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2017/09/22

マイルズ『”アナザー”・ゲット・アップ・ウィズ・イット』

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五週連続のマイルズ・デイヴィス、”アナザー”・シリーズ。マイルズが完全にトチ狂っていた1969〜75年で繰り広げてまいりましたが、本日とうとう最終回とあいなりました。さぞや名残惜しかろう…、なんていうような部分はおそらくみなさんにはぜんぜんなく、あぁ、ようやく終ってくれるのか、清々するぞというのが正直なところであろうと推察いたします。

がしか〜し、たった五回のシリーズであります。これが終っても、僕のマイルズ探求は命ある限り続くはずなので、また来週からも毎金曜日、マイルズ関連を書いてはアップしていくつもり。お目障りな方はどうぞ無視してほしい。興味のある記事だけ読んでいただければ、それで僕は十分幸せ。

『”アナザー”・ゲット・アップ・ウィズ・イット』も、先週同様、2007年リリースの『ザ・コンプリート・オン・ザ・コーナー・セッションズ』から音源をとってあるが、今週はすべて1973年以後75年までのものだ。このボックスで言えば3〜6枚目。プレイリストは、やはり元の『ゲット・アップ・ウィズ・イット』みたいに CD で二枚組という体裁を、不要とは思いつつ、採用した。

CD1

1, Big Fun / Holly-wuud (take 3)
2. Mtume (take 11)
3. Hip-Skip
4. What They Do
(total 45 min)

CD2

1. Big Fun
2. Holly-wuud
3. Mr. Foster
4. Peace
5. The Hen
6. Minnie
(total 45 min)

以下、録音データ。場所はすべてニュー・ヨーク・シティのコロンビア・スタジオ。

CD1

1. Recorded July 26, 1973

Miles Davis - trumpet, organ
Dave Liebman - soprano sax
Reggie Lucas - guitar
Pete Cosey - guitar
Michael Henderson - bass
Al Foster - drums
Mtume - congas

2, Recorded October 7, 1974

Miles Davis - trumpet, organ
Sonny Furtune - soprano sax
Reggie Lucas - guitar
Dominique Gaumont - guitar
Michael Henderson - bass
Al Foster - drums
Mtume - percussions
Pete Cosey - percussions

3. Recorded November 6, 1974

Miles Davis - trumpet, organ
Sonny Furtune - flute
Reggie Lucas - guitar
Dominique Gaumont - guitar
Michael Henderson - bass
Pete Cosey - drums
Mtume - congas

4. Recorded same date as 3

Miles Davis - organ, trumpet
Sonny Furtune - alto sax
Reggie Lucas - guitar
Pete Cosey - guitar, percussions
Dominique Gaumont - guitar
Michael Henderson - bass
Al Foister - drums
Mtume - congas, percussions

CD2

1 & 2. Recorded July 26, 1973
Miles Davis - trumpet 
Reggie Lucas - guitar
Pete Cosey - guitar
Michael Henderson - bass
Al Foster - drums
Mtume - congas

3. Recorded September 18, 1973

Miles Davis - organ, trumpet
Dave Liebman - tenor sax
Reggie Lucas - guitar
Pete Cosey - guitar
Michael Henderson - bass
Al Foster - drums
Mtume - congas

4. Recorded July 26, 1973

Miles Davis - organ
Dave Liebman - flute
Reggie Lucas - guitar
Pete Cosey - guitar
Michael Henderson - bass
Al Foster - drums
Mtume - congas

5. Recorded January 4, 1973

Miles Davis - trumpet, organ
Dave Liebman - soprano sax
Cedric Lawson - organ
Reggie Lucas - guitar
Khalil Balakrishna - sitar
Michael Henderson - bass
Al Foster - drums
Mtume - congas
Badal Roy - tablas

6. Recorded May 5, 1975

Miles Davis - trumpet
Sam Morriosn - tenor sax
Reggie Lucas - guitar
Pete Cosey - guitar
Michael Henderson - bass
Al Foster - drums
Mtume - congas

この『ゲット・アップ・ウィズ・イット』期、というか正確には1973〜75年期のマイルズ・ミュージック。この音楽家の全生涯で僕が最も好きな時代なんだけど、たぶんみなさんはそうでもないんだよなあ。中山康樹さんや僕など熱心なマイルズ・マニアはだいたいここが大好きだし、それを熱心に語りすぎて他人には口うるさいしで、どなたもなにも言わない、言いにくいというような状況になっているのだということに違いない。

でも好きなものは好きなんだからしょうがないよなあ。自分の愛好だけは今後も熱心に語っていく。だがほかの人が口を挟みにくいような状況をつくってきてしまったのは僕たちの責任なので、この状況だけは少し改善しなくちゃね。特に熱心なマイルズ・マニアじゃないみなさんが、マイルズ・ミュージックのなにを聴いてどう考えてどう発言しようとも、少なくとも僕だけは、今後めんどうくさいことを言わないことにすると、ここに宣言する。

