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2018/04/12

オーティス・クレイのハイ・シングル集

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オーティス・クレイ。日本のファンにとってはやっぱり1978年の『ライヴ!』がいちばん思い入れの強いものだよね。僕はリアルタイムでは知らないから、そこんところイマイチな気分もあるけれど、それでも特にライヴ分の MC から出だし三曲メドレーなんか、どうしてこんなにカッコイイんだぁ〜!って、なんどもなんども聴いちゃうな。やっぱり大好きだ。

その1978年の『ライヴ!』で代表曲はやっているし、力が入ったヴォーカルも伴奏陣も文句なしに見事で、だからこの完全版の CD 二枚組(2014年)があればオーティス・クレイは必要十分なのかもしれない。だけど好きになったら、もとのスタジオ録音ヴァージョンがどんなだったのか聴いてみたいと思うよね。

スタジオ録音でいうと、オーティス・クレイはハイ・レーベル時代(1972〜74年)がいちばんよかったということになるんじゃないかな。レコード・アルバムが二枚あるけれど、もちろんソウル界の御多分に洩れずシングル盤リリースが中心。本国アメリカにおき、どんなかたちでクレイのハイでのシングルがまとめられているのか知らないが、少なくとも日本には CD『ハイ・レコード・シングル・コレクション』(ウルトラ・ヴァイヴ 2014年)がある。

このアルバム、ハイのシングルだけじゃないのがかなり貴重だ。ワン・ダフル(One-derful)でのものとダカーでのものも収録されていて、しかもワン・ダフルでのものはハイで再演されたものと続けて並んでいるのがおもしろい。両レーベルでの伴奏アレンジやオーティス・クレイの歌唱法の変化など、聴き比べることが容易。

ワン・ダフルのシングルでハイでも再演しているのは、「ガッタ・ア・ファインド・ア・ウェイ(トゥ・ゲット・ユー・バック」「ザッツ・ハウ・イット・イズ」の二曲。特に前者は1978年日本ライヴのオープニング・ナンバーなだけに、リアルタイム体験のない僕だってそれなりに感慨深い。これで、三種類の「ガッタ・ア・ファインド・ア・ウェイ」が聴けることになる。

伴奏陣含め全体的なアレンジは、1978年日本ライヴだとハイ・ヴァージョンに沿っている。

ワン・ダフル(1967) https://www.youtube.com/watch?v=-Aw-LC4LqvQ

どう聴いてもハイのシングル・ヴァージョンがいちばん整っているよね。精緻だ。さすがはウィリー・ミッチェルの手になるだけあるなあ。伴奏アレンジはハイ・ヴァージョンがいいので、だから来日公演時もそれをそのまま踏襲したんだろう。ワン・ダフル・ヴァージョンはかなり荒削りというか乱暴というか、これはだれがアレンジしてだれが伴奏しているんだろう?

しかしオーティス・クレイのヴォーカルの迫力はワン・ダフル・ヴァージョンのほうが上かもしれない。整ってなくて、まるで勢いに任せファイト一発でかましたみたいな歌いかた。こんなんじゃあ君をとりかえす方法を見つけなくちゃなんてできないような粗雑さだけど、なんだか一途な執念がストレートに出ていて、こっちのほうに僕はより共感するなあ。

でもハイ・サウンドの洗練もやはり捨てがたい。CD アルバム『ハイ・レコード・シングル・コレクション』では連続再生されるので、どうしてもワン・ダフルのとハイのとを比較しちゃうから、ハイの「ガッタ・ア・ファインド・ア・ウェイ」が流れてくるとやや拍子抜けしちゃうんだけど、こっちのほうがいいと聴こえる気分のときだってある。

1978年日本ライヴでの「ガッタ・ア・ファインド・ア・ウェイ」は、アレンジの精緻な洗練はハイ・ヴァージョンそのままに、ヴォーカルの迫力と力強さはワン・ダフル・ヴァージョンのものを再現しているみたいな感じで、それでいてヴォーカル・フレイジングの端々に細やかでしゃれたフィーリングもあるから、結局これがいちばんいいぞという結論に達してしまうが、その話は今日はしない。

日本ライヴではやっていないが、やはりワン・ダフルとハイの両ヴァージョンが並ぶ「ザッツ・ハウ・イット・イズ(ウェン・ユア・イン・ラヴ)」にも、こういったことが当てはまる。それにしてもハイはメンフィスの会社だからサザン・ソウル・サウンドで、ワン・ダフルはシカゴ。オーティス・クレイはシカゴの人間だけど、ハイ移籍前からサザン・ソウルを意識したような曲を歌っていたんだ なあ。
だから、シカゴの現場に足を運んでいたハイのウィリー・ミッチェルも、間違いなくナイト・クラブかどこかで、オーティス・クレイがこれらワン・ダフルのシングル・ナンバーを歌うのを生で耳にしたはず。それでクレイに可能性を感じ、こういったサザン・ソウルな曲ならうちのほうがもっとうまくやれるはずとの考えでスカウトしたんだろう。結果は書いたとおりだけど。

アルバム『ハイ・レコード・シングル・コレクション』20、21曲目のダカー録音シングルは飛ばして、ハイ時代のシングル・ナンバー。このアルバムだと3曲目「プレシャス、プレシャス」(1972)、そして必殺の決定曲5の「愛なき世界で」(Trying to Live Life Without You、1972)。前者はジャッキー・ムーアのヒット、後者はジョージ・ジャクスンが書いた曲だけど、オーティス・クレイのヴォーカルが最高だ。

「プレシャス、プレシャス」も「愛なき世界で」も、いかにも1970年代のハイらしいミディアム・グルーヴ・ナンバーで、このレーベルの持ち味なサウンドが満開。「プレシャス、プレシャス」はもともとオーティス・クレイのものじゃないけれど、その後はクレイの持ち歌になった。「愛なき世界で」の素晴らしさなんて、なにも言うことないね。聴くとグッと胸に迫り来るリアリティがある。

ハイでの最後のシングルになった、アルバム14曲目「イット・ワズ・ジェラシー」。これもなんといえばいいのか、歌に力が入っているなあ。全身のあらんばかりのパワーを込めたようなこの迫力には思わずのけぞってしまうほど、すごい。でもこの曲、アン・ピープルズのものだったんだよね。鈴木啓志さんいわく、廃物処理。その意味でもオーティス・クレイに強いシンパシーを抱いてしまう。

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