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2018/06/02

美咲の色艶 〜『岩佐美咲コンサート2018』

あの日の岩佐美咲ってこんな艶っぽい声を出してましたっけ?いままでに CD でも DVD でも作品化されているものよりもはるかにずっとセクシーさを増しているのはもちろん、2018年2月4日の恵比寿で生体験したときにも、鈍感な僕は気づいていなかった。いやあ、すばらしい、ここまで成長していたんだね。それを新作映像作品での美咲の歌で痛感した。

ついこないだ五月下旬に発売されたばかりの美咲の新作『岩佐美咲コンサート2018 〜演歌で伝える未来のカタチ〜』は、あの日の恵比寿ガーデンホールの第二部公演(夜)から収録されている。曲間などが編集されているのはもちろん、残念ながら曲そのものがカットされているものもある。そのあたりは、わさ友であるわいるどさんのブログに詳しいので、ぜひそちらをご覧ください。

アルバム『岩佐美咲コンサート2018』では、1曲目「初酒」から8曲目「無人駅」までぜんぶ濃いめの抒情演歌で、それが終わったらラウンド・コーナー(美咲が客席をまわり写メにおさまりながら歌う)に突入し、そこではふつうのポップ・ソングが披露されている。その後、弾き語りコーナーになって二曲。その次からはふたたび演歌パートになって、アンコール三曲まで含めぜんぶ(演歌に分類されないものも含め)濃厚でしっとりした抒情歌謡なので、当日のコンサートや作品化された『岩佐美咲コンサート2018』が美咲のどんな姿を描いているのか、明白なように思う。

端的に言えば、大人の色香を漂わせる艶っぽい女性歌手としての美咲こそ、『岩佐美咲コンサート2018』が表現しているものだ。それは製作者側の目論見だというだけでなく、主役である美咲自身がそういった方向へと成長・脱皮しているからこそってことじゃないかな。当日の現場ではイマイチ気づかなかった僕だけど DVD で確認し、美咲の声そのもの持つセクシーさにすこし驚いてしまったのだ。ここまで大人になっているなんて。いやあ、降参です。

それはあらゆるところに聴きとることができる。『岩佐美咲コンサート2018』で初作品化された楽曲、たとえば「火の国の女」(坂本冬美)、「風の盆恋歌」(石川さゆり)、「グッド・バイ・マイ・ラブ」(アン・ルイス)などでもそうだけど、オリジナル曲でも既発のカヴァー曲でも、美咲の声の出しかたと節まわしが変化していて、色艶があるよね。

オープニングの「初酒」からしてすでに、アルバムで流れてきた瞬間に、美咲、なんて成長したんだ!こんなに大人っぽい歌いかたはいままでしていなかったはずだ、オリジナル・スタジオ録音はもちろん、三枚ある DVD でもここまで深い表現はしていなかった!と痛感したのだ。

いままでとは声そのものが違っているんだよね。厚みと丸みのある声がスッと伸びて、しかしナチュラルなスムースさは失っておらず、それらをワンネスとして共存させている。ワン・フレーズ、ワン・フレーズ丁寧に歌い込むその発声に艶があるが、特にフレーズ終わりで消えていく瞬間にそれを強く感じることができる。2コーラスめ冒頭の「♩だれかがそばにいる〜♫」「♩しあわせ、ふしあわせ〜♫」なんかもすんごいよね。最後の「♩やるぅ〜かぁ〜♫」部分の伸びと艶がいい!

こんな「初酒」で幕開けするもんだから、『岩佐美咲コンサート2018』全編に対する期待が大きくふくらむが、その後の美咲は、そんな期待値のずっと上空を飛翔する歌を聴かせてくれるのだった。オリジナル曲なら2曲目の「ごめんね東京」もそうだけど、もっといいぞと個人的に感じるのが本編ラストの「もしも私が空に住んでいたら」から、アンコール三曲だ。

もう〜、おんなじ表現ばかりだが、それら四曲での美咲の声の伸びと張りと艶、全体的歌唱表現としての深みと凄みが増しているところなど、いやあ〜、すごいね。「もしも私が空に住んでいたら」なんか、こんなすごい曲だと、ここまでの名曲だと、作品化された『岩佐美咲コンサート2018』ヴァージョンで実感した。しかもこの「もし空」だと、凄みのある部分と可愛らしくやさしい部分とのメリハリ、緩急も見事だ。安定感も図抜けている。

