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2018/09/04

「チュニジアの夜」決定版はこれ

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。1958年にラインナップを一新、リー・モーガン、ベニー・ゴルスン、ボビー・ティモンズ、ジミー・メリットの編成になった。その後、サックスがハンク・モブリーを経てウェイン・ショーターに交代。そのウェインが1964年に辞めるまでの計五年間が、このバンドの最も充実していた時期だった。その間、カーティス・フラーをくわえての三管時代もあった。

そのなか、ウェイン・ショーター時代では、特に1960年録音61年発売の『ア・ナイト・イン・チュニジア』がかなりいい。その時期のジャズ・メッセンジャーズ最高傑作かもしれない。あまりにも有名すぎるジャズ・スタンダード(ディジー・ガレスピー作)を、ブレイキー自身それまでも無数に演奏してきていたにもかかわらずいま一度正式スタジオ録音しアルバム題にまでしているわけだから、自信のほどがうかがえようというもの。

1989年のリイシュー CD 以来、このアルバム『ア・ナイト・イン・チュニジア』には二曲のボーナス・トラックが入るようになり、Spotify などネット配信でも同じ。しかしそれらもあわせると、このアルバムの意図がわかりにくくなってしまう。なぜなら追加二曲のうちひとつはポップ・スタンダード(「ウェン・ユア・ラヴァー・ハズ・ゴーン」)だから。

アルバム『ア・ナイト・イン・チュニジア』とは、一曲の超有名アフロ・キューバン・ジャズ・スタンダードの、大上段に構えた(やや大げさで?)真っ向勝負な再演を軸に、それ以外は当時のフレッシュなバンド・メンに書かせたオリジナル小品を並べて、全体的に、リーダーであるドラマーのバンド統率能力(ドラミング、リズム・アンサンブルなどとあわせ、曲創りなどでもサイド・メンをうまく活用できること)を示すという、そういったプロダクションなんだよね。

オリジナル小品のなかでは、ウェインの書いた2曲目「シンシアリー・ダイアナ」(レコード A 面はここまで) とリー・モーガンの5「コゾーズ・ワルツ」はどうってことないかなと思う。個人的には、ボビー・ティモンズ作の3「ソー・タイアド」、モーガン作の4「ヤマ」がおもしろい。ところでこの3、4の曲名は逆でもよかったんじゃないの〜?

だってさ、「ソー・タイアド」はこんな曲題だけど気だるいいところのない快活陽気でラテン・タッチな曲。いっぽう「ヤマ」はタイアドなというかレイド・バックの極地みたいなリラクシン・スローなんだよね。大学生のころ、「ヤマ」のこんなくつろぎすぎているような雰囲気が大好きだった。ちょっとしたフランス映画なんかにも似合いそうで、実際、当時のハード・バッパーはフィルム・ノワールの音楽をよくやった。

でもいま聴きかえすと、「ソー・タイアド」のラテン・タッチのほうがおもしろいかも。アフロ・キューバン・リズムは、このアルバムのやはりメイン・テーマなんだよね。ボス、ブレイキーの、あるいはプロデューサーの、そんな意図と指示で、そういった曲がほしいんだとあえてオーダーしてティモンズに書かせた可能性だって考えられる。サビ部では4/4拍子だけどね。さらにドラマーだけでなく、ベーシストもピアニストもラテン・リフを一丸となって演奏しているのがイイ。

そんなわけでアルバム1曲目の「チュニジアの夜」。ここで聴ける1960年8月14日録音ヴァージョンはスペシャルだ。11分以上もあるこの演奏は、テーマ演奏部を除くと、大まかに言って打楽器乱れ打ちパートと、トランペット、サックスそれぞれによるカデンツァ・パートに分けられる。もちろん本編部にも管楽器ソロはあるのだが、ソロ内容という意味ではカデンツァ部をこそが聴きもので、本編中のソロは、その背後でのリズム三人の動きにこそ着目したい。

ボスのブレイキーも、そんな本編アレンジにしたかったから、別個、ショウケースとしてのカデンツァ部を設けたんじゃないかとさえ思う。もちろんこの当時のジャズ・メッセンジャーズの音楽監督はウェイン・ショーターなので、ウェインが曲のそんなアレンジを手がけた可能性はある。しかしそれだってウェインがそうやるだろうという信頼、つまりはボスのリーダーシップ下で、ということになるじゃないか。

このヴァージョンの「チュニジアの夜」では、イントロ部で、もう打楽器火山大爆発。打楽器以外はジミー・メリットのベースだけ。ほかのサイド・メンはみんなパーカッション類を手に、叩き刻んでいる。なかでもだれだかわからないがクラベスで3・2クラーベのパターンをやっているのが目立つ。マラカスも聴こえる。メイン・テーマ演奏を導くものとしてピアノ・リフが出てくると、サイド・メンのパーカッション乱打はいったんおやすみ(ってことは管楽器の二名だけがやっているのか?)。

ホーン二名のソロが終わるとベース・ソロ部。そこはセロニアス・モンクの「エヴィデンス」みたいなアレンジだ。しかしモンクのそれと違っているのは、合奏部リフの入りかたがクラーベ・パターンを援用したものであるところ。それも終わると、パーカッション・オリエンティッドなリズム・オージー・パーティに突入。ここでもベーシスト以外はたぶん全員が打楽器を打ち鳴らしている。いやあ、楽しいですねえ。

演奏終盤の、トランペット、テナー・サックスの順で演奏されるカデンツァ・パートでは、二番手ウェイン・ショーターのそれが、どんちゃん騒ぎの狂熱を冷ますかのようなひんやり爽やか触感のフレイジングで、余熱を残しつつ見事にクール・ダウンしてくれるのもナイス。

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