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2018/07/30

ジャズとソウルを昇華するアリーサ

アリーサ・フランクリン2007年のライノ盤二枚組『レア&アンリリースト・レコーディングズ・フロム・ザ・ゴールデン・レイン・オヴ・ザ・クイーン・オヴ・ソウル』。しっかしなんだこのフル・タイトルの長さは?こんなの、短文レビューだったらアルバム題で字数の半分がうまっちゃうぞ(笑)。

どうでもいいことだった。タイトルどおりアリーサのアトランティック時代の未発表&レア音源集で、1966年の「アイ・ネヴァー・ラヴド・ア・マン(ザ・ウェイ・アイ・ラヴ・ユー)」から1973年の「アイム・イン・ラヴ」まで、全35曲。こ〜れが!とうていレアだとか未発表だとか、到底考えられないクォリティの高さ!本当にデモ、アウトテイク、シングル B 面、別ミックス、別テイクなのか??!!まったく信じられない。

この1960年代後半〜70年代前半にソウルの女王として君臨したアトランティク時代のアリーサにもオリジナル・アルバムがたくさんあるし、しかもどれもだいたい傑作で、だから入り口に立って「どこから入ればいいの?」と戸惑っていらっしゃるかたとか、あるいはとっくにファンであるみなさんでも、今日ちょっとアリーサを味見したいがどれにしようかな?という向きとか、要は "全員" に、迷わずこの『レア&アンリリースト・レコーディングズ』を手にとってほしいとオススメする。

つまり、この二枚組は蔵出し音源集なのに、それと同時に、宝石が並んだベスト盤なんだよね。掛け値なしだ。こんな信じられない事態がほかの音楽家でありうるだろうか?アリーサ自身だってこの時期の音源でしかなしえないことだ。いやあも〜う、ものすごいの一言に尽きる。とにかく、この『レア&アンリリースト・レコーディングズ』を聴いてほしい。

このアルバム、フィジカルだと二枚組で、一枚目だってすばらしいけれど、今日ぼくが言いたい趣旨からすると二枚目のほうがピッタリ来る。それに、個人的事情だが今日はちょっと時間の余裕がないんだ。だから、今日だけは『レア&アンリリースト・レコーディングズ』二枚目に話題を限定したい。そのうちフル・アルバムでもとりあげたいと思っている。

今日ぼくが強調したいこと、それはこの時期のアリーサに「ゴスペル」だ「ジャズ」だ「ブルーズ」だ「ロック」だ「ソウル」だなどとの区別がなかったということ。簡単にいま言いましたが、実際の歌でそれを実証するのはなかなかの至難事じゃないだろうか。『レア&アンリリースト・レコーディングズ』を、特に二枚目を聴いていると、アリーサにはこの区別を無効化するパワーとテクニックがあったのだと痛感する。

前から繰り返しているが、アトランティック時代のアリーサはもちろんすごいが、きわめて個人的にはその前のコロンビア時代がかなりの好物であるぼく。まあジャズとかブルーズとかが大好きな人間だからなんだけど、たったそれだけの理由なんだけど、『レア&アンリリースト・レコーディングズ』二枚目でのアリーサにはけっこうジャズ(っぽいものも含め)・ナンバーがあるし、ゴスペル・ソング(レイ・チャールズと共演するデューク・エリントン楽曲) だってある。

なんだかんだ言って、でもやっぱり『レア&アンリリースト・レコーディングズ』二枚目のオープナー「ロック・ステディ」別ミックスがあまりにもかっこよすぎて、超絶グルーヴィで、この曲、ここまでカッコよかったっけ?ここまでのソウル・ナンバーだったんだっけ?とびっくりしちゃったのは、ぼくの認識不足のせいだ。でも、マジでこの別ミックスはカッコよすぎるぞ。『ヤング、ギフティッド・アンド・ブラック』収録の本ミックスよりいいんじゃないかな。

その後もやっぱりソウル・ナンバー中心で進むけれど、そのなかに、たとえば「アイ・ウォント・ビー・ウィズ・ユー」「アット・ラスト」「ラヴ・レターズ」「アー・ユー・リーヴィング・ミー」といった、あまりにも沁みすぎるジャズ・ナンバーが含まれているんだよね。

それらは正確にはジャズ・ナンバーとは言えない。全体的に『レア&アンリリースト・レコーディングズ』で聴くアリーサのヴォーカル&ピアノは、ジャズでもソウルでもなんでもない、もっと違う次元の普遍性を獲得しているのだ。ちょっと聴くと、コロンビア時代のジャズ・シンギングに戻ったかのような印象の曲も含まれているけれど、そうじゃない。

素地にゴスペルを持ちつつジャズやブルーズ・ナンバーを中心に歌ったコロンビア時代と、その後、ソウルの女王となったアトランティック時代のその経験を踏まえ、ジャズ・ソングやジャジーにやるポップ・ナンバーでも、ジャズとソウルを合体吸収し昇華した、ありえない高みにアリーサは到達しているんだよね。ぼくにはそう聴こえる。これはジャズでもソウルでもない。しかし、ほかのなんでもありえない。

『レア&アンリリースト・レコーディングズ』で聴けるアリーサのやるものとは、ただの "歌" なのだ。それもとてつもなくすばらしすぎる、歌なんだよね。これらを前にすると、ジャズだソウルだロックだなんだかんだとやかましく言いたてる(わが)行為の愚かさが身にしみる思いだ。アリーサはなにもかも超えて、普遍的な歌のポピュラーさに、ほかのだれも到達しえない高次元で、到達している。

その結果、アリーサの歌は、わかりやすさ、とっつきやすさ、親しみやすさを獲得し、しかし同時になんぴとをも寄せつけない威厳と誇り、接近できないおそろしさをもまとっている。それは歌というものが、ひいては人間というものが、みんな持つ、存在としてのポップさとプライドみたいなもの、すなわち「真実」というものなのだろう。

そんなことを、『レア&アンリリースト・レコーディングズ』でのアリーサの歌を聴いていて、思ったんだ。

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