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2018/06/18

ゴタ混ぜの楽しさ 〜 ゼップ『フィジカル・グラフィティ』

謎。レッド・ツェッペリンの「聖なる館」という曲は、アルバム『聖なる館』にはなく、次作『フィジカル・グラフィティ』にある。高校生のころはこりゃなんだ?と混乱していたなあ。ずいぶんあとになって、この1975年発売の二枚組用にレコーディングした新曲と、もっと前の音源(に手を加えた?)とが混在しているのだと知った。

そのあたり、ぼくなんかいまだにどれがどこらへんだっけ?って、まあ曲題とかサウンドとかである程度の察しはつくもののすぐに忘れて混乱しちゃうので、自分のために整理しておきたい。一覧にしてみた。

CD1
1 Custard Pie (new song)
2 The Rover ("Houses of The Holy" outtake)
3 In My Time Of Dying (new)
4 Houses Of The Holy ("Houses Of The Holy" outtake)
5 Trampled Under Foot (new)
6 Kashmir (new)

CD2
1 In The Light (new)
2 Bron-Yr-Aur ("III" outtake)
3 Down By The Seaside (4th album outtake)
4 Ten Years Gone (new)
5 Night Flight (4th album outtake)
6 The Wanton Song (new)
7 Boogie With Stu (4th album outtake)
8 Black Country Woman ("Houses Of The Holy" outtake)
9 Sick Again (new)

なんでも情報によれば、新録八曲のなかに長いものがあるため(「死にかけて」だけ?)LP 一枚にはぜんぶ入らないので二枚組にしようと、しかしそうすると新作曲だけでは満たせないので過去音源を、となったのだそうだ。なんどもしつこいようだけど LP だと二枚組偏愛傾向があったぼくで、その意味でも『フィジカル・グラフィティ』は大好きだった。むろんいまでもツェッペリンのぜんぶのアルバム中いちばん好き。

しかしこうやって整理してみると、『フィジカル・グラフィティ』、ぼくの好きな曲は新作であるばあいが多い。過去セッションからのアウトテイクだと、二枚目(B面)の「ブギ・ウィズ・スチュ」「ブラック・カントリー・ウーマン」は相当好きだけど、それら以外はいまではイマイチな感じに聴こえる。高二、高三のころは(アルバムぜんぶのなかで)「夜間飛行」がいちばん好きだったんだけどなあ。

あ、待って、一枚目(A面)にあった「流浪の民」はいまでもかなり好きだなあ。ジョン・ボーナムのドラミング(最初ハイ・ハット)から入ってきて、ジミー・ペイジのギターが長めに弾くイントロもいい感じに聴こえる。ロバート・プラントが歌う歌詞もいいし、そのあいだを支えるギター・コード・ワークも好き。間奏ギター・ソロも(珍しく?)聴ける。

「ブギ・ウィズ・スチュ」「ド田舎おんな」の二曲は、上でご覧のように録音時期が違っているけれど、雰囲気が共通している部分もあって、連続すると流れもいい。フル・アクースティック・サウンドも楽しいくいい感じ。これらを "ツェッペリン版アンプラグド" とか呼んでいる文章をこないだどこかで見かけたけれど、アホかいな、このバンドには最初っからふつうにたくさんあるちゅ〜ねん、生音ロックが。

「ブギ・ウィズ・スチュ」のスチュは、もちろんローリング・ストーンズのイアン・スチュワートのこと。四枚目のアルバム(にタイトルはありません)A 面にあったツェッペリン・スタンダード「ロックンロール」のピアノもスチュなんだそうだ。と、ついこないだ知ったばかり。ホンキー・トンクなピアノ・スタイルはたしかにこの二曲で共通している。同じセッションで録音されたんだね。

ところで「ブギ・ウィズ・スチュ」で聴こえる打楽器はなんだろう?演奏しているのはジョン・ボーナムかもしれないが、ふつうのドラム・セットのなにかのパーツの音じゃない。そうだとしたら相当加工してある。ホンキー・トンクふうなこのブルーズ(リッチー・ヴァレンス「ウー、マイ・ヘッド」のパクリ)によく似合っているよね。似合うように加工した??

