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2018/09/11

スパニッシュ・ゴスペルなキース・ジャレット、とてもいいね

ソロ・ピアノ活動のぜんぶや、1980年代からのスタンダーズ・トリオのかなり多くやなんかは、ぼくからしたらとりえのない音楽に聴こえるキース・ジャレットだけど、それでもソロ・リーダー作品のなかに傑作と呼べるものがある。

もっとも、極私的な見解において、キース・ジャレットのいちばんいい演奏は、1970年初夏ごろ〜1971年いっぱいのマイルス・デイヴィス・バンド在籍時代にある。フェンダー・ローズやオルガンを気がフレたように弾きまくるサウンドには惚れぼれするよ。マイルズ・バンド時代の前のチャールズ・ロイド・カルテット時代が二番目かな、ぼく的にはね。ふつうは逆だろうけれども。

チャールズ・ロイド・カルテット〜マイルズ・バンド時代のキース・ジャレットの鍵盤演奏の特色は、ゴスペル・アーシーな部分があったということで、これがぼくにとってのジャレットのいちばん美味しいところ。その後独立してソロ活動をはじめてからはほぼ消えてしまったが、しかし今日書くアルバムのように、そのほかでも、ひょっこりと顔を出すことがあって、そういうものは実にいいんだよね。

つまりそんなひとつ、1974年録音75年発売のインパルス盤『生と死の幻想』。原題は『Death and the Flower』で、ふだんは邦題をあまり使わないぼくでも、これはそのまま使いたい。キース・ジャレット&チャーリー・ヘイデン&ポール・モチアンのトリオに、サックスのデューイ・レッドマンをくわえたレギュラー・カルテット、+さらにパーカッション(ギレルミ・フランコ)が参加している。このアルバムがキース・ジャレットの生涯最高傑作だろうとぼくは考えている。

といってもアルバム全体で見れば、A 面のアルバム・タイトル・ナンバーがメッチャいいぞと思っているだけで、というかこれはもはや奇跡としか言いようがないすばらしさなんだけど、B 面の二曲はイマイチ。それでも(全体の)3曲目「グレイト・バード」は、ややラテン・タッチなリズムに乗せてコレクティヴ・インプロヴィゼイションが進行するというもので、さほど悪くもないが、その前の「祈り」はどこがいいのやら。

「グレイト・バード」が悪くないというのは、おもしろくない「祈り」がある同じ B 面のなかで比較すれば、という話であって、A 面の「生と死の幻想」とは比較できない。それほど、曲「生と死の幻想」は、たとえようもなく美しい。高揚感があって、その盛り上がりかたは黒人ゴスペル・ミュージックの持つそれと同質で、さらに旋律展開がややスパニッシュ・タッチじゃないか。

こう書けば、もう十分言い尽くしたような気がするけれども。曲「生と死の幻想」でゴスペル的に高揚するのは、おしりの約三分間。チャーリー・ヘイデンのベース・ソロのあと、17:23 から最終テーマをデューイ・レッドマンが吹いて(ジャレットの書いたこのテーマ・メロディがこりゃまた格別にはかない美しさで、しかもスパニッシュ・ニュアンスがある)、それが終わりかけのタイミングで(19:18 あたりから)ジャレットがかなりリズミカルなブロック・コード・リフを連打するようになると、打楽器奏者二名も連動し、バンドが跳ねはじめる。

そこからデューイをフロントに出しつつ五人全員で一体となって、ゴスペル・アーシーな盛り上がりを見せているじゃないか。演奏終了まで続くこの約三分間はマジ最高だ。特にジャレットのピアノ伴奏やソロや、その背後でのギレルミ・フランコの出す打楽器サウンドなど、も〜う文句なしにすんばらしい。

こんなキース・ジャレットはほかでは聴けない…、と思うなかれ。チャールズ・ロイドやマイルズ・デイヴィスのバンドでならたくさん聴ける。曲「生と死の幻想」はそのテーマ・メロディの動きが絶妙に切なく美しく高揚するものなんだけど、まず演奏開始後はなかなかそれが出てこない。ジャレットやそのほかほぼ全員が参加している打楽器アンサンブル・パートに続き、チャーリー・ヘイデンのソロになり、次いでボスのピアノが出てくる。

ピアノの音が聴こえはじめると突然、といった感じで雰囲気が変化する。そこまでは乾いた硬質なサウンドだったのが、突如湿ってリリカルになる。もちろんキース・ジャレットはリリカルさ、というか情緒過剰なところが(悪くもある)持ち味なんだけど、この部分だけでなくこの曲全体を通しては、ちょうどいい具合にスパニッシュ・ゴスペルみたいな曲想を盛り上げているじゃないか。ピッタリだ。

そしてデューイ・レッドマンが吹くメイン・テーマが、7:58 でようやく出現。そこからは、おしり三分間のゴスペル高揚も含め、ぼくにとっては気持ちいい時間が過ぎていくんだよね。だから正直に言うと、この曲「生と死の幻想」は、メイン・テーマが出てくるまでの約八分間が不要。ぼく的にはね。

キース・ジャレットのこんな持ち味と表現は、なんども言うが極私的には、それこそがこの人のいちばん美味しい、気持ちいいところなんだよね。チャールズ・ロイド・カルテット時代のそんなジャレットはみなさんよくご存知だと思うので、マイルズ・バンド時代の典型例と、ぼくは評価しないスタンダーズ・トリオでも稀に出現した典型例をご紹介しておく。

スタンダーズ「ガッド・ブレス・ザ・チャイルド」https://open.spotify.com/track/5Y6FKf0AXa77tYxIGNYOvR?si=7dkHSrokRSyI9DzqnuoRyg

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