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2017/10/21

カーボ・ヴェルデのサウダージ 〜 祭 1

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僕が聴くとアフリカ音楽というよりブラジル音楽に近いように思うカーボ・ヴェルデ。っていうかあの国はそもそもいわゆる「アフリカ」の一部に含めてもいいんだろうか?でも少なくとも音楽的には、例えば荻原和也さんの『ポップ・アフリカ 800』にも登場し、p. 13 で解説文があったあと、pp. 28〜34にわたりアルバム・ガイドは26枚も掲載されている。大陸部ではないが、やはりアフリカにおける旧ポルトガル領の一部ってことだよね。

僕はカーボ・ヴェルデ音楽をほとんど知らない。聴いているのは、アンソロジー『ラフ・ガイド・トゥ・カーボ・ヴェルデの音楽』と、あとはセザリア・エヴォーラとナンシー・ヴィエイラ二名の女性歌手だけだ。あともう一つ、CD 四枚組ボックス『メモリアス・ジ・アフリカ』の二枚目がカーボ・ヴェルデ篇だ。『メモリアス・ジ・アフリカ』を買ったのは、今年になってアンゴラ音楽にハマってしまったからなんだけどね。

それで気が向いて、ちょっとこれだけでもどうかと思って、ナンシー・ヴィエイラの2007年作『ルース』だけ聴きなおしてみたら、あまりの素晴らしさにのけぞって卒倒しそうになってしまった。ほぼ失神。こんなにも美しく楽しい音楽だったなんてなあ…(恥)。いつもながらひとやものの真価に気づくのが遅すぎる僕…。こりゃイケマセン。ナンシーの『ルース』についてだけでも、時間があるときに書かなくちゃね。でも上述の荻原ガイドには、ナンシーの2011年作が掲載されていて、それがなんでも傑作なんだそうだ。持っていない。早速アマゾンでポチりました。

どうして今日カーボ・ヴェルデのことを書いているのかというと、これまた例によっての『ア・ヴィアージム・ドス・ソンス(ザ・ジャーニー・オヴ・サウンズ)』のカーボ・ヴェルデ篇がこのあいだ自宅に届き、このトラジソンのシリーズはぜんぶ買うと決めているので、新リリースのカーボ・ヴェルデ篇も買ったわけだけど、聴いてみたら面白くって、う〜ん、ホント、ナンシー・ヴィエイラといい、いままでこの国の音楽に熱心じゃなかった僕って…。なんたる鈍感さ。不明を恥じるしかない。

それでナンシー・ヴィエイラその他、すでに持っているものの話はまた別の機会にして、今日は『ア・ヴィアージム・ドス・ソンス』(カーボ・ヴェルデ篇)のことを少しだけ書いておきたい。いや本当に面白いんだよね。やっぱりブラジル音楽っぽい部分もあるが、ナンシー・ヴィエイラみたいにそれは濃厚ではなく、もっとプリミティヴで、しかも大陸部アフリカの音楽、特に西アフリカ音楽の痕跡が強いものがあったりする。

それでも『ア・ヴィアージム・ドス・ソンス』(カーボ・ヴェルデ篇)の一曲目「コルノロジア」はやっぱりショーロふうなんだよね。これ、絶対ショーロが入っているよなあ。なんたってカーボ・ヴェルデ音楽は、この島嶼国を支配したヨーロッパからの入植者が持ち込んだものと、彼らが大陸部西アフリカから強制連行した奴隷の子孫たちが伝えたアフリカ音楽と、さらにブラジルから流入したモジーニャが三大ルーツらしい。モジーニャはそのままモルナに姿を変え、カーボ・ヴェルデの国民音楽となった。ってことはモルナのなかにショーロがあっても不思議じゃないよなあ。

しかしながら『ア・ヴィアージム・ドス・ソンス』(カーボ・ヴェルデ篇)一曲目の「コルノジア」はモルナというよりコラデイラ。でも歌っているのはモルナの歌手ニルサ・シルヴァで、伴奏もギターその他同種の弦楽器複数本とやはりモルナ・スタイル。典型的モルナであるアルバム二曲目「ミリ」、四曲目「エスクータ・メ」(はニルサではなくチカ・セーラ)などよりテンポが速めなだけで、音楽の本質としては同じものであるように僕には聴こえる。

特に複数弦楽器のアンサンブル・サウンドで表現するリズムのノリ、グルーヴ感が、アルバム一曲目の「コルノジア」ではブラジルのショーロっぽいような気がする。歌のメロディに強い哀感が漂っていることも共通しているが、これはブラジル由来のサウダージというだけでなく、もっとそのルーツであるポルトガルから持ち込まれたフィーリングなんだろう。

ショーロによく似たコラデイラはアルバムにもう一曲あって、三曲目グルーポ・ルカールの「シターダ・ジ・ロメ」。こっちはインストルメンタル・ナンバー。二曲目や四曲目のモルナと比較すれば、よりダンサブルで、ノリもいいし、あれかなあ、モルナは座って聴くべき歌謡音楽で、コラデイラはあわせて踊るようなダンス・ミュージックだってことなんだろうね。ラテン・アメリカ圏でいえば、かつて日本でも絶大なる人気を誇ったトリオ・ロス・パンチョスとペレス・プラード両名の違いみたいなもんか?おかしい?

