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2018/05/23

ザヴィヌル・バンドのグルーヴァソン 〜『ワールド・ツアー』

オーヴァー・ダブなしのたった五人だけでの演奏かと思うとおそろしいジョー・ザヴィヌルのライヴ・アルバム『ワールド・ツアー』。ザヴィヌル・シンディケートによる1997年の世界ツアーからの収録盤で、翌98年リリースの CD 二枚組だった。僕の持つのはオリジナルのフランス ESC 盤で、ぜんぶで19曲。日本盤は一枚に収めるため数曲オミットしているらしいので、ケシカラン。

とにかくこれほどハードにスウィング、いや、ドライヴするザヴィヌルの音楽って、ほかにあるのかなと思うほど、スゴイ。ウェザー・リポート時代にもここまでのものは少なかったと思うんだけどね。『ワールド・ツアー』では、そんな部分こそ、いや、それだけが、聴きどころなので、「イン・ア・サイレント・ウェイ」系の静謐ナンバーのことは今日は省略。

まずオープニングの「ペイトリオッツ」が完璧なグルーヴ・チューン。これが1曲目なんだから、だいたいみんなこれでつかまれてしまう。ドラムスはパコ・セリー(アイヴォリー・コースト)。パーカッションとヴォーカルがマノロ・バドレーナでベースがヴィクター・ベイリーという旧新ウェザー・リポート人脈。ギターはゲイリー・ポウルソン。プラス、ザヴィヌルでバンドの全員なんだよね。

曲によってはベースをリシャール・ボナが弾いている。歌もやっている。アルバム『ワールド・ツアー』は1997年の5月と11月のライヴからの収録で、全体の3、4、7、8、10、11、15、16曲目が五月のドイツ・ライヴでリシャールが参加。それ以外は11月のやはりドイツ・ライヴでヴィクターが弾いている。

1曲目の「ペイトリオッツ」とか、まあこんなハードなドライヴのしかたをザヴィヌルの率いるバンドがしたことなんて、まずなかったんじゃないかな。中盤部でブレイクが入りながら、バンド演奏が止まった瞬間にマノロが咆哮し、次の刹那にまた再開するとか、そのあたりの展開はほんと背筋がゾクゾクするような快感。

こんなグルーヴ路線は、ほかにも4曲目(はマノロとパコの打楽器+ヴォーカルのみデュオ)からのメドレー状態になっている5「ビモヤ」も同じ。これは、以前ご紹介した1996年のスタジオ作『マイ・ピープル』でサリフ・ケイタをフィーチャーしてやっていた曲。だけど、こんなハード・グルーヴ・チューンじゃなかったでしょ。

『ワールド・ツアー』での「ビモヤ」にサリフを呼べるわけがないので、ここで歌っているのはゲスト参加のパペ・アブドゥ・セク(セネガル)。しかし主旋律部分はヴォコーダーで派手に処理してあって、そこだけだとだれが歌っているのかの判断はできない。パペ・アブドゥ・セクが歌っているのは生声パートで、ヴォコーダーを使ってある主旋律部分はザヴィヌルが歌っているんじゃないかと思うんだけどね。

いずれにしても、サリフが書いた「ビモヤ」はやや落ち着いた曲想だったのに、ここではこんなに激しく疾走するフィーリングでの演奏。パコのドラミング、特に(裏拍で入れる)シンバルと、マノロのパーカッション、特にティンバレスが気持ちいいなあ。いやあ、快感だ。

疾走感満点のグルーヴァーは7曲目「ボナ・フォーチュナ」もそうなんだけど、これは曲題どおりリシャールのエレベ技巧をフィーチャーした短いもので、曲としての聴きごたえはあまりない。まるでジャコ・パストリアスみたいだなあとは思うけれど、ジャコの作品のなかに同じようなものがいくつかあったように思う。

10「スリー・ポストカーズ」、11「スリヴォヴィッツ・トレイル」。どっちも冒頭部からしばらくは「イン・ア・サイレント・ウェイ」系をつまらない感じにしたようで、つまりウェザー・リポートにいっぱあるあんなようなものソックリで、ふ〜んツマランナ…と思っていると(特に「スリー・ポストカーズ」は全体の半分以上がそれ)、途中からパッと場面転換して急速グルーヴ・チューンに変貌。そこからはいいぞ。

こういった場面ではドラマーのパコ・セリーが本当にすごいと思うんだよね。マノロ・バドレーナも1977年にウェザー・リポートで活躍したパーカッショニストで古株だけど、とてもそうとは思えないみずみずしさで、このコンビの生み出すハード・グルーヴこそが『ワールド・ツアー』の肝だと思うんだ。

14曲目「トゥー・ラインズ」(と3「インディスクレションズ」もだけど)はウェザー・リポート時代に書いたレパートリーで、ここからラストの16「カルナヴァリート」まで、テンポよく一気に駆け抜ける。「トゥー・ラインズ」の新型4ビートもすごいけれど、15「カリビアン・アネクドッツ」から16曲目へと続く祝祭感のあるグルーヴは気持ちいいよねえ。15で歌っているのはリシャールだ。

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