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2018/06/23

楽しいからこそハイライフ

2014年の Soundway 盤『ハイライフ・オン・ザ・ムーヴ』。ぼくが買ったのは2015年だった。詳しいことは附属の英文解説にあるし、また英語を読むのが億劫だったり、またそれが問題ないひと向けにも、ものすごくためになっておもしろい日本語解説がある。それは深沢美樹さんによる Facebook への連続投稿。まとめてエル・スールさんが転載くださっている。
これら英文・日本文の二つがあれば、もはやぼくみたいな素人が言うことはなにもない。だから大雑把な感想だけ記しておこう。自分自身のための記録だ。このブログはだいたいそう。自分で自分の文章を読みたいがために自己の内面を整理してアップしているだけで、みなさんに語りかけているわけではない。

アンソロジー『ハイライフ・オン・ザ・ムーヴ』。副題にロンドン、レゴス、1954-66とあるので、録音の場所と時期はそうだと判断していいんだろう。どこを読んでもそれ以外のことは詳しくわからない。ガーナとナイジェリア(シエラ・レオーネなどのひともいる?)の音楽家によるレコーディング集のようだ。

かつての英領で英語圏西アフリカ音楽のハイライフがどんなものなのか、なぜこういう上流社会という名称が音楽に使われているのかは、聴いて読めばわかることなので。ぼくの趣味嗜好としては、やはりジャズ・ミュージックからなにが流入しているか?がいちばん気になるところ。でも中米カリブ音楽から来ているもののほうが大きいように聴こえる。

具体的にはキューバ音楽、特にソンと、トリニダード・トバゴのカリプソだよなあ。カリプソ色は『ハイライフ・オン・ザ・ムーヴ』で最も濃く感じるものだ。これはみなさんも同様のはず。リズムの感じなんか、とてもよく似ているよね。このへんは、ガーナやナイジェリアへ直接流入したのか?二国出身の音楽家がロンドンに住んでいた時代に憶えたものなのか?

『ハイライフ・オン・ザ・ムーヴ』に収録されているガーナ、ナイジェリア二国出身の音楽家でこの時代のロンドンでハイライフ・ミュージックをやっていて、それを母国に持ち帰り独自の世界を確立し、世界的ビッグ・スターになったといえるのがフェラ・クティだ。なんでもこのアンソロジー収録のフェラは最初期の録音らしい。

正直言って、のちのフェラをみなさん同様ぼくも先に聴いているわけだから、このロンドン時代の音楽ではぜんぜん物足りない気分。でもジャズからの影響もはっきり聴けたり、ホーン・アンサンブル・スタイルに後年のアフロビートにおけるそれの祖型を見出したりなど、聴きどころはあるなあ。

『ハイライフ・オン・ザ・ムーヴ』を聴き進んでいると、まず一枚目4曲目、スティーヴ・ローズ&ヒズ・ロンドン・ハイ・ライファーズ「ドリンク・ア・ティー」でハッとさせられる。これ、カッコイイよなあ。かなり楽しい。この4曲目でいきなりグンと洗練された本物のモダン・シティ・ミュージックになっているような気がする。音楽そのものは、まさに上流の雰囲気。ヴォーカルなしのインストルメンタル・チューン。

スティーヴ・ローズはほかにもう一曲収録されているが、そっちでは女性ヴォーカリストをフィーチャー。音楽の(ジャジーな)洗練度や(ぼくにとっての)楽しさなどでは「ドリンク・ア・ティー」にすこし劣ると思っていると、どうやらそれは歌のあいだだけで、楽器ソロ&アンサンブル・パートになると、やはり抜群にいい。

スティーヴ・ローズに次いでカッコイイなあと思うのが、一枚目10曲目、バディ・ピップズ・ハイライファーズ「ガーナ・スペシャル」。サックス・ソロが楽しい。モダン・ジャズっぽい吹きかたにも聴こえたりしないだろうか?これもインストルメンタル・ナンバーだ。

一枚目15曲目、ボビー・ベンソン&ヒズ・オーケストラ「オコココ」もかなりいい。歌いかたは、これだけじゃなくてほかのいろんなひとのいろんな曲でもそうなんだけどモッサリしているように聴こえ、もっとこうシャープなほうが好きなばあいもある身としてはイマイチ。だけど楽器演奏が全体的にすごくイイ。

同じボビー・ベンソンがやる二枚目3曲目「ナイジャ・マンボ」も、マンボかどうかはちょっとわからないが、すごく好きだ。あ、でもリズムとホーン・リフの反復とその上でトランペッターがアド・リブ・ソロを展開するあたり、マンボっぽいのか。

その次の二枚目4曲目、ランス・ボルズ・アフリカン・ハイライフ・バンド「ハイ・ライフ・カムズ・トゥ・ユーロップ」もいいが(特にパーカッションとエレキ・ギター)飛ばして、二つの「ブラウン・スキン・ギャル」も好きだけど割愛し、やはりバディ・ピップの二枚目11曲目「ジョージーナ」が本当にいい。やはりサックスが光る。

『ハイライフ・オン・ザ・ムーヴ』二枚目終盤に二曲あるブラック・スター・バンドもカッコいい〜。「エクオナ・リズム」のほうはかなりジャズ寄りだなあ。ドラマーの叩きかたなんかにもそれを鮮明に感じとることができる。トランペット・ソロもジャジー、というかビ・バッパーみたいだ。と思うとキューバン・スタイルにも聴こえたり。まあビ・バップ・トランペットとキューバン・ミュージックのトランペットはそもそも…。

ところで楽器ソロ&アンサンブルといえば、たしかに『ハイライフ・オン・ザ・ムーヴ』ではジャズ・スタイルやその変形が聴けるけれど、たとえばトランペットのソロに限定すれば、そこにキューバのソンで吹かれるスタイルの痕跡がもっと鮮明にあるんじゃないかなあ。間違いないと思うんだけど。どれが?っていうんじゃなく全体的に。

複数トランペットを重ねてある部分にもソンの影響がありそうだし、またリード楽器も含めてのホーン・アンサンブルの創りかたにもキューバ音楽、特にマンボのアレンジ手法が流入しているんじゃないだろうか?う〜ん、そういえばソン・モントゥーノを拡大増幅したものであるマンボの反復形も、このアンソロジーで聴けるハイライフにあるようだ。

また、たとえばクラベスが刻んでいる曲も複数あるし、それはクラーベのパターンではないけれど、ちょっと似たようなシンコペイションを表現し、ほかの複数パーカッションやドラム・セットなどと一緒になって、この楽しいハイライフをグルーヴさせているよね。

そんなリズムの上に(ピアノやギターや)ホーンズやヴォーカリストが乗っているわけで、楽器の基本編成やアンサンブルの根幹はジャズからたしかに来ていそうだし、またキューバ音楽のホーン・アンサンブルも北米合衆国のジャズからかなり吸収しているみたいだから、そのあたりが ジャズ→ハイライフ の大きな部分なのだろうか。

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