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2018/08/31

マイルズの1956年マラソン・セッション二回を演奏順に聴く

【セッションでの演奏順】

▪︎ 1956/5/11

1 In Your Own Sweet Way (D. Brubeck) 4
2 Diane (E. Rapee-L. Pollack) 5
3 Trane's Blues (M. Davis) 4
4 Something I Dreamed Last Night (J. Yellen-S. Fain-H. Magidson) 5
5 It Could Happen to You (J. Burke-J. Van Heusen) 2
6 Woody 'n' You (D. Gillespie) 2
7 Ahmad's Blues (A. Jamal)  4
8 Surrey with the Fringe on Top (R. Rodgers-O. Hammerstein) 5
9 It Never Entered My Mind (R. Rodgers-L. Hart) 4
10 When I Fall in Love (E. Heyman-V. Young) 5
11 Salt Peanuts (D. Gillespie-K. Clarke) 5
12 Four (M. Davis) 4
13 The Theme (take 1) (M. Davis) 4
14 The Theme (take 2) (M. Davis) 4

▪︎ 1956/10/26

1 If I Were a Bell (F. Loesser) 2
2 Well, You Needn't (T. Monk) 5
3 'Round Midnight (B. Hanighen-C. Williams-T. Monk) 3
4 Half Nelson (M. Davis) 4
5 You're My Everything (false start) (M. Dixon-J. Young-H. Warren) 2
6 You're My Everything (M. Dixon-J. Young-H. Warren) 2
7 I Could Write a Book (R. Rodgers-L. Hart) 2 
8 Oleo (false start) *2
9 Oleo (S. Rollins) 2
10 Airegin (S. Rollins) 1
11 Tune Up (M. Davis) 1
12 When Lights Are Low (B. Carter-C. Williams) 1
13 Blues by Five (false start) (R. Garland) *1
14 Blues by Five (R. Garland) 1
15 My Funny Valentine (R. Rodgers-L. Hart) 1

【レコード発売年月】

"Cookin'" 1957年 (1)
"Relaxin'" 1958年 (2)
"Miles Davis and The Modern Jazz Giants" 1959年5月 (3)
"Workin" 1960年12月 (4)
"Steamin'" 1961年5月 (5)

オリジナル・クインテットを率いるマイルズ・デイヴィスが、1956年5月11日と同年10月26日に、ニュー・ジャジーはハッケンサックにあるルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで、プレスティジ・レーベルのために行った、いわゆるマラソン・セッション二回。その全曲をスタジオでの演奏順に並べて通して聴いてみた。発見がいくつかあったので、以下にメモしておく。

まず、マラソン・セッションと言うけれども、二回とも、イメージほどに長大な時間をスタジオで費やしたわけじゃない(マラソン完走の世界記録は男女とも二時間を越える)。曲演奏時間じゃない合間の休憩や会話やリハーサルや記録されていない別テイクなども想像し考慮に入れた上で言わないといけないが、発売曲のラニング・タイムだけ見れば、五月セッションが1時間18分、十月セッションが1時間16分だから、どんなもんだったんだろう、二回とも半日スタジオにこもっていたとかいうわけじゃあなさそうだよね。

それからデータ面での瑣末なことを二点、先に書いておく。十月セッションの3曲目に演奏された「ラウンド・ミッドナイト」だけがいわゆる四部作に収録されず、まったく関係のない録音品といっしょくたで『マイルズ・デイヴィス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ』にプレスティジが入れたのは、もちろん大手コロンビアを意識してのことだろう。

さらに上記のとおり十月セッションの「オレオ」と「ブルーズ・バイ・ファイヴ」は、それぞれフォールス・スタート(5ヤード罰退なしw)も記録されていたが、オリジナル発売のレコードは本テイクのみの収録だった。CD だってしばらくのあいだはそうだったんだけど、ある時期以後はそれがそれぞれ頭にくっつくようになり、ネット配信音源でもそうなっている。個人的にはいまだに違和感がちょっぴりあるが、じょじょに慣れてもきた。

本論。五月と十月とで、ボスのトランペット演奏にはまったく差がない。すでに完成されている。オープン・ホーンでアップ・テンポ・ブロウするものも、ハーマン・ミュートを付けてまるで玉露のごときリリカルさを見せるバラードやトーチ・ソングも、すべてが完璧だ。レッド・ガーランド+ポール・チェインバーズ+フィリー・ジョー・ジョーンズのリズム・セクションも極上で、ほぼ文句なしだよね。

これらふたつにかんしては五月セッションでも十月セッションでも同じだ。大きな差、というか成長は、やはりジョン・コルトレイン。五ヶ月間で目を見張るような飛躍を見せているじゃないか。スウィング・ナンバーなら、たとえば五月の「ウッディン・ユー」と十月の「オレオ」での、それぞれのテナー・サックス・ソロを比較してみてほしい。それでも、五月なら「フォー」とかではかなり健闘してはいる。

リリカル・バラードでも、五月セッションでトレインが唯一参加させてもらっている「サリー・ウィズ・ザ・フリンジ・オン・トップ」と、十月の、たとえば「ユア・マイ・エヴリシング」とでのテナー・サックス・ソロを聴き比べれば、著しい成長がよくわかる。

十月ともなればさらに、4曲目の「ハーフ・ネルスン」。テナー・サックス・ソロの終盤で一瞬だけ音量が小さくなるというか奥に引っ込むところがあるよね(3:03)。あそこは、自分のソロはそろそろ終わりです、二管リフに入りましょう、さぁ、とボスにうながすべくコルトレインがマイクから離れた瞬間なんだよね。こんな堂々とした余裕は五月音源では聴けない。

ボスもトレインのそんな未熟さと成長を感じていたから、ということなんだろう、五月と十月とでのいちばん大きな差は、前者でトレイン抜きのカルテット演奏が散見するのに比べ、十月にはそれがまったくない。だから大雑把な印象では、五月では<マイルズ・デイヴィス+レッド・ガーランド・トリオ、+α>みたいな趣だったのが、十月にはちゃんとフル・クインテットとして機能しているんだもんね。

同じ事実の指摘だが、バラード、トーチ・ソング、ミディアム・ナンバーは五月に多く、十月には軽快なハード・スウィンガーが目立つ。コルトレインはまだまだだったとはいえ、カルテットとしてはすばらしいものだったから、五月に録音されたバラードなどの抒情味はケチのつけどころがない。でも、ハード・ナンバーでも最後のほうでやった「フォー」なんかは五人一体でいいところまでやっているけれどね。

五月回も十月回も、セッションが進むにつれ最後のほうではどんどん練れてきて、五人の演奏がこなれているというのは同じ。スタジオ・セッションは、ライヴ・ステージとはまた違った緊張を強いられるものだそうで、これはマイルズ本人も晩年までそう発言していた。これら二回のマラソン・セッションでも、演奏順に聴くとそんなことがよくわかる。

十月セッションで後半に録音されたものからの多くが『クッキン』と『リラクシン』になったということは、だからあの二枚のクォリティや評価の高さと、ファンのあいだでの人気の原因を物語るものなのかもしれない。『クッキン』にいたっては、すべての収録曲がここからとられているんだもんね。プレスティジとしてもそれを(マイルズのコロンビア移籍後)ファースト・リリース作品としたのは、むべなるかな。

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