「ド田舎おんな」はなんでもないアクースティック・ロックみたいだけど、変拍子を使ってあって、だからプログレっぽいムードを持つアレンジでもある。サウンド・カラーは『レッド・ツェッペリン III』のころのようだけどね。ペイジの弾くギターがそんなシンプルさと複雑さを同時表現している。

「ド田舎おんな」でのボンゾは、最初ベース・ドラムで入ってきたときはアフター・ビートで踏んでいるが、アレレッ??と思ったのか、知らん顔してシレッとオン・ビートに移行しているよね。それもそうとはわからない程度にちょっとずつちょっとずつずらしていってそのまま。スネアなどを叩きはじめるころにはすっかり移行完了。プラントのブルーズ・ハープもいい。

この世代の英ロック・シンガーはみんなあたりまえにハーモニカできるんだけど、『フィジカル・グラフィティ』だと、オープニングの「カスタード・パイ」でも聴ける。この曲のことはいままでさんざん書いてきていて、昨日も触れた。まあ好きなんだよね。この曲も米南部カントリー・ブルーズからの引用パッチワークだけど、ギター・リフが終始 3・2クラーベ(aka ボ・ディドリー)のリズムで刻み続けていることはだれも言わない。

『フィジカル・グラフィティ』CD1の「死にかけて」「カシミール」のことは(いままでたくさん書いたので)省略して、「トランプルド・アンダー・フット」。ジョン・ポール・ジョーンズがクラヴィネットを弾くのが最も印象的なファンク・チューン。スティーヴィ・ワンダーの「迷信」路線だね。粘りつくような音色だから大好きな楽器だ。

クラヴィネットは「カスタード・パイ」でも使われているよね。最初右チャンネルでギターが鳴りはじめ、次いですぐに左からクラヴィネットがチェイスするように、つまり輪唱のようにほぼ同じパターンを演奏して、そのまま最後まで行く。このブルーズはそのワン・リフだけでできている。「トランプルド・アンダー・フット」でのソロはクラヴィネットだけ。

アルバム二枚目の「イン・ザ・ライト」もちょっぴり「カシミール」(とか、要は「ワイト・サマー」から来ている)路線のアラブ〜インドふう楽曲。特にこれまたジョンジーがイントロで弾く鍵盤(はこれなんだろう?オルガン?メロトロン?)サウンドの旋律がエキゾティックでいいね。プラントの歌う主旋律もそう。CIA(ケルト、インド、アラブ) コネクションだ。

二枚目 A 面だと、ラストの「テン・イヤーズ・ゴーン」もかなり好き。ラヴ・バラードなんだけど、冒頭のギター(すぐにベースも来る)が奏でる雰囲気というか空気感がすごくいい。間を開けてあって、音が鳴っていない余韻の時間、スペースが大好きなのだ。その隙間の上でプラントが歌い出す。間奏でソロを弾くギターのこの音色は、レズリー・スピーカーを通してあるのかな?そのせいかどうか、そこもアラブふうに聴こえる異なムード。

そうそう、二枚目 B 面の「ザ・ワントン・ソング」でもギターはたぶんレズリー・スピーカーを使ってあるんだろう。この曲もファンク・チューンだ。『聖なる館』にあった「ザ・クランジ」を想わせるところがあるよね。なにを隠そう、いま2018年のぼくが『フィジカル・グラフィティ』でいちばん気に入っているのがこの「ザ・ワントン・ソング」。

延々と反復されるギター・リフ(ペイジ・スタイルであるシングル・トーン構成、有名なのはぜんぶそう)も快感だが、ボンゾのドラミングがカッコよすぎる。このへんの叩きかたは間違いなくアメリカの黒人ファンク・ドラマーを聴いて学んでいる。ニュー・オーリンズ・スタイルなニュアンスもあるよね。ジガブー・モデリステ(ミーターズ)のことが好きだったとは有名だが、ボンゾはもっとたくさん聴いていたとだれも疑わないはず。スネアでゴースト・ノーツをたたみかけるあたりとか、間違いない。

『フィジカル・グラフィティ』。二枚全体で見ると、このバンドの全キャリアをギュッと凝縮したようなサマリー的内容…、でもないのか、ゴッタ煮でとっちらかっているから凝縮じゃなくて散りばめられているところ、それがいい。ツェッペリンの持っているほぼ全要素がここにある。ブルーズ・ベースのハード・ロック、ラヴ・バラード、プログレ、ソフト・ロック、(英トラッドふう)フォーキー・アクースティック、ケルト/インド/アラブ路線、ファンク、ギター・インストルメンタル。全部揃っているじゃないか。

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