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2018/07/16

ウェザー・リポートの熱帯地上舞踏音楽トリロジー(2)〜『ブラック・マーケット』

地上の熱帯楽園で賑やかで楽しそうに踊っているような音楽をやるようになったウェザー・リポートの三部作。二回目は1976年3月リリースの『ブラック・マーケット』。大学生のころのぼくは A 面しかたぶん聴いてなくて、それも真ん中2曲目「キャノン・ボール」をスキップして「ブラック・マーケット」「ジブラルタル」ばかり好きだったような記憶がある。

それがいまや嗜好が変化して、B 面の、それも1曲目「エレガント・ピープル」が最高にカッコイイと感じるんだよね。B 面だと、あとは3曲目の「バーバリー・コースト」。A 面2曲目の「キャノン・ボール」も大好きになっているが、これら三曲がいいぞと心から思えるようになったのは、ここ25年くらいの話だ。それ以前はな〜んじゃこりゃ?と感じていた。

そんな話はあとでするとして、1曲目のアルバム・タイトル曲。ウェザー・リポートにとっても「バードランド」と並ぶシグネチャー・ソングになったものだけど(だからこそ、ある時期以後はライヴで演奏しなかったし、再演するようになってからもヒット・メドレーみたいなファン・サーヴィスでしかやらなかった)、サウンドの広がりとカラフルさが、前作『幻想夜話』と比べても、もう全然違っている。

特に「ブラック・マーケット」で、音量の小さいイントロ部(はジョー・ザヴィヌルのシンセサイザー中心)を経てブリッジみたいなもの(日本のコメディ集団ドリフターズのコントで使われていたあのパターンによく似ている)を経て、2:28 あたりでブワ〜ッと分厚いサウンドが広がるけれど、それまでのウェザー・リポートにはなかったものだ。

それを可能にしたのがこの作品から使えるようになったオーバーハイムのポリフォニック・シンセサイザー。これのおかげで多層的な、まるでビッグ・バンドのホーン・セクションみたいな、厚みのあるアンサンブルがジョーは使えるようになって、しかもそれにウェイン・ショーターのサックスを同時進行で重ねたりなど、アレンジの幅が急激に拡大した。

『ブラック・マーケット』以後も、テクノロジーの進展とともにジョーの書くアンサンブルは変化したけれど、このポリフォニック・シンセサイザーの登場ほどウェザー・リポートの音楽を激しく劇的に変貌させたものはほかにない。かなりカラフルで、だからポップにも響くので、それまでのフェンダー・ローズ中心の鍵盤サウンドがお好きなみなさんには、『ブラック・マーケット』以後のウェザーはちょっとね…、みたいな否定感をお持ちかもしれない。

商業的にこのバンドが大成功したのは『ブラック・マーケット』と『ヘヴィ・ウェザー』二作のポップ&ファンキー路線によってだし、個人的大好物だし、またぼく的には音楽性の可能性も表現領域も広がって、より聴きやすく、しかも高次元へと到達しているように感じている。だからかなり高く評価しているんだよね。

1曲目「ブラック・マーケット」と3曲目「ジブラルタル」は同じ路線の曲だ。ジョーは当初「ジブラルタル」をアルバム・タイトルに持ってこようとしていたらしく、それくらい出来に自信があったんだろうなあ。大学生のころはこの地理名称ナンバーがアルバムでいちばん好きだったぼくだけど、いま聴きかえすと、ちょっと大げさかな?くどいかもなあ?特に終盤のリピートが…、とかって感じないでもない。う〜ん、まあ正直に言えば、いまではあんまりちょっと…。

これよりは(LP では B 面だった)次の4曲目「エレガント・ピープル」が最高に魅力的・魅惑的だなあと思ういまの、というか25年ほど前からのぼく。これはウェインの書いた曲だけど、ジョーがかなりペンを入れていると、聴けばわかる。しかも、この「エレガント・ピープル」の旋律とか、リズム・パターンって、エキゾティックだよなあ。またテナー・サックスで吹くショーターのラインも、これは一種のアラブふう?

アラブふうかどうかイマイチはっきりしないが、アメリカ音楽から見た際には間違いなくエキゾティックなこの流麗なメロディ・ラインを際立たせるために、(たぶんジョーのアレンジで)アクースティック・ピアノとドラムスで「だだ、だっだっ、だだ、だっだっ」のリズム・シンクロ・パターンを演奏し、これにパーカッションが有機的にからむ。特にティンバレスがカンカン入る瞬間は快感だ。

こんな B 面1曲目「エレガント・ピープル」が本当に大好きだけど、B 面だと2、4曲目は個人的には飛ばして、3曲目の「バーバリー・コースト」。いきなりサウンドが大変貌しているが、これがジャコ・パストリアス初参加の一曲だった。曲もジャコが書いている。ベース・ラインは、すでにおなじみのジャコ節全開だ。曲はどうってことないかなと思う。

これに比べたら、同じくジャコの弾くA 面2曲目「キャノン・ボール」は、まだジャコらしさがフル発揮はされていないように思う。アルバム『ブラック・マーケット』では、これら二曲以外のベースはアルフォンソ・ジョンスンで、この交代期にレコーディングが進行した。「キャノン・ボール」は、前後の「ブラック・マーケット」「ジブラルタル」と連続していて違和感があまりないもんね。ジャコがまだまだ?アルフォンソがナイス・ワーク?

ところでこの「キャノン・ボール」という曲題は、やっぱりジョーのかつてのボスに捧げたものだったのだろうか?そのあたりの事情みたいなものを読んだことがないのだが、キャノンボール・アダリーは1975年8月死去で、『ブラック・マーケット』の録音は1975年12月〜76年1月だから、たぶん間違いないと思うんだけど。

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