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2018/09/15

ローザ・エスケナージ

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わりと好きな女性レンベーティコ歌手、ローザ・エスケナージ。

持っているのはぜんぶで20曲。ローザの歌にかんしては、トルコのカラン・レーベルがリリースした『レンベーティカ』(Rembetika Aşk Gurbet Hapis ve Tekke Şarkıları、2007)と、イギリスの JSP(なぜここが?) リリースの『レンベーティカ』(2006)、『レンベーティカ 2』(2008)、『レンベーティカ 8』(2012)収録のものを持っているだけ。JSP は同シリーズをもっとたくさんリリースしていてぜんぶ買ったけれど、ローザが入っているのはこれだけじゃないかな。

それらからローザ・エスケナージの歌だけを選び出して、iTunes でひとつのプレイリストにまとめてあるのだった。CD-R にも焼いているし、iPhone にだって入っているのでどこででも聴ける。ローザのことは、たぶんぼくが聴いた範囲のレンベーティコ歌手のなかではいちばん好き。性別・年代問わず、大好き。

上記 CD アルバム収録曲は、レコード(録音?発売?)年の記載がないものもあるので、たんに収録アルバムごとにずらっと並べたぼくのローザ・エスケナージ・プレイリスト全20曲が以下のとおり。年の記載があるものは右に書いておいた。Rozika 名になっているのも同じひと。注意しないといけないのは iTunes に取り込む際、演者名欄が "Various" になってしまうものが数曲あった。

1. I Dzerkeza (The Circassian Girl)
2. Gazeli Sabach, Sti Mavri Yi Chrosto Kormi (I Owe My Body To The Black Earth)
3. Mas Kynigoun Ton Argile
4. Ime Prezakias
5. Merakli Rast Manes (1932)
6. Binda Yiala (1932)
7. Voliotissa (1934)
8. Mes' Tou Zambikou Ton Teke (1932)
9. Aravi Sabach, Dounia Pos Me Katindeses (1933)
10. Yiannoula (1934)
11. Yiannousena (1934)
12. Pali Mou Kanis to Vari (1936)
13. Hijaz Gazel, Polles Fores Ki I Kardhia (c. 1950s)
14. Gazel Nihavent (1936)
15. Hariklaki (1932)
16. Arapi Gazel Uşak (1934)
17. To Kanarini / Kanarya (1934)
18. Kadifes /Kadife (1930)
19. Çakıcis / Çakıcı (1954, Intanbul)
20. Min Orkizese Vre Pseftra / Yemin Etme Yalancı Kadın (1936)

1〜4 from "Rembetika" (JSP)
5〜7 from "Rembetika 2" (JSP)
8〜13 from "Rembetika 8" (JSP)
14〜20 from "Rembetika Aşk Gurbet Hapis ve Tekke Şarkıları" (Kalan)

ローザ・エスケナージは1883〜90年ごろのコンスタンティノープル(イスタンブル)生まれ。ユダヤ人の、いわゆるセファルディの娘で、第一言語はトルコ語だけど、多言語話者。かなり若いころにギリシア(テッサロニキ、その後アテネ)に移住。1929年ごろからレコード録音を開始したらしく、その後1970年代まで活動したとのこと(レコーディングは1960年代末あたりまで?)。亡くなったのは1980年12月2日。ってことは、上のセレクションはほぼ第二次世界大戦前の古いものばかりってことか。そういったアルバムしか持っていないんだから当然だ。

ローザ・エスケナージはスミルナ派レンベーティカの大きな存在らしく、しかしスミルナ派とピレウス派の味わいはたしかに違っているな、やっぱりスミルナ(イズミル)派のほうがいっそう魅力的だなとは聴けばわかることだけど、ローザがレンベーティカ史においてどんな存在なのかは、不勉強なのでよくわからない。

ただただローザ・エスケナージの歌が(同時に楽器をやっているばあいもある)、というか声が、魅惑的だなあと、そこにとても強い引力を感じ、ほかのレンベーティコ歌手ではやっていない単独プレイリストを数年前から作成して楽しんでいるっていうわけ。どのへんにそんなに強く惹かれるのか、自分でもロジカルにはちゃんと説明できない。

ローザ・エスケナージの声に漂っている強いメランコリー、ってことなのかなあ。なにか大切なものを喪失した、あるいはもとから一度も得られたことのない、そんな人間の持つ感情、自分は永遠にだれにも理解などされない、満たされることなどないのだという、そんなフィーリングを心情の根底に持つ人間だけが表現できる、ある種の憂い 〜〜 みたいなことなのかどうなのか、わからないが、ローザの声のトーンにはそんなものがあるような気がするような。

ローザの歌にぼくが強い共感をおぼえるのはこういったことなんだろうか?

上で書いたセレクション・プレイリストで聴けるローザの歌はどれもすばらしく美しいが、個人的な実感としては特に、たとえば2「Gazeli Sabach, Sti Mavri Yi Chrosto Kormi」(記載がないが、これもたぶん1930年代ごろだろう?)、16「Arapi Gazel Uşak」、20「Min Orkizese Vre Pseftra / Yemin Etme Yalancı Kadın」などは絶品中の絶品だ。

端的に言えば、これぞスミルナ派レンベーティカの真髄だと言えるチャームなんだけど、少人数編成の伝統的な伴奏をともなって、ローザが強い色気を薫らせながら強い声でフレーズをまわし、クラシカル・ヴォイスで典雅な気品をも香らせ、精神的に定まらない放浪の哀しさ、さびしさ、あこがれを美しく表現している。伴奏陣との掛け合いのタイミングも絶妙だ。

決してどこにも所属しない、なんの仲間にも入れてもらえようがない、入るつもりもない、どこともだれともつながりがない、帰るところがないが行く宛もない 〜〜 簡単に言ってだれも愛さずだれにも愛されない "exile" の悲嘆を、ローザ・エスケナージの声質に聴きとることができるように思う。

そんなローザのことが大好きなんだ。

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