さて『”アナザー”・ゲット・アップ・ウィズ・イット』になった、マイルズ1973〜75年のスタジオ音源。既発のものは CD2の1「ビッグ・ファン」と2「ハリ・ウード」だけだが、これとて73年に45回転シングル盤の AB 面となって公式発売されただけで、その後はまったく再発されず。どんな LP にも CD にも収録されず、ブートレグでなら聴けたが、公式には2007年の『ザ・コンプリート・オン・ザ・コーナー・セッションズ』の六枚目ラストに連続収録されたのが初で、いまでもそれが唯一。
こんなのオカシイよなあ。こんなにカッコよくて、しかも軽やかで、爽やかな風がサッと吹き抜けるようなファンク・ミュージックなんて、マイルズといわずだれといわず、ほかになかなかないのになあ。この二曲についての僕の思いは、以前、あらかた書き尽くしたので、こちらをご覧いただきたい。
これら二曲のシングル・チューンこそが、僕にとっては、1973〜75年のマイルズ・スタジオ録音で最高傑作だ。だから上記プレイリストでは、CD1のトップに、それらの元音源である編集前の「「ビッグ・ファン/ハリ・ウード(テイク3)」を置き、CD2のトップに二つのシングル・ヴァージョンを置いた。編集前のテイク3はこれ。
CD1の2「エムトゥーメ(テイク11)」は、オリジナルの別のテイクからもっと長めに編集されたものが、1974年リリースの『ゲット・アップ・ウィズ・イット』二枚目に収録されていた。演奏の基本パターンは同じだが、テイク11のほうがグッと引き締り、実際、演奏時間も短めだし、こっちのほうが出来がいいように僕は思うんだけどね。後半部のマイルズのソロ云々よりも、リズム・セクションの演奏が緻密でイイ。
CD1の3「ヒップ・スキップ」では、なぜだかドラム・セットをピート・コージーが叩いている。それはいいが、冒頭からしばらくのあいだ鳴っているファットな感じのシンセサイザー音みたいなのはなんだろう?マイルズが弾くオルガンの音を歪めてあるのか、あるいはドミニク・ゴーモンがギターに深いエフェクターを効かせているかのどっちかじゃないかと思うんだけど、やはりどうも判然としない。ここでもトランペット演奏云々よりもリズム・セクションだよね、聴くべきは。ソニー・フォーチュンもフルートだからいいと思う。
CD1の4「ワット・ゼイ・ドゥー」は、1975年あたりならライヴ・ステージでよくこういう演奏を繰り広げていたという典型例。スタジオ録音では、しかしこれだけなんだよね。いきなりピート・コージーが弾くブルージーなハード・ロックふうギター・ソロもカッコイイが、リズムのストップ&ゴーもなかなか快感だ。そのストップしているあいだにはエムトゥーメのコンガが気持ちよく入る。まさに『アガルタ』『パンゲア』っぽいじゃないか。この曲ではギターが三本聴こえるが(三本ってのはこの曲だけだと思う)、深めにファズを効かせてソロを弾きまくっているのがコージーだろうと判断した。ボスが後半部でちょろっとトランペットを吹くものの、それ以外はまったくなにも音を出していない。がしかし「演奏に参加していない」とは言えないだろう。
CD2に行って1と2の「ビッグ・ファン」「ハリ・ウード」については上で書いたので割愛。リンク先をご覧あれ。3の「ミスター・フォスター」という曲題はドラマーへの言及だろうが、実際の演奏で目立っているのはデイヴ・リーブマンのテナー・サックス。実際、このマイナー調の曲は1974年からライヴ・ステージで定番曲となり、「フォー・デイヴ」と(ブートでは)題されるようになった。75年になると、ソニー・フォーチュンがフルートで吹くようになる。
CD2の4「ピース」では、マイクル・ヘンダスンのエレベにエフェクターがかかっていてずいぶん歪めた音でリフを弾くが、しかし曲想はまったくゴリゴリ・ファンクではない。どっちかというと静かで美しいナンバー。デイヴ・リーブマンのフルートが聴きもので、これも『アガルタ』『パンゲア』のそれぞれ二枚目っぽいよなあ。
CD2の5「ザ・ヘン」は1973年1月4日録音で、この一曲がシタール奏者とタブラ奏者を起用したラストで、さらに1984年までにボス以外の鍵盤奏者を起用したラスト録音になる。そのせいで、この『”アナザー”・ゲット・アップ・ウィズ・イット』のなかではやや異質なサウンドを持っているが、カッコイイもんなあ。これを選ばないわけにはいかないよ。冒頭のエレキ・ギター、いいよね。後半部のボスのトランペット・ソロは、まあなんというかその〜、あれだ…。
CD2ラストの6「ミニー」という、人気女性歌手ミニー・リパートンに言及した曲題のこれは、以前も触れたがポップでスウィートなラテン・ファンク。1974年の公式盤『ゲット・アップ・ウィズ・イット』一枚目 B 面トップの「マイーシャ」の系列だけど、「ミニー」のほうが聴きやすくてイイネ。こんな甘くてポップなものが、75年のマイルズ・ミュージックのなかにもすでにあったんだよね。トランペット・ソロなしなのもいい。しかもこれ、かなりアレンジされているよなあ。

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