート』にあった曲の再解釈でインストルメンタル・ヴァージョン。これはかなりジャジーだ。ジャズ・ロックと呼んで差し支えないかも。ここでもソロ一番手はザッパのギター…、かと思いきやイアン・アンダーウッドの複数鍵盤と複数木管がかぶさる。しかしやはりあいまあいまを縫ってザッパがギターを弾く部分はアンコンヴェショナルだ。う〜ん、でもこれはいわゆるソロっぽくはない。全体がかなり緻密にアレンジされていて(特に管楽器群の入り方が)、相当入り組んでいる。それでも後半はギター弾きまくりソロに近い。凄いなあ、これも。だれか、こんなギターの弾き方ができた人物、ほかに知っていたら教えてほしい。
CD なら四曲目の「リトル・アンブレラズ」は、これまたイアン・アンダーウッドのショウケース。彼の弾くアクースティック・ピアノをフィーチャーし、さらにその背後でやはりイアンが弾くほかの鍵盤と木管多重録音でアンサンブルを形成。木管アンサンブルで奏でるメロディは美しい。もちろんそれはイアンではなくザッパの譜面だ。綺麗だなあと思っていると、あっという間に終ってしまう。アルバム一曲目「ピーチズ・エン・レガリア」と同趣向のものだと言える。ギター・ソロはなし。
CD アルバム六曲目「イット・マスト・ビー・ア・キャメル」でだけ、ヴァイオリンがジャン・リュック・ポンティ。テーマ・メロディの上下飛躍ぶりがまるでラクダの背中みたいだいうことなんだろうか?曲の演奏全体も、やや現代音楽風に近いというか、クラシカルな管弦楽作品を書くときのザッパの筆に似ている。イアン・アンダーウッドの弾く鍵盤はシンセサイザーだろうか?そんなサウンドに聴こえるけれど、違うかもしれない。終盤残り約二分程度となったところで、ようやく御大ザッパのギター登場、と思うと、ちょろっと鳴っただけですぐにドラムスとアンサブルになる。これも小品だよなあ。
小品といえば、でようやく『ホット・ラッツ』オープニングの「ピーチズ・エン・レガリア」の話。こ〜れが!カッコイイのなんのって!僕個人の趣味嗜好だけで言わせてもらえるならば、ザッパの全楽曲中、これ(か、あるいは「インカ・ローズ」かのどっちか)が一番の大好物。そしてどうやらそれは僕だけじゃないみたいだ。そ〜りゃそうだよね、だ〜ってカッコよくて可愛くてチャーミングで、メロディも素晴らしいしね。ザッパはギターではなくオクターヴ・ベースというものを弾いているらしいが、それはなんだろう?ギターのそのままオクターヴ下の六弦ベースってこと?しかしそんなような音も聴こえない気がする。やはりイアン・アンダーウッドが、木管に鍵盤にと大活躍。
ドラムスのスネア連打ではじまるのもカッコイイこの「ピーチズ・エン・レガリア」。しかしこれたったの3分39秒しかないんだぜ。スッとフェイド・アウトして終ってしまう。こんなに楽しくて美しい音楽なら永遠に聴いていたいのに。だから僕はよく iTunes で一曲のみのリピート再生設定にして、繰返しこの「ピーチズ・エン・レガリア」ばかり聴くこともある。それくらいの大好物なんだよね。

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コメント

 なぜかほとんど聞いてないザッパですが、たしか一枚は持っていたはずだと思って探すと『ホット・ラッツ』が出てきたので聞いてみた。購入時一度だけ聞いてピンと来ずしまい込んだ記憶がある。

 やはりピンとこず特に一曲目は変な曲だな、と思ったがリピートにして聞き続けた。すると2回目ぐらいにギターソロが耳に飛び込んできて、確かめると「永遠に終わらないかと思うようなめくるめくギター・ソロ」と書かれている2曲目だった。繰り返し聞いているとなんて変な曲と最初は思った1曲目もよくなってきた。このブログを読まなければ『ホット・ラッツ』を引っ張り出して聴くこともなかったと思うので感謝。

 よくわからないが一聴すぐ好きになる曲・音楽と繰り返し聞いているうちに好きになる曲・音楽があるのはなぜだろう。

僕なんか、ミンガスの『直立猿人』がいいと思えるまでに20年以上かかってますからね(^_^;)。一聴で入ってくるものもあるし、みなさんそういうもんだと思います。

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