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2018/04/02

ブギ・ウギ・セレブレイション

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1996年にレガシー(コロンビア)がリリースしたコンピレイション盤『ジューク・ジョイント・ジャンプ:ア・ブギ・ウギ・セレブレイション』。かの<ルーツ・ン・ブルーズ>シリーズの一枚で、このシリーズ・プロデューサーはローレンス・コーン。コーンがいなかったらこの戦前音源発掘シリーズは実現しなかった。なんたって火付け役だったあのロバート・ジョンスン完全集二枚組は、コーンのプロデュースだった。

だから1990年代半ばごろだったと思うけど、ローレンス・コーンが<ルーツ・ン・ブルーズ>シリーズ・プロデューサーの任を解かれたというニュースが伝わってきて先行きが危ぶまれたわけだけど、はたしてこのシリーズは消滅したのだった。コロンビア/レガシーじたい、あのころから戦前音源のリイシューをやらなくなった(としても過言でないほど消極的になった)。

さて『ジューク・ジョイント・ジャンプ:ア・ブギ・ウギ・セレブレイション』というくらいでブギ・ウギのコンピレイションなわけだけど、これを聴きなおしてみようと思い立ったのは、すこしまえにロバート・ジョンスンのやるブギ・ウギのことを書いたでしょ。あれがキッカケだったんだ。
同じコロンビア系音源だし、たしか『ジューク・ジョイント・ジャンプ:ア・ブギ・ウギ・セレブレイション』にはピアノ・ブギじゃないものがたくさん入っていたはずだよなと記憶していたので、ひっぱり出してもう一回聴いてみた。全18曲で再生時間50分とサイズは小さいが、<ルーツ・ン・ブルーズ>シリーズは、これくらいのものが多い。

18曲のなかにあるピアノ・ブギ・ウギじゃないものをさらってみると、3曲目、カーリー・ウィーヴァーの「ベイビー・ブギ・ウギ」(1931)、4曲目、チャーリー・スパンド「スーン・ディス・モーニング No. 2」(1940)、7曲目、サー・チャールズ・トンプスン「ミスター・ブギ」(1961)、8曲目、レッド・ソーンダーズ&ヒズ・オーケストラ「ホンキー・トンク・トレイン・ブルーズ」(1953)、11曲目、ハリー・ジェイムズ「ブー・ウー」(1939)、13曲目、カルヴィン・フレイジャー「ブギ・ウギ」(1938.11)、14曲目、エイドリアン・ロニーニ「ホンキー・トンク・トレイン・ブルーズ」(1939)といったところかな。

1938年のものだけ月も書いておいた理由は、みなさんご推察のとおり、ブギ・ウギ音楽というものが全米に大きく拡散し、猫も杓子もブギ・ウギみたいになったのは、ジョン・ハモンド・プロデュースのかの『フロム・スピリチュアルズ・トゥ・スウィング』コンサート第一回によってであって、それが1938年12月23日だったから。最大のキッカケだったと思うんだ。もちろんブギ・ウギ(ピアノに限らず)のレコードはその前からたくさんあった。

上記の七曲以外でも、ピアニスト一人でとか、あるいはピアニスト三人でとか、そういった演奏はアルバムにあまり収録されておらず。ソロは1曲目のメンフィス・スリム「パニック・ストリート」(1961)、15曲目、ジミー・ヤンシー「オールド・クエイカー・ブルーズ」(1940)、17曲目ピート・ジョンスン「ブギ・ウギ」、18曲目、アート・テイタム「テイタム・ポール・ブギ」(1949)だけ。

これら以外で(ブギ・ウギ・)ピアニストが弾いているものは、5、6曲目のブギ・ウギ・ボーイズ(ミード・ルクス・ルイス、アルバート・アモンズ、ピート・ジョンスン)による「ブギ・ウギ・プレイヤー」パート1&2(1938.12.30)。ピアノものでもこれら以外はヴォーカリストとのデュオや、ピアノ+リズムやといったものばかりだ。

