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2017/11/04

余裕と貫禄と五色の声をあやつる岩佐美咲の新作 DVD

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いやあ、こりゃすごい。ヴォーカリスト岩佐美咲の実力のほどは僕なりに少しは理解はしているつもりだったのだが、ここまで来ていたとはなあ。岩佐には大変失礼ながら、僕は驚いてしまった。がしかし、熱心な岩佐ファンのわいるどさんのおっしゃるところによれば、コンディション万全のときの岩佐の歌は神がかったものになるんだそうで、ってことは三枚目の新作 DVD『3rd.コンサート〜笑顔・心・感謝で繋ぐ…至福の2日間〜』でのこんな凄みと深みと奥行きのある歌唱も、いまの岩佐ならそんな稀なパフォーマンスじゃないってことか?調子さえ良ければ?こわいぞ、これは。

2日間とタイトルにあるのは、今2017年7月22日と23日にわたり、2デイズで岩佐美咲の三回のコンサートが開催されていて、この新作 DVD 本編にはその三回目、すなわち23日の夜公演が収録されているのだってこと。DVD の末尾に特典として22日公演と23日の昼公演がダイジェストで収録されている。がそれらはやはりダイジェストだけあってじっくりと歌を聴かせ込むものじゃないように思う(それでも楽しいし、それを観ないと本編が理解しにくい部分もあるにはある)。だからこれ以下は本編である23日夜公演分だけについて書く。

岩佐美咲の DVD『3rd.コンサート〜笑顔・心・感謝で繋ぐ…至福の2日間〜』で特に傑出していると僕が判断するのが、幕開けの「鞆の浦慕情」から、お酒コーナーの三曲に行く前までの計七曲、アクースティク・ギター弾き語りの三曲、撮影タイムが終わっての一曲目「ノラ」、その後のアンコール三曲、と計13曲。ほかの曲での歌唱も素晴らしいんだけど、書いた13曲で岩佐が聴かせるヴォーカルの伸びやかさと張り、艶やかさ、その反面の軽やかさや爽やかさ 〜 それらすべてがあいまって歌にかなりの深みを獲得しているところは、いままでの岩佐の全音源とも比較できないほどのものすごさだ。大御所でもほかの日本人歌手は岩佐の域にないわけだから、ってことはこのサード・コンサート時点での岩佐は、日本歌謡界でいったいどういう立ち位置にあるということになるのだろう?

DVD『3rd.コンサート〜笑顔・心・感謝で繋ぐ…至福の2日間〜』幕開け。プレリュード的なピアノ・サウンドに続き、「鞆の浦慕情」のイントロが流れ、するとそこに薄紫色の着物を着た岩佐美咲がスッと立っている。まず、その立ち姿が素晴らしい。歌いはじめる前に軽く笑みを浮かべていて、この落ち着きはらった余裕はなんなんだ?ベテランの貫禄みたいなものすら感じる。なんたって僕はファースト DVD だって今年二月なかごろに初めて観たんだった(発売は昨年六月だったようだ)。緊張のあまりちょっと半泣き状態になっていたファースト・コンサート幕開けでのあの岩佐の姿からしたら、歌手、芸能者としての加速度的な急上昇カーブを描く成長を感じざるをえない。

僕のこの、岩佐美咲に深みと余裕と貫禄が出て来ているという印象は、「鞆の浦慕情」の歌が出るとさらにもっとグッと強くなる。声の伸びが素晴らしい。ワン・フレーズごとに、歌い終わりで同一音程を維持したままスーッと、それをノン・ヴィブラートで伸ばし、そのままナチュラルに弱くなっていき消え入るのだが、そのあいだの声の自然な強さ、張り、伸び、ある種の透き通った美しさ、弱めかたには、もはやため息しか出ない。僕なんかが詳しく分析するなど、おこがましいにもほどがある。どうなってんの、わさみん、これは?

