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2018/08/02

ナターリア・ラフォルカデの汎ラテン・アメリカン古謡 Vol. 2

メキシコ人女性歌手ナターリア・ラフォルカデ。といってもぼくはぜんぜん知らず、ジャケット・デザインとアルバム題だけで推測して期待して買った今2018年新作『ムサス Vol. 2』(Musas: Un Homenaje Al Folclore Latinoamericano En Manos De Los Macorinos, Vol. 2)が初ナターリアだったのだ。だから vol. 1 をあわてて追って買った。こんなやつ、いないよねえ。ナターリアは知名度のあるシンガー・ソングライターらしいのに。

そう、このプロジェクト?バンド?とにかくかのロス・マコリーノス(ミゲル・ペーニャ&フアン・カルロス・アジェンデ)とやっているこれの二枚目がよかったんだ。じ〜っくりよくよく聴き込むとちょっとあれかな、と思わないでもないんだけど、第一印象の極上さを信用して、なにかちょっとメモしておきたい。一枚目はまだオーダーしたばかりで届いていないので、一耳惚れだった二枚目のほうについてだけ。

ナターリアはメキシコの有名シンガー・ソングライターと書いたけれど、『ムサス Vol. 2』は(Vol. 1は未聴だからなにも言えない)は、上で副題を書いておいたのでおわかりのとおり、中南米のフォルクローレをとりあげた内容。これが初ナターリアだったのは、ぼくにとって幸運だったのかどうかわからないが、声にちょっぴり幼さとかイノセンスを残しているように聴こえ、言ってみればアイドル・ヴォイスかもしれないので、そんなトーンでこんな渋く悲哀に富む曲群をやるのは、ちょうどいい適切さに感じる。

『ムサス Vol. 2』の全13曲のうち、ラスト12曲目「ガボータ」(マヌエル・ポンセ)はナターリアの歌わないギター・デュオ・ピース。すなわちロス・マコリーノスのみをフィーチャーした、アルバムのコーダのような役割なんだろう。だから1〜12曲目までに話題を限定してさしつかえないと思うけれど、そのうちナターリア自作は三曲のみ。ほかは他作と伝承曲で構成されている。

他作曲も20世紀前半に書かれたものが中心で、だからトラディショナル・ナンバーとあわせ、そしてそういったものとあわせるようにソックリな曲想で書かれたナターリア自作と、それら全体で <フォルクローレ> だという意味づけなんだろうね。メキシコ系ばかりでなく、キューバなどのカリブ音楽、(ブラジルを含む)南米大陸音楽にも踏み込んだ、汎ラテン・アメリカン古謡集といったところ。

なかにはボサ・ノーヴァ・スタイル(8曲目、マルガリータ・レクオーナの「エクリプス」)もあったりして、これはこのアルバムでは例外的かな?と思わないでもない。それ以外はほぼすべてが伝統スタイルの演唱で、アレンジャーをだれが務めているのか、附属ブックレットの字の小ささと地の紙色と文字色のコントラストの低さに、読むのを断念するしかなかった。が、たぶんナターリアとロス・マコリーノス三人の共同アレンジとプロデュースかな?

(ナターリア自作、他作も含め)フォルクローレ・ナンバーのリズムは、3/4とか6/8とかの三拍子系統が多いのも、いかにもラテン・アメリカン・フォークロアの世界だ。アイドル・ヴォイス的な適度な幼さを残しているというぼくの印象のナターリアだけど、適度っていうのは、かなりキュートで可愛い声質でありかつ落ち着いていて、しっとりと沁みてくるような歌いかたをして、それでもってラテン・アメリカ歌謡の深い根っこ部分を掘っているなという、そういうイメージなんだよね。

一曲だけナターリアじゃない女声が聴こえるが、10曲目「デスデニョーサ」(ベニグノ・ララ・フォステル)で、あのオマーラ・ポルトゥオンドが参加している。なんでもオマーラは『ムサス』の一作目にもゲストとして歌っていたらしい。しかしここでのオマーラの声はかなり若い。失礼ながらとてもこの年齢の老婆歌手とは思えないみずみずしさ。ナターリアと並んで聴こえてきても、デュオ部分でも、まったく遜色ないばかりか、むしろ自然体で無理なくスッと歌っているオマーラのほうが…。

そう、つまりナターリアの歌は、やはり良くも悪しくも<意欲的>なのだ。ラテン・アメリカ歌謡の核心部分に降り立って表現しようというこのプロジェクトの壮大さゆえ、やや構えたような姿勢が声のトーンに聴きとれるような気がぼくはする。決して否定的な意味ではない。ナターリアは大健闘し、成功をおさめていると確信している。

そんなナターリアの意欲を、しかし浮き足立たないように地道に支えているのが、やはりロス・マコリーノスのギタリスト二名、ミゲル・ペーニャとフアン・カルロス・アジェンデ。ヴェテランだし、彼ら二名のギター演奏にだけフォーカスしてアルバム『ムサス Vol. 2』を聴くことだってできるほどのナイス・ワークだ。見事というしかない。

ナターリア自作の1曲目「ダンサ・デ・ガルデニアス」の強いダンス・ビートに乗ってナターリアが歌うのにクラリネットやトランペットがからんだり、ロス・マコリーノス二人だけの伴奏で歌う2曲目「アルマ・ミーア」(マリア・グレベール)でのしっとり感や、カーボ・ヴェルデのモルナっぽい5曲目「ドゥエルメ・ネグリート」(伝承曲)もいいし。

こんな哀感もなかなかないと思うほどの(しかしキュート・ヴォイスでそれを歌うわけだが)6曲目「ルス・デ・ルナ」(アルバロ・カリージョ)が沁みるし、7曲目「デレーチョ・デ・ナシミエント」(自作)がキューバのアバネーラ・リズムであるのも個人的にはポイント高し。古いバルス・ペルアーノである9曲目「ラ・リョローナ」が、これまたしっとりしすぎていると思うほど。哀切感も強いが、声質はかわいい。

これも激しいパッションをダンス・ビートで表現する11曲目「テ・シゴ」(オスカル・アビレス)にもグッと来るが、なんたってアルバムの実質的ラスト・ナンバー、12曲目「ウマニダード」(アルベルト・ドミンゲス)のメキシカン・ボレーロが最高にすばらしく、聴き惚れる。伴奏はロス・マコリーノスのギター二台だけというに等しい。これは、いいなあ。

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