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2017/11/26

アジアの洗練(2) 〜これがひばりの魅力だ

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(自分が好きで人生をかけて楽しんでいる世界には、入ってくるひとがひとりでも増えたら嬉しいと、僕だったら感じます*^_^*。)


美空ひばりには、当然のことだろうがオフィシャル・ウェブ・サイトがある。そこがこの日本の歌手について最も詳しく調べられる場所だ。なかでもディスコグラフィが素晴らしすぎる。そのディスコグラフィさえ見れば、あとは実際の音源があれば、それだけでほかにもうなにもいらないと断言できるほど、充実しているものだ。
これをご覧いただければ、充実しすぎているという僕の言葉でもぜんぜん物足りないほどの出来栄えだと納得いただけるはず。検索方法も各種あって簡便にして必要十分。当該曲のところをクリックすれば、オリジナルのレコード・ジャケットと、データ面でのなにからなにまですべてが出てきて、しかも試聴だってできちゃうもんね。試聴すれば歌は素晴らしいので、結局アルバムを買わざるをえないってことになるけどねっ。

しかしながら、僕が「歌は素晴らしい」と言えるひばりは10代のころに限る。ひばりの10代、というか20歳までというと1957年5月までということになる。レコードでいえばデビュー・シングルの「河童ブギウギ」(1949年6月23日録音、8月10日発売)から、「むすめ旅唄」(1957年2月28日録音、5月15日発売)までだ。

がしかし上掲公式ディスコグラフィで見るその間のひばりのぜんぶの歌を網羅的に収録したものは、もはや入手不可能な全集しかなかったはず。全集ということは、僕が必要としない時期のひばり(のほうがずっと長く多い)だってあるわけで、望みはないが再発されたとしても、僕が買うかどうか気持が微妙だ。僕が必要とするのは「河童ブギウギ」から「むすめ旅唄」までの223曲だけ。

だから日本コロムビアさんには、その223曲をコンプリート収録したボックスを発売してほしいのだが、ある時期以後の日本におけるひばりの聴かれかた、評価のされかたをかんがみるに、そんなものがプロデュースされる理由などまったく見当たらない。でも諦めることはない。やはり日本コロムビアが2007年にリリースしてくれた CD 二枚組『ミソラヒバリ アーリーソング コレクション 1949~1957』がある。これで10代のころの、本当に素晴らしかったころの、ひばりの代表作は揃う。

この『ミソラヒバリ アーリーソング コレクション 1949~1957』は本当に素晴らしいんだよね。それがなんといまや、いちばん上でリンクを貼ったように Spotify でも聴けるんですよ。前から言うように Spotify での配信は権利関係をクリアしていて本人や権利者にお金がちゃんと行く仕組みの正規販売ですがゆえ〜。僕みたいに手許に CD で持っておきたいというんじゃない人で、戸嶋くん、そんなに褒めるのか、じゃあちょっと試聴してみるね、とおっしゃる向きには Spotify でぜひ聴いてほしい。

聴いたら最後、CD がほしくなると思うけどね。ほしくならなくても、このアルバム『ミソラヒバリ アーリーソング コレクション 1949~1957』が知られず、聴かれずに、放置されたまま年月が経過するようなら、ネット配信でも、しかも正規流通品として Spotify で全曲1秒残らず聴けたほうが、百万倍マシだろう。

さて、いままでそんな10代のあたりのひばりを熱心に聴いていらっしゃるかたがたには説明不要なのだが、まだあまり知らないという向きで、アンタがそんなに素晴らしかったと賞賛するひばりを、じゃあちょっと聴いてみようというならば、ぜひ次の14曲だけは聴き逃さないでほしい。ひばりの真骨頂はここにある。

1 河童ブギウギ
2 悲しき口笛
5 東京キッド
7 ひばりの花売娘
8 銀ブラ娘
10 リンゴ追分
12 お祭りマンボ
19 心ブラお嬢さん
24 港町十三番地
25 上海
26 エル・チョクロ
27 アゲイン
39 薔薇色の人生
40 A列車で行こう

CD だと「港町十三番地」が一枚目のラストで、「上海」から二枚目になる。この分割はたんに曲数によるというだけのことではない。CD1はひばり用に用意されたオリジナル楽曲篇。CD2はアメリカのジャズなど洋楽ソングのカヴァーが中心のもので、コロムビアが当時、<JL シリーズ>と銘打っていた自社傘下の別レーベルでのレコードだった。JLシリーズにはひばりだけでなく、山口淑子とか、あるいは(僕はイマイチ好きじゃない)越路吹雪とかのレコードも発売していた、要するに洋楽カヴァー専門レーベルだった。ひばりのばあい、ご覧になれば分るように JL シリーズでも七曲だけオリジナル曲があるが、それらも洋楽ふうにつくられたものだ。

