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2018/02/11

プリンスのデビュー作で聴けるフォーキー・メロウ

今日こそは短く決めよう for you。

1984年『パープル・レイン』で大成功する前のプリンスの作品だと、その一つ前の82年『1999』がいちばんいいと思っていた僕だけど、78年のデビュー作『フォー・ユー』が最近どんどんよくなってきている。っていうかさぁ、この『フォー・ユー』が初期プリンスではいちばんいいんじゃないの?

という気分なんだけどね、最近。ずっと前から気になるにはなっていた。こうなってみると思い出す、東京時代に二週に一回通っていた代々木の心療内科。待合室で順番を待っているあいだ、最初のころは置いてある雑誌をパラパラめくっていたのだが、そのなかの一女性誌にプリンスの『フォー・ユー』が載っていたのだった。

ずっと初台(京王新線)に行っていたのから事情があって代々木に転院したのは1999年の夏だから、そのしばらくあとのことだろうなあ。プリンスのことはもちろんすでに大好きだったけれど、最初のころの作品をちゃんと聴いていなかった僕。代々木の心療内科の待合にあったなにかの女性誌の音楽コーナーで、どなたかプロ・ライターのかたが『フォー・ユー』がいいぞと書いていたのを読んだけれど、そのときはフ〜ンと思ってそのままだった。

20世紀の終わりか21世紀のはじめごろの話だから、僕がプリンスに求めるのはハードなファンク路線や、メロウだがネチネチなエロ路線とかだったからなあ。でもついこないだからデビュー作『フォー・ユー』が気に入ってしまって、ジックリなんども繰り返し聴くと、それらの萌芽がすでにちゃんとあるじゃないか。気づいていなかった僕がおろかだった。

といっても『フォー・ユー』だとまだまだそんなハードでゴリゴリでもなければ、エロくきわどく迫る下ネタ・ポップもさほどひどくない。僕はそれらがはっきりひどく出ている音楽のほうが好きなんだけどね、基本的には。でも嗜好がちょっと変わりつつあるのかなあ。あるいは歳とって元気がなくなりかけていて、転向し、それでアッサリ路線のほうが落ち着けるという気分になってきているだけなのか。

『フォー・ユー』にある(ちょっとだけ)ハードな路線は、CD だと五曲目の「ジャスト・アズ・ロング・アズ・ウィア・トゥゲザー」と、ラスト九曲目の「アイム・ユアーズ」の二つだけ。どっちも賑やかで、たぶんパーティなんかでかけたら盛り上がりそうなアッパーな曲だよね。前者はディスコっぽいけれど、後者はアメリカン・ハード・ロックだ。

ディスコ(ブギ)は、プリンスのばあい、その後ファンクになって、いっぽうハード・ロック路線もどんどん出てきてグイッと頭をもたげてくるようになる。だからそう考えるとおもしろいのだが、しかしアルバム『フォー・ユー』がいい、マジでいいぞと思うようになっている僕は、そういった部分に共感してのことではない。

もっとソフトで軽い、しかもアクースティックなポップス路線がマジでいい!と心から強くそう思うようになっているんだよね。一曲目の「フォー・ユー」は歌詞だけ取りだすとちょっと恥ずかしいかもしれないようなものだけど、プリンスの一人多重録音でのア・カペラ・コーラスで、しかしゴスペルとかドゥー・ワップとかっていう感じがない。むしろジャジーで、フワッとした響きで、まあでもこれはやっぱりイマイチかも。

実はエロ・ソングだった三曲目「ソフト・アンド・ウェット」も飛ばして、四曲目「クレイジー・ユー」!これが本当にいいよねぇ!アクースティック・ギターの軽いカッティングにやわらかいエレキがからみ、シンセサイザーもエフェクト的に入るけれど、基本、ギターだけの伴奏で、プリンスはファルセットでそっとささやくようにやさしく歌う。

イントロ部でさりげなくエレキ・ギターででオクターヴ奏法をやっていたりして、なにげない感じで弾いてはいるが、やっぱりプリンスらしいギター・テクニックだ。アクースティック・ギターのカッティングには軽いラテン・タッチな、っていうかボサ・ノーヴァふうなリズム感もあって、こ〜りゃイイネ、マジで。この「クレイジー・ユー」がアルバム『フォー・ユー』でいちばんいいんじゃないのかなあ。

あ、いや、待てよ、六曲目の「ベイビー」。これがまたすばらしく綺麗なバラードだ。これも最高じゃないか。ソフトで聴きやすいが、やはりここでもプリンスはファルセットで歌う。美しい弦楽の響きがあるが、当時のプリンスが生演奏の人員を使えるわけがないし、クレジットもされているし、アープ・シンセサイザー・ストリングスなんだろう。その響きが実にイイ。美しい。曲のメロも、一人多重録音のコーラスも、シンセ・ストリングスも綺麗だ。

八曲目「ソー・ブルー」。これも基本、アクースティックなラヴ・バラードだ。のちの『サイン・オ・ザ・タイムズ』などでも顔を出すジョニ・ミッチェルを意識したか、オマージュみたいなもんなのか?そこはよくわからない僕だけど、これも美しいよなあ。ここでもヴォーカルはファルセットだ。エレベも目立つ。傑作だといまでは僕も信じている「クレイジー・ユー」や「ベイビー」と違って、「ソー・ブルー」はあまり言われないのかもしれないが、素晴らしいじゃないか。

プリンスのデビュー作『フォー・ユー』。ワーナーとの契約のことや制作にまつわるいろんなことはいたるところに書いてあるので、そういうのをお読みいただきたい。僕は書いた三曲、4「クレイジー・ユー」、6「ベイビー」、8「ソー・ブルー」が本当に好き。(ちょっぴりフォーキーでもある)アクースティックでやわらかい軽いポップ・バラードがね、綺麗でね、マジでいいよ!

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