しかも発音が一層明瞭になっているよね。言葉をひとことひとこと、細かく丁寧にしっかり歌っている。たとえば「もし空」2コーラスめの「手に入れたものは偽名と孤独」の「偽名」の「ぎ」。これが「ぎ」であることは、実を言うといままでのヴァージョンではイマイチ鮮明ではなく、「偽名」と歌っているというのは音だけでははっきりしなかったので、それが「ぎ」であることを、僕は歌詞カードで確認した。

しかし『岩佐美咲コンサート2018』ヴァージョンの「もし空」では、その「ぎ」も音だけではっきり聴きとれる。フレーズ、フレーズの終わりごとの消え入るところでも、スーッと声を張り伸ばし、そこに中庸なセクシーさや適度な情緒がこもっていて、言葉をとても大切に扱っているなとわかる。伴奏への乗りかたも絶妙さを増している。

アンコール部に入って、1曲目の「佐渡の鬼太鼓」は、そんな美咲の成長を活かすべく用意された新曲だったのだ。1コーラスめラストの「♪あぁ〜、海も騒ぐぅ〜♬」なんか、いいよねえ。いや、そんな部分が随所にある。これ、聴衆の前での初披露だったんだけど、う〜ん、すごいね。すでに完成されている。がしかし、今年この新曲を繰り返し歌い込むことで、もっといい曲になっていくはずだから、おそろしい。

アンコール2曲目「鞆の浦慕情」、3曲目「鯖街道」も、そんな「佐渡の鬼太鼓」路線の楽曲に生まれ変わっているんだよね。伴奏はいままでと同じだから、違っているのは美咲の声と歌いかただ。僕は特に「鞆の浦慕情」の変貌に目を見張ったのだった。『岩佐美咲コンサート2018』で聴ける美咲のオリジナル楽曲(は七つぜんぶある)では、「鞆の浦慕情」にいちばん強い感銘を抱いた。これを聴いちゃうと、いままでに作品化されているライヴ・ヴァージョン三つでも物足りないと感じてしまう。声がね、安定しているんだよ。伸びやかで艶っぽい。

そんなふうに完全脱皮した美咲の歌唱は既存のカヴァー曲でも同じで、いままでとはかなり様子が違っている。DVD 後半にある「わたしの城下町」「空港」(後者の発売はこのコンサート当日よりもあとだったが)なども、しっとり抒情派歌手としての美咲を見事に表現している。そのあいだにはさまってある「グッド・バイ・マイ・ラブ」も、どっちかというとテレサ・テン・ヴァージョンに寄せてきているしね。

アルバム『岩佐美咲コンサート2018』前半にあるカヴァー曲なら、既存のものでも初披露のものでも、もっとすごいなと僕は感じるんだよね。すなわち「火の国の女」から「北の宿から」までの五曲。このパートがこのアルバムの個人的クライマックスだ。選曲も歌唱も、新曲「佐渡の鬼太鼓」の路線、傾向、変化にあわせてきている。

特に石川さゆりの「風の盆恋歌」がすばらしすぎる。2018年2月4日の昼夜二回とも歌われたこの曲は、僕だけじゃなくてファンのあいだで最も評価が高かったもので、いやあ〜、たまりませんこんな歌。詞が最高に泣けるものだけれど、それをしっとり度満点の濃厚な色艶を匂わせて、同時に激しいパッションを表現しながら、大人の歌手(しか歌えない内容だ、この曲は)へと大きく成長した美咲が完璧な歌を聴かせているよね。

あの日、現場でボロ泣きし、DVD で聴いて僕はまた泣いちゃった美咲の「風の盆恋歌」。来る8月8日に発売予定の CD シングル「佐渡の鬼太鼓」特別盤のタイプCに収録されると決定したことが公式アナウンスされている。2018.2.4のライヴ・ヴァージョンはこうして発売されているから、八月発売予定なのはたぶん新録なんじゃないかな。超楽しみだ!

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