オリジナル楽曲とカヴァー曲と、ひばりの歌には微塵も差異がない。どちらも同じように素晴らしい。しかも音楽のグルーヴのタイプが同じで、同じような歌として扱って、もののみごとに歌いこなしているじゃないか。お疑いになるかた、ネット配信なんか…、とおっしゃらず、この記事最上部リンクの Spotify にあるアルバムで聴いてほしい。間違いないんだ。

レコード・デビュー前の劇場などで歌っていたころのひばりは、服部良一が笠置シヅ子のために書いたブギ・ナンバーを得意レパートリーとして歌っていた。当時の服部は、洋楽、特にアメリカ産のスウィング・ジャズ〜ブギ・ウギあたりをかなり勉強していて、強い影響を受け、アメリカのそのへんのブギ・ウギ調スウィング・ジャズのフィーリングを日本化したオリジナル曲を書いていた。笠置がどうだったかは言えないが、ひばりはそんな曲をいくつか10代前半にして歌いこなしていたんだよね。

だからレコード・デビューが、服部良一の曲ではないが「河童ブギウギ」になったのは当然の成り行きだった。その後も、スウィング・ジャズっぽい和製ポップスを、ノリよく軽快に歌っていたことは、お聴きいただければ分るはず。これがあの「柔」とか「悲しい酒」とか、あるいはずっと後年の「愛燦燦」「川の流れのように」と同一人物の歌なのか?と驚くかもしれない。

服部良一の曲も、例外的に一つだけある。それが上記セレクションにも入れた8「銀ブラ娘」。ブギ・ウギふうジャズにして、ややラテンっぽいリズム・フィールもあるじゃないか。言うまでもなく銀座をブラブラする内容で、楽しく陽気に「ブギウギ」などとも歌いながら、リズム感も極上の良さで跳ねている。こういう歌手ですよ、ひばりはね。

セレクション12の「お祭りマンボ」は、服部良一の弟子だった原六朗の作詞作曲編曲(どうしてだか、公式ディスコグラフィでは、原六郎の表記)。1952年7月19日録音で、同8月15日にコロムビア A-1490の A 面曲としてレコード発売されたこの「お祭りマンボ」こそ、オリジナル楽曲ではひばりの生涯最高傑作に違いないと僕は断言する。百歩譲って、そう信じている。

「お祭りマンボ」。イントロ部で楽団がパッとダークで不穏な感じに転調するあたりのスリルには、いまだになんど聴いても背筋がゾクゾクする快感がある。リズムも、マンボかどうかは微妙だが、ラテン調であるのは間違いない。しかもただのラテン調というだけでなく、曲題でも分るように、日本の伝統的なお祭り囃子のそれと合体し、ひばりが歌うメロディがヨナ抜きだっていう面白さ。言葉の数が多く細かく上下するフレイジングを持つ難しい旋律を、余裕綽々でスイスイ難なく泳ぎ切っているよね。

しかも「お祭りマンボ」は、終盤でお祭りが終わるんだよね。リズムも止まり、哀しく寂しげな調子に変化する。歌詞内容もそうだ。そのパートではひばりも、にぎやかで楽しかったお祭りが終わってしまったのを名残惜しく振り返っているような歌いかた。日本中がバブル景気のころはバカ騒ぎして、それがはじけてしぼんだまましょぼくれている21世紀の姿と、まるで1952年にそんな僕たちのことを予見したかのような一曲じゃないだろうか。「いくら泣いてもかえらない〜、いくら泣いてもあとの祭りよ〜」。

ひばりの「お祭りマンボ」では、しかし最終盤でもう一回お祭り囃子が入ってアップ・ビートになる。本当に一瞬だけどね。これって、どういうことなんだろう?

あぁ〜、絶品すぎる「上海」「アゲイン」など、アメリカ産ジャズ・ソングのカヴァーについては書く余裕がなくなってしまった。無念だが、僕はいままでぜんぶ実行している「今度」の機会に譲ることにする。とにかく聴いてくれっ!Spotify でとりあえずちょっと試し聴きするだけなら、簡単でお金もかからないからさ。ブログを読むネット環境があれば、みんなできることだ。ねっ、お願い!

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コメント

あぁ、いいね。
A列車で行こうが好きだね。何年か前に矢野沙織が美空ひばりの歌の部分に合わせ演奏した試みも良かった。人のふんどしで相撲をとるような言われ方もあるかもしれないが、彼女も美空ひばりにやられたんだろうね。笑
貼り付けておくよ。
https://youtu.be/DFgFy4T2Rms

ね〜〜っ!いいよね。「A列車」だとスキャットがすごいよなあ。アド・リブだったとすれば、こりゃとんでもないことだぜ。

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