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2018/07/19

エキゾティック・ディラン 〜『欲望』

ローリング・サンダー・レヴューと題したボブ・ディランのかのライヴ・ツアー。1975年分と76年分と二回あったが、この2レグのあいだにリリースされたスタジオ録音作が『欲望』(1976年1月)。録音時期は1975年7〜10月。

公式発売されている CD 二枚組の『ライヴ 1975:ザ・ローリング・サンダー・レヴュー』は、1975年11月&12月のツアーからの収録で、だから翌年一月発売の『欲望』はすでに録り終え完成もしていた。実際、前者ライヴ・アルバムにも、(登場順に)「ロマンス・イン・ドゥランゴ」「アイシス」(英語だから)、「ハリケーン」「コーヒーもう一杯」「セアラ」がある。これら『欲望』からの新曲は、1975年ツアーの観客にとっては未知のものだったはず。

そんなライヴ・ヴァージョンもそうだけど、もともとのスタジオ・オリジナルだってにぎやかでエキゾティックな雰囲気があって、本当に楽しいんだよね。アルバム『欲望』は、ひょっとしてディランのスタジオ作品のなかで最も色彩感豊かでワイワイやっている一枚かもしれないよ。ぼくも本当に大好きだ。多国籍的だしね。

だからアルバム『欲望』では、ぼく的には1曲目「ハリケーン」、4「コーヒーもう一杯」、7「ロマンス・イン・ドゥランゴ」がすごく魅力的だということになる。「アイシス」「モザンビーク」「セアラ」もかなりいいなあ。それら以外は、実はイマイチだったりすることもある。だから、そういう曲の話は今日はしない。

『欲望』のなかで、ぼくもいちばん好きだし多くのみなさんも同意見を表明なさっているし、日本のバンド、たまも麦茶にしてカヴァーしているしで、やっぱり魅力的に聴こえていることが多いんだろう、間違いないと思うのが「コーヒーもう一杯」。たまのも下に貼っておく。
ディランのオリジナルのほうには、ヴァイオリンのスカーレット・リヴェラが参加しているのと、女性サイド・ヴォーカリストとしてエミルー・ハリスがいるのとがかなり大きな特徴&特長だけど、それはこの曲だけでなく、アルバム『欲望』のほぼ全編でそう。この二名がくわわっているのが、このアルバムの色彩感とエキゾティズムを増幅する役目を果たしている最大要因かも。

エミルー自身はべつにエキゾティックな歌手じゃないだろうが、ディランがみずからのリーダー作品で、しかもかなりたくさん、ほぼ新人の女性歌手と寄り添いながら歌ったことはそれまでなかった。混声でヴォーカル・ラインが進むばあいが多いことで、カラフルで楽しく、しかもポップなニュアンスだって出せていると思うんだ。

スカーレット・リヴェラのヴァイオリンは、やはり異国ふうなニュアンスを『欲望』に与えることになっているとぼくは聴いている。むろんヴァイオリン、というかフィドルは、ディランがそれまでやってきていたような音楽には特別な楽器じゃない。だけど、このアルバムでのスカーレットの弾くオブリガート(ソロはないはず)は、ディラン(+エミルー)の歌のラインと対位的に、離れつつ近寄って、多国籍的サウンドの拡大をもたらしている。

「コーヒーもう一杯」は曲そのものがやや中近東ふうだから、っていうのが最大の要因だろうけれどもね。でもスカーレットが弾く、たとえば1曲目「ハリケーン」にも、ストレートなロック・ストーリーテリングというだけじゃない異・他な音楽ニュアンスがあると思うよ。コンガが入っているからでもあるけれど。

7曲目「ロマンス・イン・ドゥランゴ」も相当に好きな一曲。テックスメックスっぽいよね。マリアッチふうな雰囲気もあるよ。ディランの音楽のなかにはメキシカンなラテン要素がかなりあるぞと、以前記事にした。そのときとりあげたカヴァー・アルバム『アイム・ナット・ゼア』に「ロマンス・イン・ドゥランゴ」はない。「コーヒーもう一杯」はあるので、ぜひ。
複数の曲でアコーディオンもあるし、マンドリンや、あるいはブズーキ(ギリシアの弦楽器)だって入っているものがある。アルバム・ラストの「セアラ」(か「セイラ」、でも「サラ」と発音している箇所もあり)は、当時の妻セアラに、どうか行かないでくれと懇願しているような歌で、これにもスカーレットがヴァイオリン・オブリガートでからんでくれているおかげで、ただのラヴ・ソングというだけでない多彩性を帯びている。でも、ふつうのラヴ・ソングとしてだけ聴いても、ディランの書いた最高のひとつじゃないだろうか。大好きだ。

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