トラジソンのアルバム『ア・ヴィアージム・ドス・ソンス』(カーボ・ヴェルデ篇)では、コラデイラとモルナに続き、七曲目以後のフナナーとバトゥーケに行く前に、五曲目、六曲目と個人的にはけっこう興味深いスタイルの音楽が収録されている。五曲目「一月の歌」では、まずハーモニカが出て、それの伴奏がギター(だと思うが、同種の別弦楽器かも)。すぐに歌が入ってくるが、その背後で男声コーラスが聴こえ、また合唱になったりし、やはりハーモニカも入っている。ギター(族)も直接的はポルトガル人が持ち込んだんだろうが、大元のルーツはアフリカにある。ハーモニカはヨーロッパで誕生した楽器だよなあ。

六曲目「レコルダソーン」ではいきなりヴァイオリンが鳴りはじめ、それの伴奏がやはり複数本のギター族弦楽器。これは  CD 裏ジャケットに「マズルカ」と記載があるのが音楽ジャンル名、いやスタイル名なんだろう。確かに3/4拍子で、しかもアップ・テンポでビートが効いていて、かなりダンサブルだ。これもインストルメンタル演奏で歌はなし。ヨーロッパ由来の音楽だが、カーボ・ヴェルデではどう考えてもストリートのダンス伴奏音楽だったとしか思えない。

七曲目「深い谷」でフナナーが来る。これはまったく完璧に典型的なフナナーだ。2ビートのアップ・テンポで陽気で快活で、疾走するように強くダンサブル。これも正真正銘ダンス・ミュージックだ。カリビアン・ミュージック、ドミニカのメレンゲによく似ているよね。伴奏サウンドはアコーディオンと打楽器(これ、ドラム・セットも使ってあるよね)がメインな「深い谷」を演奏するのは、人気バンド、グルーポ・フェーロ・ガイタ。

同じくフナナーである10曲目「私は牛の売人」は、アコーディオン(ボタン式で、これがガイタというらしい)と、フェローだけの伴奏。フェローは鉄製のヘラをこすって音を出しているもので、このフェロー(aka フェリーニョ)のサウンドは、正直言って僕は苦手だ。みなさんご記憶でしょう、小学校の教室の黒板を指の爪かなんかでこすって不快な音を出していたヤな男子生徒たちがいたことを。あの音がする、「私は牛の売人」では。

フナナーもアフロ・ルーツ・ミュージック(でもないような部分があって、諸説あり、よく分っていないらしい)だろうが、フナナーよりもずっとアフリカ要素が強いバトゥーケが、アルバム『ア・ヴィアージム・ドス・ソンス』(カーボ・ヴェルデ篇)の11曲目と14曲目。打楽器と(足踏みなど)激しく踊る音、それにヴォーカル・コーラスのコール・アンド・レスポンスだけ。それらの三位一体で、リズムは6/8拍子という、まごうかたなき西アフリカ音楽由来だ。

そんなバトゥーケは、おそらくカーボ・ヴェルデでもなにかの儀式の際などで演奏され歌われて、歌いながら踊っている(いた?)んだろう。アルバム11曲目「ポルトガル語話者のコミュニティ」で聴けるヴォーカルは女声だけで、実際女性だけで構成されたグループらしい。伴奏サウンド(と呼んでもいいのか?)も、こりゃたぶんいわゆるふつうの楽器としてのパーカッションもなく、足踏みの音しか入っていないように思う。

14曲目「ボラーマ」も、やはり6/8拍子のバトゥーケだが、こっちはギターかなにか、いや、もっと小型の弦楽器、例えばブラジルでいえばカヴァキーニョみたいなサウンドの弦楽器も伴奏に混じっている。やはりいわゆる通常の意味での楽器のパーカッションはあまりなく、足踏みと手拍子の音が中心になっている。メインで歌うのは男声で、そのコールに対しレスポンスするコーラスは混声かもしれない。激しく踊っている様子が、はっきりと音源からも聴きとれる。

なお、アフロ・ルーツとかブラジリアン・ミュージックではなく、ヨーロッパ音楽から来たものだろうけれど、トラジソン盤のジャケット裏記載ではヴァルサ(ワルツ)となっている八曲目「三角形の状況」。これはクラシック・ギター独奏で、これ、僕、大好きだぁ。ひょっとしたらアルバム『ア・ヴィアージム・ドス・ソンス』(カーボ・ヴェルデ篇)全曲のなかでいちばん好きなのがこのギター独奏かもなあ。だってこれは、ブラジル人ギタリスト、例えばトッキーニョあたりがギター独奏をやるときに瓜二つだもんね。サウダージが横溢している。

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