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2017/11/09

栄誉殿堂の倉庫で眠っていた詠み人知らずの宝たち(1)

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(1)としているのは、この英 KENT 盤のシリーズは第三集まであるからだ。すなわち『ホール・オヴ・フェイム~レア&アンイシュード・ジェムズ・フロム・ザ・フェイム・ヴォールツ』のこと。アルバム題どおり、全24曲、フェイムの倉庫に眠ったままになっていた未発表曲集で、たった三曲だけ混じっている既発のものも初 CD 化だということらしい。

そんなフェイムのサザン・ソウル最深部(の話を僕なんかがしてもいいのだろうか?)、ソウル音痴の僕が知っている名前なんか…、と思うと少しだけいるよ。ジミー・ヒューズ、クラレンス・カーター、オーティス・クレイ、ジョージ・ジャクスン、この四名は僕も少しだけ知っているし聴いている。が、ほかはマジで全員知りません(^_^;)。曲はオーティス・クレイの歌う16曲目「アイム・クォリファイド」、クラレンス・カーターの歌う13曲目「テル・ダディ」(エタ・ジェイムズ「テル・ママ」の男性版)、ラストに収録の「フォー・ユー」を知っていただけ。でもブックレットを眺めたら、ダン・ペンの書いた曲とかもけっこうあるなあ。

あっ、ダン・ペンといえば、彼の『ザ・フェイム・レコーディングズ』という一枚、これも英 Ace 盤だが、これに収録されている曲が『ホール・オヴ・フェイム~レア&アンイシュード・ジェムズ・フロム・ザ・フェイム・ヴォールツ』にもあったりする。例えば後者九曲目の「キープ・オン・トーキング」。これは前者の一曲目だ。う〜ん、おかしい、知っていたはずなのに。後者で歌うのはプリンス・フィリップス…、ってやっぱり知らん(^_^;)。

ジミー・ヒューズ、クラレンス・カーター、オーティス・クレイ、ジョージ・ジャクスンの四名は、ソウル・ミュージックに超疎い僕ですら馴染のある名前なので、今日はまったく触れる必要がないはず。しかしかといってほかの歌手や曲について書けるのか?と言われたら書けるだけのものを僕は持っていないので、さあ困ったなあ。まあでもこの『ホール・オヴ・フェイム~レア&アンイシュード・ジェムズ・フロム・ザ・フェイム・ヴォールツ』、聴いて楽しいことは間違いないよ。

フェイムで録音したソウル歌手のなかでの有名人というと、例えばやっぱりクラレンス・カーターや、それからスペンサー・ウィギンズやキャンディ・ステイトンあたりかなあ。すなわち基準はソウル素人の僕でも名前を知っていて聴き馴染があるかどうかってことなんだけど、これら三人の歌には親しんでいる。オーティス・クレイにフェイム録音があったことは実はまったく知らず、日本公演盤でよく知っている「アイム・クォリファイド」がそうだったなんて…(だれも説明してくれないしな)。でもクレイはやっぱりハイの人だよね。

『ホール・オヴ・フェイム~レア&アンイシュード・ジェムズ・フロム・ザ・フェイム・ヴォールツ』に収録されているなかに女声歌手は、3曲目のジューン・コンクェスト、6曲目のジャッキー、17曲目のメイジャリー・イングラム、23曲目のトラヴィス・ワマックってのを除き、いない。ほかは全員男性歌手。みんな、どうして”アナザー”・キャンディ・ステイトンや”アナザー”・クラレンス・カーターみたいな存在になれなかったのか?そもそも発売すらされなかったのはどうしてなのか?かなり不可解に思う。

なかにはひどい扱いのものがあるんだぜ。アルバム18曲目「ラヴ・チェインジズ・ア・マン」なんか、歌手名クレジットが “unknown male” だもんね。曲もだれが書いたものか記載がないからなんのことやら分らないが、なかなか悪くない。三連の典型的サザン・ソウル・バラードで、エレキ・ギターとベースとドラムスとオルガンだけの伴奏で、こう歌う 〜 うまく説明できないけど君のことが好きになってすべてが変わっちゃった、間違っているかもしれないが、いまはこれでいいんだと分っている、どこにも行かないでくれ 〜 という男の心情を、わりと淡々とアッサリ目のフィーリングで歌っている。

その不明男性歌手は、声の出しかたやフレイジングのはしばしから判断して、どうも白人なんじゃないかという気がするんだけど、なんでもフェイムのテープ倉庫には、こんなだれだか特定不可能になってしまっている録音が山のように眠っているんだそうだ。実際、『ホール・オヴ・フェイム~レア&アンイシュード・ジェムズ・フロム・ザ・フェイム・ヴォールツ』の第二集と第三集にも少し入っている(気がしているが、いま確かめていない)。

日本の歌の世界で言えば、詠み人知らずってやつかなあ。名前が残らなくても(和)歌だけ遺っているっていうやつ。作品のできばえさえ素晴らしければ、作者や演者はアノニマスでも作品は生きのびるっていう、そんな世界がアラバマのマスル・ショールズにもあったんだよね。もちろんサザン・ソウルだけでなく、そもそも世界各地の伝承曲、トラッド、フォークなんかは、そっちのほうが当たり前だ。

そう考えると、まあたんに僕がソウルの世界を知らないだけだから馴染の名前が少ないだけなんだけど、それでも十分オーケーなんじゃないか、音楽を聴いて楽しむのに、あんまり名前とか関係ないよな、これはだれだ?データはどこだ?ってふだん僕も(みんなも)うるさすぎるんじゃないの?っていう気分になってくる。やっぱりマニアックなコレクター向けのものが多いんだそうな『ホール・オヴ・フェイム~レア&アンイシュード・ジェムズ・フロム・ザ・フェイム・ヴォールツ』だけど、こうやって CD で手軽に、マニアではない僕でも楽しめるほうがいいじゃん。

アルバム『ホール・オヴ・フェイム~レア&アンイシュード・ジェムズ・フロム・ザ・フェイム・ヴォールツ』のラスト24曲目には、これはオマケというような位置付けなのか、ジョージ・ジャクスンが「フォー・ユー」を、たぶん本人のピアノ弾き語りで歌うのが収録されている。

この「フォー・ユー」は、こっちは僕もよく知っているつもりの、やはりフェイム時代のキャンディ・ステイトンが歌ったラヴ・バラードだ。これ、いい曲なんだよね。この曲は書いたのもジョージ・ジャクスンだが、忘れていた。キャンディのフェイム録音集のクレジットを見ていなかった証拠だなあ。いやあ、マジでいい曲です。ってことはピアノ弾き語りのこのジョージ・ジャクスンのヴァージョンは、録音状態もイマイチだし、キャンディかだれかのためのガイドとして、ひょっとして自宅かどこかで録音したデモみたいなものなんだろうか?

「フォー・ユー」。もちろんキャンディが歌ったものがチャーミングで好きだけど、男性ジョージ・ジャクスンがピアノだけ弾きながら淡々と歌うと、やっぱり同性だからなのか、女性に向けて歌いかけている心情に、そのままストレートに、心の底から共感して、泣けてくる。君のためだったら、僕はなんでもするよ、君のためなら一からやりなおせるんだ、僕のすべては君のため、君こそいまの僕のぜんぶなんだ、だからシンプルに僕の名前を呼んで、という歌。ちょっと聴いてみて。

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