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2018/03/12

コルトレインの話をしつつ…

実はソニー・ロリンズのことも話しているんじゃないかというのが僕の見方であるグラント・グリーンの1964年作『トーキン・アバウト!』。これ、かなりいいアルバムなんだよね。すくなくとも僕は大学生のころから大好きで、いまだに聴き続けているブルー・ノート盤だ。

時系列で見ると、このアルバムの録音セッションなどがきっかけでラリー・ヤングの『イントゥ・サムシン』に結びついたということになって、それが重要視されているはず。しかし僕にとってはそんなこと関係ないのだった。僕はたんにグラント・グリーンのギターが好き。そんでもっていわゆるオルガン・トリオ編成(ギター+オルガン+ドラムス)が大好き。それだけ。

あっ、そうだ、ラリー・ヤングのことだけど、あまり知られておらず重要でもないトリヴィアを書いておこう。この1940年生まれのジャズ・オルガニストの父もジャズ・オルガニストで、名前も同じラリー・ヤング。だから区別できないんだよね。シニア、ジュニアと呼び分けるしかない。がしかし、シニアのほうは無名なので、まあそんな必要もなく、「ラリー・ヤング」とだけいえば、ふつうはジュニアのほうになるけれどね。

ラリー・ヤングのオルガンは新世代のものということになっていて、僕のばあいたとえばマイルズ・デイヴィスの『ビッチズ・ブルー』でフェンダー・ローズを弾いているのではじめて知った名前だけど、マイルズとラリーの共演はあれだけだし、あの作品にだけどうしてラリーが参加しているんだろう?ジョン・マクラフリンの起用と同じく、トニー・ウィリアムズのコネだったのかもなあ。あのマイルズの二枚組にトニーはいないけれど。

そんなラリー・ヤングはオルガンを弾くジョン・コルトレインみたいに言われたりもするし、『トーキン・アバウト!』のドラマーもいつものようにエルヴィン・ジョーンズだし、1964年9月11日録音だし、一曲目のタイトルが「トーキン・アバウト・J.C.」だしで、このアルバムはグラント・グリーンとしては頑張って時代の潮流に乗ろうとしたものだとされることが多い。

でもそれって本当なんだろうか?まだお聴きでないみなさんも、LP か CD か、またはネット・ストリーミングに抵抗のないばあいは上の Spotify にあるもので聴いていただきたいのだが、1964年の時代のサウンドだっていう印象は持たないんじゃないかなあ。少なくとも僕にはそれがない。エルヴィンひとりがポリリズミックに叩いているようだけど、基本の4/4拍子からさほど大きく離れていない。

ラリー・ヤングだってオルガンのコルトレインなどと呼ばれたりするけれど、実はあんがいソウル・ジャズ寄りの演奏を聴かせることだって多いんだよね。活動経歴からロック・ファンにも知名度があるしね。そんなむずかしい演奏をするオルガニストじゃないのかも。特に『トーキン・アバウト!』ではシンプルにジャジーで黒っぽく、ソウルフルだ。

主役のグラント・グリーンはというと、コルトレイン・スタイルのモーダルな演奏法にトライして…、なんて書いてある文章がネット上にいくつかあるけれど、本当かなあ?ふだんどおりのコーダルなハード・バップ・ギターじゃないか。そしてこのギタリストはいつもそうだけどシングル・トーンでしかソロを弾かず、ブルージーで、しかもダーティ(というにしては都会的洗練もあるのはジャズだから)だ。

アルバム『トーキン・アバウト!』収録曲では、みんなが注目する一曲目「トーキン・アバウト・J.C.」、三曲目「ラリーズ・チューン」(どっちもラリー・ヤング作)はもちろんイイ。特に一曲目ではラリーのハモンド・オルガンがびゃ〜って鳴りだしただけで、僕はイイ気分。以前も言ったけれど、それくらいハモンド B-3のサウンドが僕は大好きなんだよね。

しかしジョン・コルトレインに捧げた一曲目でも、グラント・グリーンはいつもの自分の居場所をしっかり保って自分の仕事をしている。ソロの途中で「朝日のようにさわやかに」を引用しているよね。エレキ・ギターとハモンド・オルガンのサウンドが相性いいっていうのはわかっていることだけど、それでもグラントの単音弾きソロにラリーがからみ、背後でエルヴィンが細かく刻むという、それだけで文句なしに十分楽しい。

アルバム『トーキン・アバウト!』では、それら二曲以外がポップ・ソングで、意外なところは二曲目の「ピープル」かな。同じ1964年のブロードウェイ・ミュージカル『ファニー・ガール』でバーブラ・ストライザンドが歌ったもの。だから最新のポップ・ヒットみたいなもんだった。ふつうのバラードをふつうに綺麗に弾くグラント・グリーンが素晴らしい。なにもむずかしいことはしていないし新しくもないが、音楽の美しさとは関係ないことだ。

これを除くと、残り二つのポップ・ソングはジャズ・ファンのあいだでもかなり有名。四曲目「ユー・ドント・ノウ・ワット・ラヴ・イズ」、五曲目「おいらは老カウボーイ」(I’m An Old Cowhand)。そしてこの二つで僕はソニー・ロリンズを連想しちゃうんだよね。おかしなことかもしれない。1964年以前にロリンズがやったことがあるというだけのことなのに。

説明不要だが「ユー・ドント・ノウ・ワット・ラヴ・イズ」は1956年のプレスティジ盤『サクソフォン・コロッサス』で、「おいらは老カウボーイ」は57年のコンテンポラリー盤『ウェイ・アウト・ウェスト』でロリンズがやっている。でもそんなことはグラント・グリーンがとりあげたのと、そんな強い関係はないのかも。有名ポップ・ソングだからやってみたということだったんだろう。

だからそれら二曲、たんに僕はロリンズ・ヴァージョンが好きだというだけの話で、それで連想がおよんじゃうってだけだ。いやいや、でも「おいらは老カウボーイ」のほうはやっぱりロリンズの影響もあるんじゃないかなあ。ジャズ・プロパーな演奏家の世界でこの曲をはじめてとりあげたのが『ウェイ・アウト・ウェスト』のロリンズだったのかもしれないから。

だからそんなわけで、こっちはマジでいい曲で有名曲だからみんながやっているだけの「ユー・ドント・ノウ・ワット・ラヴ・イズ」もあわせてロリンズのことを考えて…、っていうのはやっぱりジョン・コルトレインへのトリビュート的な側面が強いアルバムだからからこそ、同じ楽器のライヴァル的存在だったロリンズを僕は意識してしまうんだよね。

ロリンズ・チューンみたいな側面もある「おいらは老カウボーイ」でのエルヴィンが、アルバム中いちばんポリリズミックに叩いているのもおもしろい。エルヴィン・スタイルの、この細かく込み入ったビートを刻むドラミングって素晴らしいよね。ロリンズ・ヴァージョンでは馬のひずめのパカパカっていう音をシェリー・マンが模していて、ゆっくりひょこひょこ歩むようなユーモラスなリズムだったのが、このグラント・グリーン・ヴァージョンではすっかり様変わり。それでも原曲の持つウェスタン・コメディふうなニュアンスもエルヴィンは残している。

ってことはジョン・コルトレインの話をしよう、なんていうような格好をしながらも、グラント・グリーン以下三名は、それと同時にあんがいソニー・ロリンズの話もしようとしていたかもしれないぞ…、とかっていうのは僕の妄想なんだろうか?やっぱりきっと勘違い?

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