« 岩佐美咲のものすごさ 〜「糸」 | トップページ | 生聞電飾公園 »

2017/09/06

ソウル・ギター・ジーニアス 〜 コーネル・デュプリー『ティージン』

510hwulo7nl








ギタリスト、コーネル・デュプリーの1974年作『ティージン』。いいよねえ。フュージョンでもいいし、フュージョンはもともとインストルメンタル R&B みたいな部分もあったわけだから、このアルバムはソウル・ギター作品と呼んでもいい。後者のほうがピッタリ来そうな内容だ。しかも都会的にオシャレで、そうかと思うと軽く適度な泥臭さもあって、申し分ない一枚。

『ティージン』がアトランティックからリリースされた1974年は、まだバンド、スタッフは発足していない。コーネル・デュプリーはキング・カーティスのバンドで活躍し、したがって当然アリーサ・フランクリンの伴奏もやっていた。だからまあやっぱりソウル・ギタリスト的資質の人だよねえ。しかもシングル・トーンでよく歌う。「歌心がある」なんていうことは「どうでもいい」んだというのがここ最近の言い方らしいんだけど、僕の世代からしたらそんなことを口にするなんて、おそろしくてとてもとても…。

コーネル・デュプリーの『ティージン』はカヴァー・ソングがメインで、コーネルのオリジナル・ナンバーは A3の「ジャマイカン・レイディ」(チャック・レイニーとの共作名義)と B4の「プレイン・オール・ブルーズ」の二つだけ。この二曲はなかなか面白いのでそれらの話からしておこう。それにしてもフュージョンのなかには、ジャマイカなんちゃら、カリビアンなんちゃら、ブラジリアンなんちゃら、マダガスカルなんちゃら、アフリカンなんちゃら…がとっても多い。

A 面三曲目の「ジャマイカン・レイディ」は、いわば典型的なフュージョン・サウンドで、曲題どおりややカリビアンな趣もあるジャジーな一曲。曲じたいがそうだけど、特にパーカッションのラルフ・マクドナルド(当時のニュー・ヨークではトップのファースト・コール・パーカッショニスト)がカリブ要素を表現している。中盤でリム・ショットも多用するバーナード・パーディもそんなフィーリング。印象的なフェンダー・ローズはリチャード・ティー。 主役のギターはみなさんお馴染の弾き方で申し分ないが、やや控え目。その後のスタッフもほぼこんな感じだよね。
B 面四曲目、すなわちアルバム『ティージン』ラストの「プレイン・オール・ブルーズ」は、コーネル・デュプリーのオリジナル・ナンバー、というよりもこれは12小節の定型ブルーズだから、なにか「書いて」用意なんかはしていない。キーだけ決めて軽くヘッド・アレンジだけして演奏しはじめたものに違いない。エレベのチャック・レイニーが弾くラインは6/8拍子で、モダン・シカゴ・ブルーズのスタイル。ギターが左右で二本聴こえるのはもちろん、ホーン・セクションも、本演奏後のオーヴァー・ダビングに違いない。右チャンネルでシングル・トーンを弾く主役のギターに泥臭いブルージーさは薄い。ギターだけじゃなくバンドの演奏全体が都会的洗練を聴かせるのが、このフュージョン全盛時代(前夜)におけるブルーズ演奏だったんだろう。この曲はなぜか YouTube にない。

『ティージン』では、これら二曲以外はぜんぶカヴァー・ソングだけど、いちばん多いのがかつてのボス、キング・カーティスの曲なんだよね。A1の「ティージン」(ディレイニー・ブラムレットとの共作)、A2の「ブルー・ノクターン」、A4の「フィール・オー・ライト」と、A 面はほぼキング・カーティス・ナンバーのオン・パレード。1974年だとやはりまだボスの影響がかなりあったということかなあ。

A 面一曲目の「ティージン」はファンキーなホーン・リフも入って、サザン・ソウルをそのままインストルメンタル演奏したようなフィーリングで大好き。フュージョンがもともとどういう由来の音楽なのかよく分る。個人的な好みだけだと、僕はそれに続く二曲目のブルーズ「ブルー・ノクターン」がもっと好きだ。リチャード・ティーのゴスペル・オルガンも素晴らしいバラード・ナンバーで、6/8拍子のリズムに乗ってコーネル・デュプリーが、まるで語りかけてくれているかのようなフレイジイングでじっくり弾くのがイイ。弾き方じたいもオルガンとの会話みたいに感じるよね。
四曲目の「フィール・オー・ライト」は快調に飛ばすブギ・ウギ・シャッフル。主役のギターよりも、ジョー・ファレルのテナー・サックス・ソロとポール・グリフィンが弾くブギ・ウギ・ピアノが楽しい。これはどうってことないようなごくごくふつうの一曲ではあるのだが、クオリティはなかなか高い。これも YouTube で見つからないなあ。

B 面に行って一曲目の「ハウ・ロング・ウィル・イット・ラスト」はエリック・ゲイルの曲で、スタッフ結成後も第一作で再演しているので割愛。出来はどっちも同じくらいかなあ。それよりも、二曲目のレイ・チャールズ・ナンバー「ワット・ウッド・アイ・ドゥー・ウィズアウト・ユー?」 がとてもイイ。個人的にはこれこそアルバム『ティージン』のハイライトで白眉の一曲。ソウル・ギタリストとしてのコーネル・デュプリーの資質、魅力が最大限に発揮されている。大好きだなあ、こういうの。ジョージ・スタッブズのピアノとオルガンのなかにも自然とそこはかとなきゴスペル色が自然に混じって、やはり同じようである主役のギター同様、こういうのこそ、まさに理想的フュージョン。別名インストルメンタル・ソウル。
コーネル・デュプリー以下、全員がそれまで積み上げてきた音楽的キャリアの総決算として花開いたような、この「ワット・ウッド・アイ・ドゥー・ウィズアウト・ユー?」 こそが名演だから、これに続くアルバムB 面の二曲は余韻みたいなもんだよね。三曲目の「オーキー・ドーキー・ストンプ」はクラレンス・ゲイトマウス・ブラウンのレパートリーで、ゲイトマウスはコーネル・デュプリーのアイドルだったからとりあげたんだろうか。かなりジャジーなブギ・ウギ演奏で、伴奏もジャズ・ビッグ・バンドみたいなスタイルだ。楽しいね。

« 岩佐美咲のものすごさ 〜「糸」 | トップページ | 生聞電飾公園 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 岩佐美咲のものすごさ 〜「糸」 | トップページ | 生聞電飾公園 »

フォト
2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
無料ブログはココログ