プロデューサーにしてコンパイラーのローレンス・コーンも、解説文で、ブギ・ウギはブルーズ・ピアノの一つの演奏法と思われているかもしれないが、もっとヴァラエティに富んでいて、スタイルの幅が広いものだったということを示したかったと書いている。その言葉どおりの選曲に、いちおうなっていると思う。

上で書いたように、ロバート・ジョンスンがきっかけで聴きなおしたので、どうしてもギター・ブギ・ウギに注目してしまう。すると、3曲目、カーリー・ウィーヴァーの「ベイビー・ブギ・ウギ」、4曲目、チャーリー・スパンド「スーン・ディス・モーニング No. 2」、13曲目、カルヴィン・フレイジャー「ブギ・ウギ」の三曲ということになるね。

えっ?おまえ、チャーリー・スパンドはピアニストじゃないか、あのブラインド・ブレイクの相棒役だった人物じゃないかと言わないで。たしかにそのとおりなんだけど、このアルバム収録の「スーン・ディス・モーニング No. 2」は、たんにギタリスト(記載なし)とのデュオ演奏というにとどまらない。スパンドがピアノを弾き歌っている背後で、ブギ・ウギのあのぶんちゃぶんちゃという典型パターンは、ギタリストが弾いているんだ。

ギタリストがいるということすら記載がなく、それだけ見るとあかたも一人でのピアノ弾き語りか?という感じなんだけど、ギターが間違いなく伴奏している。それにしてもこのギタリストはだれなんだろう?いることすら記載なしだからなあ。1940年あたりのチャーリー・スパンドといっしょに録音するギタリストというと、リトル・サン・ジョーあたり??どなたか、教えてください。Okeh 05946 です。でもネットにある同原盤ナンバーの同名曲では、なぜかギターが聴こえません。どうなってんの?

3曲目「ベイビー・ブギ・ウギ」は、カーリー・ウィーヴァーのギター&ヴォーカルにくわえ、クラレンス・ムーアのヴォーカル、そしてだれだか不明のセカンド・ギタリストでやっている。これを聴いても、実はあまりブギ・ウギっぽい印象がなく、というかあの典型パターンが聴けなくて、もっとこう、ギター・ラグなんかに近いよね。
ブギ・ウギでありながら、なおかつラグタイムに近いなんていうのがかなりおもしろいと思う。ピアノ・ブギもそうだと、ブギ・ウギ・ピアノ&ストライド・ピアノと、それらの源流たるラグタイム・ピアノとの関係は密接だと、以前、ウィリー・ザ・ライオン・スミスの記事でも書いた。ギター界でも同様だったのは間違いない。

それにだいたいカーリー・ウィーヴァーはジョージア・ブルーズの人間だもんね。ジョージア・ブルーズといえばブラインド・ウィリー・マクテル。マクテルにギター・ラグは多いじゃないか。しかもかなりの名人だ。ジョージアにも、ほかの土地にも、ブルーズ・ギタリストでラグタイムを弾く名人は多い。それらとブギ・ウギとは密接な関係があったはずだ。

1938年11月1日録音のカルヴィン・フレイジャー「ブギ・ウギ」だって、ブルージーでもなければブギ・ウギのパターンも鮮明ではなく、ラグタイム・ギターの、それもかなり素朴なスタイルのものだ。しかも、そのカルヴィン・フレイジャー、このアルバム『ジューク・ジョイント・ジャンプ:ア・ブギ・ウギ・セレブレイション』には収録されていないが、後年こういったものも録音している。題して「ビ・バップ・ブギ」(1949)。
こういうものが収録されていないのは、<ルーツ・ン・ブルーズ>シリーズだから当然ではあるけれど、しかしちょっと残念な限界だ。ピアノやギターでやるブギ・ウギのパターンが、その後、ジャンプ・ミュージックの根幹となって、リズム&ブルーズからロックを産む素地となったことまで示してくれていれば、完璧だったよなあ。ローレンス・コーンにそこまで要求できないけれど。

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