「鞆の浦慕情」でも、二曲目の「哀しみ本線日本海」でも、あるいはまたその後の、例えば「南国土佐を後にして」でも「夢芝居」でも同じだが、歌い廻しの緩急自在さ、ドスを効かせて声を張ったり、そっと優しく軽く心にタッチするかのように置いたり、声のカラーをそのときそのときの表現の変化にあわせて何色も自在に使い分ける闊達な技巧などもフルに発揮されている。22歳の女性の歌に、55歳のオッサンである僕の心は完璧にあやつられてしまっている。ヤバいよヤバイよ。

お酒テーマの三曲では、カヴァー・ソングの「おもいで酒」「ふたり酒」を歌ったあと、岩佐美咲のオリジナル楽曲である「初酒」をやる。似たような曲が並び、岩佐のヴォーカル表現も同じだから、するとこの歌手のばあい、曲じたいの素晴らしさを際立たせることのできる表現法をとる人だから、結局「初酒」がいちばんいい曲だと思えてくるんだよね。これは最初、僕にはやや意外だったのだが、いままでもう10回以上はこの新作 DVD を聴いているから、間違いないと思う。

その後のアクースティック・ギター弾き語りコーナー本編に入る前に、岩佐美咲のギター関連ヴィデオが流されて(そのあいだに岩佐は衣装替えタイム)、そこでは例のあの今年五月の、全編弾き語りソロ・コンサート<岩佐美咲 春LOVEライブ>の模様がダイジェストで披露される。それに行こうとして行けなかった僕には嬉しいものだ。そうか、こういう様子だったんだ。この五月のソロ・コンサートのときのわさみんの髪型、いいなあ。メイクもいい。カワイイしセクシーさも出ていて、それでもってこんな具合にカッコよくギターで弾き語るなんて、オジサン、もうダメです。

ダイジェスト映像が終わると岩佐美咲が白い洋装で登場(結局、アンコール前のコンサート本編の最後までこれでやっている)し、アクースティック・ギター弾き語りで三曲「丸の内サディスティック」(椎名林檎)、「Silly」(家入レオ)、「糸」(中島みゆき)をやる。う〜ん、ギターも上手くなっているし、イイネこりゃ。「糸」を岩佐がやると相当素晴らしいものになるのだとは、五月分の音源が CD 化されていて分っているから、それから約二ヶ月経過したヴァージョンが、より一層深化していると分っても驚かない。「丸の内サディスティック」でのギターの上手さ(難しいもんね)と「Silly」でのサラリとしたヴォーカル表現も文句なしだ。ピンクのカポタストの位置は三曲とも異なっている。

ギター弾き語りコーナーが終わって、岩佐美咲が客席を廻り観客が写真撮影できるラウンド・タイム。今回の新作 DVD では、いままでの二作と違ってお客さんがけっこう分りやすくたくさん写っていて、だからいままで知らなかったいろんなことが分ったり、こうであるはずだという確認もできて、いまだ岩佐のライヴを生体験できていない僕には大収穫だった。客席を廻りながら岩佐が歌うのは先輩女性ポップ歌手の歌。山口百恵、中森明菜(二曲)、荻野目洋子、相川七瀬。客席をどんどん歩き、踊り、写メに入る際はポーズをとり、笑顔をふりまきしゃべりかけながら、しかし岩佐の歌には手抜きやほころびがまったく聴かれない。

僕にとっては、その後ステージに戻ってきて写真撮影タイムが終わったあとの一曲目「ノラ」(門倉有希1998年のヒット)こそがこの新作 DVD の白眉、クライマックスだった。哀しくて切ない大人の女性の歌なんだよね。「ノラ」を歌うときの岩佐美咲の仕草、表情、声の翳りや深み、深刻さ、などを淡々とした無表情さにくるむあたり、かつて絶頂期の山口百恵が出していた雰囲気にとてもよく似ている。でも百恵はあの頃、いま22歳の岩佐より若かったんだよね。21で引退したんだもんなあ。そう考えると、やっぱり百恵も尋常じゃなかった。

