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2018/02/05

なかなか侮れないプリンスの『ガール 6』

Girl6








昨日書いたプリンスの「シー・スポーク・トゥ・ミー」。フル・ヴァージョンはもちろん『ザ・ヴォールト:オールド・フレンズ・4・セール』(1998)で日の目の見たものだけど、その前に短縮編集されたものが公式発売されていた。96年3月リリースのサウンドトラック盤『ガール 6』。もとの映画は、なんでもテレフォン・セックスを題材にしたコメディだったらしい。プリンスが出演しているわけじゃないので、僕は観たことがない。

しかしサントラ盤 CD『ガール 6』はなかなかおもしろいんだよね。一個の音楽作品としてね。もとの映画が映画だからなのか、あるいはそれとは関係なくいつも下ネタばかりのプリンスだからなのか、そんな音楽家だからエロ・コメディのサントラを任せられたのか、よくわからないが、アルバム『ガール 6』収録の全13曲もセックス関連ばかりだ。

しかしコメディ映画のためのものだったからかなあ、いつものプリンスのような淫靡なネチッこさ、粘着質ないやらしさは薄く、カラッと乾いて笑っているようなフィーリングの曲が多く、たしかにジャケットに例の “Parental Advisory Explicit Lyrics” との表示があるけれど、ちょっと聴いた分にはそんなにスケベな感じじゃないね(と思うのは僕が英語話者じゃないからだろう)。プリンスのばあい、もっともっとひどいのがいっぱいあるから〜。

『ガール 6』をどう聴けばいいかというと、一種のベスト盤としてなかなかいいんじゃないかと思うんだよね。純粋に映画のための曲は、アルバム・ラストの「ガール 6」(ニュー・パワー・ジェネレイション名義)だけで、それ以外はほとんど既発曲の再録だ。録音済みの未発曲だったものは、一曲目の「シー・スポーク・トゥ・ミー」だけだったんじゃないかな。

といっても僕がアルバム『ガール 6』を買ったのは、プリンスが亡くなったあとのことで、この人の音楽はぜんぶ買っておこうと思って買ったんであって、だから聴いたことがぜんぜんないという曲は、「ガール 6」を除きまったくなかった…、というとウソになる。プリンス名義の曲はぜんぶ知っていたが、ニュー・パワー・ジェネレイション名義、ザ・ファミリー名義、ヴァニティ名義のものは初耳だった。

だから気合の入ったプリンス狂だと、それらもぜんぶ知っていた可能性が高いよね。そんなはじめて聴いた曲のなかで、アルバム『ガール 6』でいちばんグッと来る、いまでも聴いたらこりゃいい!ってなるのが、3曲目の「カウント・ザ・デイズ」だ。このサウダージ(哀切感)が素晴らしい。
なんなんだろう?この切なさ爆発しているみたいなアクースティック・バラードは?アクースティックではなくエレキ・ギターが使ってあるが、質感がアクースティックだよなあ。このオフィシャル・ヴィデオを観ていると、この曲はひょっとして社会派ソングなのか?と思ったりするけれど、CD で曲を聴くぶんにはそれはあまり感じない。歌詞ではなくこのサウンド、特にギター・カッティングのフィーリングがいいなあって思うんだ。

CD『ガール 6』をなんど聴いても、ニュー・パワー・ジェネレイション名義のこの3曲目「カウント・ザ・デイズ」が素晴らしく聴こえてしかたがない。やはり同バンド名義の曲「ガール 6」は、いかにもセックス・コメディ映画用だというそれらしい内容だけど、この曲のなかにはプリンスの既発音源がサンプリングされていくつも混じっている。例のカミーユ声もあるし、その他たくさん挿入されているよね。いちおう新曲だっただろうけれど、プリンスとしては、まあワーナー末期だし、しかも音楽家名を例の記号にしていた(ラヴ・シンボル)時期なのに “プリンス” 名を使わざるをえなかったものだし、コラージュしてイッチョ上がりみたいな創りかただったかもしれないなあ。

エロさを無視すると、曲「ガール 6」には軽いラテン・ファンクなノリがあって、そこはなかなかいい。この1990年代末期以後、プリンスにラテン・テイストなジャズ・ファンクみたいなものが増えていったような気がするんだけど、どうだろう?そんな路線は21世紀になってグッと色濃く煮詰められて、たとえば2006年の『3121』みたいな作品に結実していると思うんだけどね。

これまた『ガール 6』で初体験だった5曲目、ザ・ファミリーの「ザ・スクリーム・オヴ・パッション」と、6曲目、ヴァニティの「ナスティ・ガール」。どっちもプリンス庇護下の人たちだ。といってもヴァニティという女性歌手のことはこのサントラ盤ではじめて意識した(はずだが、調べたら前からいろいろと)。曲「ナスティ・ガール」はそのまんまな内容で下ネタ全開だけど、サウンドがいかにも殿下らしい。出だしでエレキ・ギターがキュキュ〜ンと鳴ったりするその入れかた(プリンス印)や、ビートの創りかた、その上にどうヴォーカルを乗せるかなどなど、まるで『サイン・オ・ザ・タイムズ』のころの音楽とソックリ。

さて、ここまで書いてきたもの以外は、ぜんぶが既発曲の再録なんだけど、それらを、『ガール 6』以外では、一枚の CD アルバムで簡便に揃えることができないんだな。しかも2曲目「ピンク・カシミア」(シングル)、4「ガールズ&ボーイズ」(『パレード』)、8〜10「ホット・シング」「アドア」「ザ・クロス」(『サイン・オ・ザ・タイムズ』)、11「ハウ・カム・U ・ドント・コール・ミー・エニイモア」(シングルB面)など、プリンスのオール・タイム・ベストにも入りそうなすぐれた曲が並んでいる。

だから CD『ガール 6』にはベスト盤的意味合いがあるんじゃないかと上で書いたんだ。ただのスケベ映画のサントラ盤じゃないかと侮れないんだよね。あんがいいいぞ、この一枚。特に『サイン・オ・ザ・タイムズ』からの三連発である8〜10曲目の流れなんか、相当に素晴らしい。オリジナルのその二枚組アルバムでは続いているわけじゃないしね。

僕には3曲目の「カウント・ザ・デイズ」が最高に沁みるんだけど、8曲目「ホット・シング」の直球一直線なエロティク&エレクトロニック・ファンクのあとに、9曲目「アドア」のあの美メロが来るあたりもサイコーじゃないか。「アドア」はマジで美しくロマンティックさ爆発のスウィート・ソウルだ。こんなピュアなラヴ・バラードが、ファックした〜いと叫んでいる同じ口から発せられているとは思えないね(笑)。

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