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2018/03/10

これはホンマもんのルーツ・グナーワだ 〜 マアレム・マフムード・ガニア

モロッコのマアレム(グナーワ名人)であるマフムード・ガニア(Mahmoud Gania、Guinia、Guinea、など)。僕のばあい bandcamp をブラついていての偶然の出会いだった。昨年リリースのアルバム『カラーズ・オヴ・ザ・ナイト』の存在を、ついこないだ知ったばかり。
それでこのマアレムについて調べてみると、米英大衆音楽家と共演してポップ・ミュージック寄りになった(?、聴いていませんから)作品が前からあって、それでもってそこそこ知名度はあるらしい。ビル・ラズウェル、ファラオ・サンダーズ、ペーター・ブロッツマン、ハミッド・ドレイクらとの共演作があるとの情報が出てくる。

がまあしかし『カラーズ・オヴ・ザ・ナイト』からこのマアレムを聴いちゃったから、そういう共演作に耳を傾けてみようという気にまったくならなかった僕。そりゃそうなんだよ。モロッコのグナーワ・ミュージックはこういったディープなルーツ志向の、夜の儀礼音楽として演唱されるときが最も魅力的だもんね。

『カラーズ・オヴ・ザ・ナイト』は全八曲だけど、マフムードのゲンブリ(三弦のベース様楽器)&ヴォーカル、カラケブ(金属製カスタネット)、バック・コーラス隊とたったそれだけで構成されている。いちおう六曲目「Sidi Sma Ya Boulandi」においてだけ、スーッと垂れ込める幕のようにストリングスっぽいサウンドが聴こえるが、シンセサイザーだろう。このシンセ・サウンドだけが『カラーズ・オヴ・ザ・ナイト』では例外的だ。

だけどその六曲目「Sidi Sma Ya Boulandi」。冒頭部でゲンブリが鳴りはじめ、そこにスーッとシンセサイザーが聴こえ、カラケブがカシャカシャやりはじめたら、もう完全に気持ちを持って行かれてしまう。しばらく経ってマフムードとバック・コーラスとのコール&レスポンスになりどんどん高揚していくと、聴いている僕までトリップしそう。

アルバム『カラーズ・オヴ・ザ・ナイト』全体をとおし、どの曲もグルーヴのパターンは一様だ。アルバム一枚で <一つの曲> みたいな感じ。悪く言えば変化がなく平坦だということに、米英大衆音楽の聴きかたからすればなるけれど、ディープなルーツ・グナーワではむしろ逆だ。ワン・グルーヴが延々70分間以上続くことでトランス感も持続するんだよね。だから、ポップなおもしろみはない。

ぜんぜんポップじゃなくたって、アルバム『カラーズ・オヴ・ザ・ナイト』一曲目「Sadati Houma El Bouhala」冒頭で、いきなりゲンブリ一台の野太いど迫力のサウンドが聴こえはじめた瞬間に、もうそれだけでだいたいみなさんシビレて興奮するはずだ。カラケブの音とバック・コーラスとのやりとりがはじまったらクラクラして、もう虜だ。

グナーワはやはり宗教的な儀礼音楽なわけだけど、ご存知ないみなさんが聖なる儀礼音楽というので想像なさるのは、たぶんスロー・テンポでおごそかで静かな雰囲気のものなんじゃないかなあ。でもたとえばアメリカの黒人教会音楽がそんなものばかりではないように、モロッコのグナーワも多様で、スローなものもあるがアップ・テンポで激しくグルーヴし、振動する躍動感に満ちたものも多い。

マアレム・マフムード・ガニアの『カラーズ・オヴ・ザ・ナイト』は、どっちかというと激しく興奮するようなグナーワのタイプに属しているように聴こえる。グナーワ儀礼のことなどまったくなにも知らない、モロッコと無縁な僕だって、このアルバムを聴くと心が打ち震え、後頭部から背筋にかけて熱を帯びてジ〜ンとしてくるような感覚に襲われるんだよね。

マフムードのゲンブリのサウンドは超野太いが、しかしフレイジングはしなやかで、複雑に入り組んだベース・ラインを奏でグナーワ音楽の根幹をかたちづくり、そこにチャカチャカとカラケブが同様にトランシーなメタリック・ビートを刻み入れ、なかば歌いなかば詠んでいるような主役のうなり声と、コーラス隊とのコール&レスポンスで圧倒する。

真にヒプノティックな音楽としてのディープなルーツ・グナーワの姿がここにある。マアレム・マフムード・ガニアの『カラーズ・オヴ・ザ・ナイト』、 LP とネット(ダウンロードもストリーミングもある)で聴ける。CD はないが、問題ないんじゃないだろうか。こんなすんごい音楽を前にしたらメディアの種類なんて関係ないよ。

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