いまの岩佐美咲は、特に「ノラ」で哀しく暗い恋情を歌うあいだ、しっかりと張ったよく通る艶のある発声だけど、それでサラリと歌っているかのようなフィーリング。だからこそかえってヴォーカル表現に深みと奥行きを感じさせていて、シリアスに落ち込むような<愛は一人芝居>の歌詞をこれ以上なくしっかりと伝えてくれる。そうか、こんなにもすごい曲だったのか…。岩佐がこう歌ってくれなかったら、門倉有希「ノラ」の魅力に気づかずじまいだったかもしれない。

そんな「ノラ」で、僕は背筋が凍るようなおそろしい思いと震えるような深い感動をもらってしまったので、その後のエンディング〜アンコール部でもやはり素晴らしい岩佐美咲の歌が、まるでかすんでしまっているかのように聴こえてしまうほど。その部分が物足りないなんていう意味じゃない。正反対なんだけれど、「ノラ」がすごすぎるんだよね。五月の「糸」が岩佐史上最高屈指の一曲だとみんなが認めているけれど、ひょっとして、このよみうり大手町ホール、2017/7/23夜の「ノラ」は、新宿明治安田生命ホール、2017/5/7の「糸」を超えたかも?、と僕は思う。

快活陽気な曲でも素晴らしい表現を聴かせる岩佐美咲だけど、「糸」や「ノラ」といったしっとり系ポップ・ソングと相性がいいのかもしれないよね。いやあ、マジでこの岩佐のサード DVD『3rd.コンサート〜笑顔・心・感謝で繋ぐ…至福の2日間〜』での「ノラ」はすごいぞ。こんな歌、なかなか聴けるもんじゃない。「糸」は CD 音源になったけれど、「ノラ」も Mac にリッピングしておきたいなあ。自作の岩佐美咲ベスト・セレクションに加えたい。

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コメント

3rdソロコンDVDの詳細な記事ありがとうございます~
いつもながら読み応えあって凄いです。

私が参戦している範囲では、1年に数回しかありませんが、神がかったわさみんは本当に凄いです。

普段歌唱イベントはショッピングモールのイベント広場で行われますから、イベントに関係ない買い物客が沢山おられるので、どんなに静かな曲でも多少ザワつくものなのですが、神がかった時、わさみんの声が届く範囲にいる人は全員聴き入っているかのように静まり返ってしまいましたしね~

あの凄さを求めて、ついつい遠征して追っかけてしまうんです・・・

来年2月4日のわさみんがそんな神がかりだったらどうしよう…、マジで僕もどんどん全国へわさみんを追いかけて、東京にでも通いつづけることになってしまうのでは…、と、いまからちょっとおそろしいです。

デビュー以来、注目しているジジイです。
”としまさん”、”わいるどさん”の記事を楽しく拝見させて頂いております。
デビュー後まもなく出演したTV番組「AKBINGO」で、平尾昌晃さんが言っておられました。「(岩佐は)自然体で歌っている,演じることができる、そういう素質を持っている」と。
まさしく”としまさん””わいるどさん”が常に指摘されていることと同じことを言っていました。
3rdソロコンDVDも毎日のように観ています。「ノラ」は勿論ですが、「神田川」が特に印象に残った唄でした。最後の、「怖かった」の歌唱が凄い。南こうせつさんも、この歌の最後の「ただ貴方のやさしさが怖かった」は印象深いと言っておられことを思い出しました。女を棄てていく男「南こうせつ」の「怖かった」より、棄てられる女「岩佐美咲」の「怖かった」の方が、「怖かった」の度合いが違っていたような感じ。「神田川」のフルバージョンが、これから発売されるシングルにカップリングされることを期待しているところです。

同感です。やはり平尾昌晃は卓見の持ち主でしたねぇ。ところでサードDVDに「神田川」がありましたっけ?なかったような…。

DVDの末尾に特典映像があり、1部および2部公演のダイジェスト版があります。その1部公演の中に弾き語り「岬めぐり」「神田川」が収録されています。

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