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2018/06/10

隠しテーマはハービー「ウォーターメロン・マン」? #BlueNoteBoogaloo

ブルー・ノート・レコーズはこういった自社音源を使ったストリーミング用のプレイリストをたくさん作って公開している。数えるのも面倒くさいが、たしか50個だか70個以上はあったはず。それも2018年6月3日現在ということだから、今後ますます増えるのかも。そのなかにはかなり楽しく興味深いものがある。

このプレイリストのばあい、あるいは主題はビリー・ヒギンズかもしれないが、「ウォーターメロン・マン」のドラマーだから。どっちにしても隠れてはいないのかな、これだけ鮮明に出ていると。ハービー・ハンコック自身の音源は「カンタループ・アイランド」しか収録されていないけれど、サイド・マンとしてピアノを弾いている曲がいくつもあるし、そんなことじゃなくて、もっとこう本質的に、あの「スイカおとこ」がひとつのブレイクスルーになって、何年か経ってファンキーなソウル・ジャズ〜ジャズ・ファンク誕生へとつながったかもしれない。そんな道程が見えてきた。

2018年5月9日の深夜にブルー・ノート・レコーズの Twitterアカウントがアナウンスしてくれた、この『ブルー・ノート・ブーガルー』という会社公式プレイリスト(Apple Music にも Deezer にもある)。ジャズ界において、ハービーの「ウォーターメロン・マン」がどれほどの影響力を持ったのか、その大きな意義をしっかりと教えてくれているよね。ブルー・ノートとしては、リー・モーガンの1964年のヒット・チューン「ザ・サイドワインダー」に続くもの、という説明なんだけれども。
いちおう念のためハービーの「ウォーターメロン・マン」もご紹介しておく。当時最初にヒットしたのはこのハービー・オリジナルではなくって、モンゴ・サンタマリアがカヴァーしたヴァージョンなんだけど、1962年録音発売のハービーのこの曲をラテン・バンドがヒットさせうるという事実じたい、ブルー・ノート・ブーガルー(・ジャズ・ブルーズ)の最初の一例としてあげるべきっていうことなんじゃないのかな。
プレイリスト『ブルー・ノート・ブーガルー』では、上で書いたように会社公式見解としてリー・モーガンの「ザ・サイドワインダー」(1963年録音64年発売)からはじまっている。それのドラマーもビリー・ヒギンズだぞ。8ビートのリズム・パターンが「ウォーターメロン・マン」に酷似していることにも注意してほしい。バリー・ハリスの弾くピアノ・リフもハービーと同様のパターンだ。

ところでこっちが主役かもしれないビリー・ヒギンズだけど、この『ブルー・ノート・ブーガルー』では実に多くの曲で叩いている。こういったブーガルー・ジャズ・ブルーズでは、特にスネアの使いかたに特色を出しているよね。8ビートの裏拍でカンカン入れてシンコペイトし、シンバル・レガートでの乗りかたもグルーヴィだ。1960年代前半当時のジャズ界だと、こういったリズムを最も的確に表現できるトップ・ドラマーだったかもしれない。ラテン資質で、ほかにもボサ・ノーヴァふうのものなんかもよくやっているよね。

話がズレていくかのように見えるかもしれないが、ビリー・ヒギンズのこういうのはファンク・ドラミング(の祖型)だよね。ほんの一例をあげるとジェイムズ・ブラウンの1967年「コールド・スウェット」。この曲が正真正銘のファンク・チューンであることを疑うひとはいないが、ドラマーはクライド・スタブルフィールド。並べてみたのでちょっと聴いてみて。
JB の「コールド・スウェット」は、1968年9月録音のマイルズ・デイヴィス「フルロン・ブラン」(『キリマンジャロの娘』)になっているんだけど、トニー・ウィリアムズのドラミングだけでなく、こういったビート感、グルーヴが、直接には JB から来ているものだとしても、もっと源泉を掘ると、サイド・マンだったハービーの、マイルズ・バンド加入前の一曲に、結局行き着いてしまう。

どうこれ、この事実?「ウォーターメロン・マン」は、説明不要だがハービー自身が1970年代にファンク・チューン化して再演し、その後もライヴでどんどんやった。そのなかには1991年夏にマイルズと共演したヴァージョンだってある。しかしそもそも1962年のオリジナルが、その60年代当時からリー・モーガンらその他たくさん出現したファンキーなジャズ・ロック(というか今日はブーガルー・ジャズと言うべきか)に受け継がれていたと考えたほうがいいかも。

あんな叩きかたができるビリー・ヒギンズを起用し、リズム・パターンはブーガルー、というか要はラテン。楽曲形式は(12小節定型ではないが)ブルーズ進行。それでもってハービーは「ウォーターメロン・マン」を書いてクインテットで完成させた。いまこの段落で書いたこの全要素が、翌年録音のリー・モーガン「ザ・サイドワインダー」にも揃っているばかりでなく、プレイリスト『ブルー・ノート・ブーガルー』のほぼすべての曲にあるじゃないか。

同一パターンのファンキー・ラテン・ジャズでくくったんだから当然だけどね。でもブルー・ノート公式は、そんなものの先駆に違いないハービーの「ウォーターメロン・マン」は隠した。20曲以上あるこのプレイリストのだいたいすべてがハービーのあのパターンかその発展系で、たとえばピアニストが主にブロック・コードでガンガン叩きながらブーガルー・フレーズであおるのも同じなのに。

プレイリスト『ブルー・ノート・ブーガルー』収録曲の一つ一つについて具体的に書く必要は今日はないと思うので書かないのだが、もちろんブルー・ノート・ジャズに限定されたセレクションだから、それ以外の、たとえばファンク・ミュージック・サイドにある音源は入れられない。だけど、上でも JB のことに触れたように、あきらかに連動していたなあ、あのシックスティーズにおいて。

そう考えると、アメリカ合衆国のジャズでもブルーズでもロックでもファンクでも、「ファンキー」になる最大の要素はラテン、「鍵はラテンにあり!」ということなのかもしれないよね。ラテン・シンコペイションがファンク・グルーヴの大元なのかもしれないね。

ってことは、ちょっと待って。そのラテン・ミュージックの跳ねるリズムはもともとどこから来たものなのか?とか、表面的にも鮮明なかたちでは1960年代後半(〜70年代)のアメリカ合衆国音楽がああいった同一方向へ傾いたのはどういうことなのか?とか、同時期あたりの北米ラテンとの関係は?とか、う〜ん、妄想がひろがっちゃって、楽しいったらありゃしない。

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