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2018/08/18

ふたりのニーナ 〜 ヒンヤリ涼感ショーロ・サンバ二つ

いまならわかる、ベケールとヴィルチ、ふたりのニーナが似ているということが。ぼくが知ったのはベケールのほうの2014年盤『ミーニャ・ドローレス』が先。その後、ヴィルチのほうは、昨2017年の『ション・ジ・カミーニョ』で存在に気づき、それに先行する2012年のデビュー作『ジョアナ・ジ・タル』を買って聴いたら、最高だったよ。

二枚ともすでにこのブログでもそれぞれ別個に書いているが、今日はこのふたりのニーナの二枚が似ているということがぼくにもすこしづつわかってきたので、そのことについてメモしておきたい。なぜならばその共通点とは、いまのこの真夏に聴くのにもってこいのヒンヤリ涼感があるってことだからだ。

感触だけでなく現実のというか、フィジカル面でも大きな共通性となっているのが、二枚ともでキー・パーソンになっている10弦バンドリン奏者のルイス・バルセロスの存在。ルイスのプレイが本当に見事だ。ベケールの『ミーニャ・ドローレス』では、基本、7弦ギタリストとのデュオだけで伴奏が組み立てられているから、いっそうルイスのうまさが際立っている。ヴィルチの『ジョアナ・ジ・タル』でも硬質なバンドリン・サウンド(鉄弦だし)が輝いている。

この点だけで言えば、ヴィルチの2017年作『ション・ジ・カミーニョ』は(ほぼ)全編がルイスとニーナのデュオで進むのでもっとクッキリしているが、こっちの作品のほうはかなり湿り気があって重たい質感を、つまり温度高めな暑苦しい部分を、ぼくは感じている。だから夏向きじゃないように思うんだよね。ショーロふうサンバじゃないしね。ファドっぽいし。

そう、ヴィルチの『ジョアナ・ジ・タル』、ベケールの『ミーニャ・ドローレス』は、どっちも室内楽的なショーロ・サンバなんだよね。いまのこの八月時期の日本でなら、冷房の効いた小さめのカフェか自室か、どこかの快適な空間でこれら二つの音楽が鳴っていれば、文句なしにこの上なくコンフォタブル。マジだよ、ちょっと試してみて。ぼくはそうしている。

ふたりのニーナ。ヴィルチのほうの『ジョアナ・ジ・タル』のレパートリーは旧新とりまぜた有名サンバ・ソングで、それをちょっぴりレトロな少人数のショーロ・コンボふう編成で軽妙に仕上げてある。主役女性歌手の歌いこなしも爽やかで、サッパリしていて耳あたりがよく、趣味のいい音楽だよなあ。ここに漂うサロンふうな空気感が実にいい夏向きヒンヤリ性を届けてくれる。

ぼくはこっちを先に聴いていた、アルバム・リリース順なら二年後のベケール『ミーニャ・ドローレス』は、アルバム題どおり、サンバ・カンソーンの人、ドローレス・ドゥランのレパートリーを歌ったもの。サンバ・カンソーンって、夜の音楽という趣になっていることも多いけれども、ベケールの『ミーニャ・ドローレス』は真夏の昼下がりから夕暮れあたりが実によく似合う。

しかもヒンヤリした質感があるよね。伴奏のせいもあるけれど、このベケールのほうでは最大の涼感原因は主役女性歌手の発声にあるようにぼくは思う。ノン・ヴィブラートのナチュラルな声がスッと出て、しかもややかすれ気味。声量も小さいというか、これはわざとかな、ささやくようにつぶやくように声を出して、歌うというより、しゃべりかけている。

そのおかげでベケールの『ミーニャ・ドローレス』では、ぬくもりと温度や湿度を高めに持ちがちな(通常はそれが美点だが)サンバ・カンソーンを、真夏向きのドライな音楽に好変質させているよね。ぼくにはそう聴こえる。伴奏も、6曲目でウーリッアーの電気ピアノ、10曲目でペドロ・サーの電気ギターがソロを弾くけれど、それらもかなり抑制が効いていて(これはプロデュース意図に沿ったものなんだろう)、アルバム全体のサウンドの乾いた冷感を損なわないようになっているよね。

ヴィルチ、ベケール、ふたりのニーナ。二枚ともアルバムのはじまりはややにぎやかめでやって楽しくスウィングし、しめくくりは二枚ともしっとりめのゆったりバラード調。テンポもほぼないに等しいというほど。この点でもヴィルチの『ジョアナ・ジ・タル』とベケールの『ミーニャ・ドローレス』は共通する創りだ。このまま心地良い午睡に落ちたい。

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