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2017/11/02

ヴィジェイ・アイアーの新作は現代ジャズの最高傑作かも

Iyercd








さぁ困った。トニー・アレンの新作のことは昨日書いたが、インド系アメリカ人、ヴィジェイ・アイアーの新作『ファー・フロム・オーヴァー』。これも2017年後半リリースのジャズ・アルバムとしては突出した大傑作じゃないか。どうしよう…?こりゃどっちかを年末のベスト・テンに入れないといけないんだが、どっちも入れたい。しかも今年リリースのジャズ系ではメディ・ジェルヴィル『トロピカル・レイン』もトニー・シャスールのライヴ・アルバムも素晴らしかった。しかしジャズではない音楽作品にも今2017年は傑作が多かったから、ベスト・テンのなかにジャズばかり二枚も三枚もは入れにくいんだよね。すでに現状、僕のテキスト・ファイルには、新作篇で絶対に欠かせないというものだけだって12作品ある。 どうしよう…。

ヴィジェイ・アイアーの『ファー・フロム・オーヴァー』は、いわゆる現代ジャズというなかに分類されるであろうもののなかでは、2017年になってとうとう出現した最高傑作なのかもしれないぞ。いま僕は興奮しているので、Mac のキーボードを叩く指も少し震えて、タイプ・ミスが多い。ちょっと冷静な気分ではいられない。え〜、そんなにか?ウソだろ〜?と思う方、このアルバムはたったの一曲も Spotify にないのだが(どうして入れない?)、曲によっては YouTube で見つかるので、ぜひちょっと試聴してほしい。

まずヴィジェイがこのアルバムでフィーチャーしている、現代ジャズのオール・スター・バンドともいうべき新しいセクステットを紹介しているものがあったので、その模様から聞いてほしい。
アルバムのティーザーがこれ。BGM には三曲目の「ノープ」を使ってある。
「ノープ」は一曲丸ごと YouTube にあった。
お聴きになってお分りのように、このトラックは(ファンク〜)ヒップ・ホップ・ジャズだ。特にドラマーのタイション・ソーリーがそれをよく表現している。ピアニストやホーン奏者たちのソロ内容もいいのだが、僕はそれ以上にこのリズムを聴くなあ。カッコイイ〜。しかもこれ、1960年代末あたりからマイルズ・デイヴィスがやっていたような音楽に起源を見出せるじゃないか。

1960年代末〜70年代あたりのマイルズ・ミュージックはいまでもジャズ界の各所に影響を及ぼしている、というかある意味、影を落としているのだが、ヴィジェイ・アイアーの『ファー・フロム・オーヴァー』でもいろんなところにそれを聴きとることができるんだよね。まずなんたって一曲目の「ポールズ」がそうだ。これは68年ごろのマイルズ・クインテットまでさかのぼれる内容。最初、いかにも ECM だな、こりゃツマランと思っていると、三管アンサンブルとリズム隊が出てきて、サァ来た来た〜〜っ!って、その瞬間に背筋がゾクゾクしたんだよね。

「ポールズ」では三管とリズムを書いているヴィジェイの作曲能力がまず素晴らしい。リズム・レイヤーは複雑で、シンプルに身をまかせることができないが、これ、インド古典音楽由来の多層リズムだよね。間違いない。やっぱりドラマーのタイションが大活躍。ピアノとホーン三名のソロ内容じたいは、これまた僕はさほど重視しない。僕にとって肝心なのはこのリズムと三管アンサンブルだ。途中からヴィジェイがフェンダー・ローズを弾きだしてからのサウンド・テクスチャーは見事だ。このワン・トラックは YouTube にないようだ。残念。

アルバム2トラック目「ファー・フロム・オーヴァー」、5トラック目「ダウン・トゥ・ザ・ワイアー」、9トラック目「グッド・オン・ザ・グラウンド」では、激情というか燃えさかる炎のようなリズムと三管アレンジのエクスタシーを聴いてほしい。ヴィジェイの特異なピアノ・スタイルも、特に「ダウン・トゥ・ザ・ワイアー」では非常によく分る。やはりタイションのドラミングが素晴らしいが、ホーン奏者たちのソロも、これらでは聴きもの。その背後でほかの二管がアンサンブルを入れたりするヴィジェイのアレンジ手さばきも見事だ。しかもなんだこのリズムは〜っ!「ファー・フロム・オーヴァー」しか YouTube になかった。「ダウン・トゥ・ザ・ワイアー」なんかマジで凄いんだけどな〜。
ところで YouTube にも Spotify にもないので残念極まりないが、その9トラック目「グッド・オン・ザ・グラウンド」は、西アフリカ音楽由来のドラミングに南インド古典音楽のリズム・サイクルを合体させたような一曲で、ある意味この曲こそヴィジェイの新作『ファー・フロム・オーヴァー』でいちばん面白い聴きもの、白眉なんだけど、う〜ん、いちばんのものは CD 買わないと聴かせないってことなのか?タイションのドラムス・ソロもあって、そこなんかも本当に素晴らしいものなんだけどなあ。アンサンブル部、ホーンのソロ部、ピアノ・ソロ部も、インド系であるヴィジェイのリズム・アプローチはこうなんだと分って、これこそ聴いてほしいワン・トラックだ。CD 買ってください。

エレクトロニクスを駆使した曲もあったり、またエレジーみたいなアミリ・バラカに捧げた6トラック目とアルバム・ラスト10トラック目「スレナディ」(Threnody)とかもいい。後者ではアルト・サックスのスティーヴ・リーマンのソロが素晴らしい。ほぼ感情の激発だが、背後でほかの二管がアンサンブルを入れていて、冷静な構成もある。またヴィジェイがフェンダー・ローズに専念する八曲目「ウェイク」はスペイシーで静謐で陰な感じ(そこはいかにも ECM ジャズ)なんだけれど、抑制の効いた内に秘めたる炎がしっかり聴こえてくるしね。

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