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2018/07/02

ロビーの変態ギターを満喫しよう 〜 ディラン『プラネット・ウェイヴズ』

ボブ・ディランの『プラネット・ウェイヴズ』(1973年録音74年発売)。大好きなんだよね。ひとによっては1967年『ジョン・ウェズリー・ハーディング』以来の新作だとか、そんなことになるらしいが、賛同できない意見だ。だってたとえば「オン・ア・ナイト・ライク・ディス」みたいな曲は、『ナッシュヴィル・スカイライン』(1969)なんかにもあったような気がするよ。声が違うから、ってことなんだろうかなあ。

あ、そういえばアルバム全体のつくりも、ほぼストレートなラヴ・ソングばかりで、そこも『ナッシュヴィル・スカイライン』と同じだ。『プラネット・ウェイヴズ』のほうにはひどく否定的で暗い恋愛歌も複数あるけれど、それらもサウンドがしっとりいい感じに響く。

さらに、ディランが(いわゆる)ザ・バンドといっしょにやった作品のなかでは、これが最高傑作。すくなくともぼくはいちばん好きだ。っていうか、これら二者だけの組み合わせでアルバムを創るのは『プラネット・ウェイヴズ』が初だよね。意外な気がしないでもない。ザ・バンドがこうと名乗るようになってから初というだけじゃない。

『プラネット・ウェイヴズ』。二者の全面タッグで創り上げた、というか、音楽性はザ・バンド寄りになっているかも。そう聴こえる。ディラン節と言えるのは、ラスト11曲目のギター弾き語り「ウェディング・ソング」だけじゃないかな。

このアルバム以後は、ザ・バンドとの共演作じゃなくたってディランのなかで似たような音楽になっているケースがある。だから、最初はホークスがディランからたくさん学んだだろうけれど、ある時期以後は逆流もあって、相互影響みたいになっていたんだろう。「ヘイゼル」みたいな曲はその後いくつかある。『欲望』(1976)ラストの「セアラ」もそう。大好きな曲なんだよなあ。

『プラネット・ウェイヴズ』では、特にロビー・ロバートスンのギターが目立って活躍しているように思う。いやあ、すばらしい、楽しいサウンドだなあ。本当にロビーはすごい。なにを隠そう、ザ・バンドの諸作やそのほかいろいろ含めても、ぼくのいちばん好きなロビーがここにいる。

そしてこのアルバムでのロビーは、いつにも増して変態的だ(褒め言葉)。むろんふだんからこんな弾きかたをすることの多いギタリストだけど、『プラネット・ウェイヴズ』では、な〜にやってんの〜?って笑いさえこみあげてくるほどの妙チクリンさ。特に2曲目「ゴーイン・ゴーイン・ゴーン」がすごい。

イントロ部からしてすでにかなり印象的だが、ディランが一連歌い "I'~~m goin~, I'm goin', I'm gone" とやった瞬間にビョ〜〜ン!と下降して、次の瞬間にカッカッカッ!っていう、そんなオブリガートを入れる。ナンダヨ〜?これ〜(笑)。このやりかたは "I'~~m goin~, I'm goin', I'm gone" と歌われるたびに毎回入るオブリガートだ。

ディランがぜんぶ歌い終わるとロビーのアウトロ・ソロになっているが、そこもふだんよりいっそう変態的だ。そのまま「ゴーイン・ゴーイン・ゴーン」という曲が終わってしまうから、これはたぶんぼくだけじゃなく多くのリスナーのみなさんも同様だと思うんだけど、この曲だとディランのヴォーカルや歌詞の深刻さよりも、ロビーのギターの変態ぶりばかりが焼き付いてしまう。こんな危ない内容の歌だから、いい中和役になっていると聴くこともできる。

死(というか自殺か)を歌った危険な内容は、『プラネット・ウェイヴズ』8曲目「ダージ」もそう。dirge って葬送歌って意味だけど、これも自分自身を送る歌なのかなあ?こっちのサウンドはかなりシリアスな雰囲気を盛り上げちゃっているので、う〜ん…。ところでこの曲のピアノはディラン自身だよね?そうとクレジットはないが、リチャード・マニュエルじゃない気がする。それにからむアクースティック・ギターがロビー?とにかくデュオ作品だ。

ロビーのギターの妙味云々では、この要素はザ・バンドでも随所で聴けるエキゾティック・テイスト、はっきり言えば中国ふうな音階を弾いている部分が、『プラネット・ウェイヴズ』にもいくつかあるよね。例えば、このアルバムのなかの曲で最も有名なのは間違いなく「フォーエヴァー・ヤング」だけど、本来のものである6曲目スロー・ヴァージョンでのロビーは、やはり中国ふうなニュアンスを出している。かと思うと、同時にハワイアン・スタイルの痕跡か?と受けとれるフシもあるからおもしろい。そうそう、この「フォーエヴァー・ヤング」では、リック・ダンコのエレベがまるでコンガの音みたいに聴こえるよね。

ロビーのギターの中国ふうエキゾティズムは、5曲目「サムシング・ゼア・イズ・アバウト・ユー」でも10曲目「ネヴァー・セイ・グッバイ」でも聴ける。また、中国ふうじゃないが9曲目「ユー・エンジェル・ユー」みたいなこれまた楽しいはじけるラヴ・ソングでも、異な雰囲気を出している。おかげで「ゴーイン・ゴーイン・ゴーン」でそうだと言ったのとは逆の意味で、これまた中和役なギター。

だいたいがふだんからロビーのギター・フレイジングはふつうじゃないわけだけど、『プラネット・ウェイヴズ』では、なにがどうしてだかその変態ぶりがかなり煮詰められていて、楽しいよねえ。そのせいかどうか、たとえばファスト・テンポでやっているリプリーズの7曲目「フォーエヴァー・ヤング」なんかでもちょっとふつうのストレート・ロックには聴こえない。

しかしそれでもなんだかんだ言って、『プラネット・ウェイヴズ』でぼくがいちばん好きな時間は、1曲目「オン・ア・ナイト・ライク・ディス」だけどね。特に幕開け部。イントロでかなり音量小さくディランがアクースティック・ギターがほんのすこしだけチャカチャカっと刻み、それがたった二秒で終わってパッとブレイクになって、次の瞬間に「おんなないらいくでぃ〜す!」と歌いはじめたらガース・ハドスンのアコーディオンとリズムが入ってくる、あそこだ。リヴォン・ヘルムがブラシを使っているのもいい。ウキウキして最高に楽しい。

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