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2018/03/15

暖かくなってきたのでサンバの教科書を

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これぞまさにサンバの教科書というような『すばらしきサンバの仲間たち』(Encontro com a Velha Guarda)。これってブラジル盤があるんだろうか?あるってことだよね。見たことないけど。僕は中村とうようさんが解説文を書いている1990年リリースの日本フォノグラム盤 CD を持っているだけ。それは新星堂配給、つまりオーマガトキだ。

『すばらしきサンバの仲間たち』の録音は1976年らしい。日本で最初にこのレコードが出たのは1980年だっけ?当時それを知っていたとして、買って聴いたとしても僕におもしろさが理解できたかどうか、疑わしい。あのころの僕は派手に電気を使ったハードなジャズ・ファンクや、古いものなら戦前のニュー・オーリンズ/ディキシー/スウィング・ジャズに夢中だったから。

でもそのころから『すばらしきサンバの仲間たち』は、これぞ本物のサンバ・ミュージックのレコードだとして、日本のファンのあいだでも評価も人気も高かった一枚なんだそうだ。1976年録音というと、ブラジルにおけるサンバ復興が頂点に達していたころじゃないかなあ。60年代から盛り上がり、70年代に入ってエスコーラの古老たちに録音の機会が与えられるようになり、70年代半ばがピークだったはず。

『すばらしきサンバの仲間たち』はアナログ・レコードとしても短い29分程度しかない。しかしこのアルバムで聴ける地味だけど滋味深いサンバ・ミュージックは味わい満点で、美味の一言。エスコーラの古老によるサンバ録音というと、僕のばあいたぶんカルトーラのテイクオフ盤 CD が最初のきっかけだったんだけど、『すばらしきサンバの仲間たち』は、一曲ごとにサンビスタ一名ずつによる名義の音楽が続く。

だから『すばらしきサンバの仲間たち』は、あるいは編纂盤なのかもしれない。そうじゃないのかもしれない。中村とうようさんの解説文にそこらへんのことは書かれていないのだ。フロントで歌う歌手が一曲ごとに入れ替わるだけで、伴奏やバック・コーラス陣は同じ面々が務めているのかもしれない。そうだとすれば編纂盤じゃなくて、一つの企画のもとに録音計画があったものだということになる。

アルバムのサウンドを聴くと、う〜んと、たしかに伴奏陣はひょっとしたら全曲同一メンツかもしれない。そんなところも明記がないんだ。打楽器がスルドとパンデイロとクイーカだけで、それにくわえ弦楽器がギターとカヴァキーニョだけ(?、あるいはそれぞれ複数台?)という感じに聴こえ、全十曲、その同じサウンドで統一されているといえるかもしれない。

バック・コーラス隊もカーニヴァルにおけるエスコーラのサンバを再現した、まあまあ大編成の混声合唱が聴こえる。これも全曲同じメンツかも。え〜っと、じゃあやっぱりこのアルバム『すばらしきサンバの仲間たち』は一個の企画で録音された一つの単独アルバムだったってことか。

フロントで歌うサンビスタも、たしかに一曲ごとに入れ替わるものの、味わいは似ている。最有名人は、間違いなく七曲目の「最後の審判(Juizo Final)」を歌うネルソン・カヴァキーニョだ。サンバ・サークル外にも知名度の高い存在で、生え抜きでないとはいえマンゲイラの最重要人物の一人として活躍。

一曲目「懐かしいあのころ(Saudade Do Passado)」を歌うマノ・デシオ・ダ・ヴィオーラも有名人かな。インペリア・セラーノの大物。この曲でアルバムの幕開けとしているのはわかりやすい。本物のサンバ・ミュージックとはどういうものなのか、手っ取り早く理解しやすい典型的パターンだからだ。
パンデイロ(タンバリンみたいなもの)に続き、すぐに弦楽器カヴァキーニョ(ウクレレのブラジル版)が刻みはじめ、コーラス隊が出て、スルド(はフロア・タムに相当)が入り、デシオが歌いはじめる。ギター(ヴィオーラという)を含む弦楽器群が細かくビートを刻みながら、スルドは大きくゆったりと入り、デシオもコーラス隊も大きくうねるように歌っている。このさざなみのような混交グルーヴがサンバだ。

こういったパターンのノリの創りかたはサンバに共通するものなので、アルバム『すばらしきサンバの仲間たち』でも全曲同じ。四曲目でイズマエール・シルヴァが歌う「恩知らず(Ingratidao)」、六曲目、ワルテル・ローザ「こんなもんさ(E Por Aqui)」だけはテンポがやや遅めだけど、ほかの八曲も含め、ほぼ中庸テンポでのグルーヴは同じだ。

アルバムのオープナーが「懐かしいあのころ」だったのに呼応するように、クローザーがペラード・ダ・マンゲイラの歌う「素晴らしいバイーア(Reliquias Da Bahia)」であるのには意味があるんだろう。「懐かしいあのころ」はオールド・サンバ賛歌みたいな曲だけど、「素晴らしいバイーア」もペラードの書いたサンバ・エンレード(カーニヴァルのためのサンバ)で、バイーア(ブラジル北東部)賛歌だ。

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コメント

『すばらしきサンバの仲間たち』は編纂盤ではなく、新録の企画アルバムです。
日本のサンバ・ブームは、このレコードから始まったといって、過言じゃないと思います。
ラテン専門店以外でもブラジル輸入盤がお店に並ぶようになり始めの頃の大ベスト・セラーで、ぼくは吉祥寺のジョージアで買いました。いまや伝説の(苦笑)パイド・パイパー・ハウスでも、売っていましたよ。

『すばらしきサンバの仲間たち』は編纂盤ではなく、新録の企画アルバムです。
日本のサンバ・ブームは、このレコードから始まったといって、過言じゃないと思います。
ラテン専門店以外でもブラジル輸入盤がお店に並ぶようになり始めの頃の大ベスト・セラーで、ぼくは吉祥寺のジョージアで買いました。いまや伝説の(苦笑)パイド・パイパー・ハウスでも、売っていましたよ。

この倍くらいの時間、聴いていたいです。

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