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2018/10/31

ちょっと気分だから、連続(ソウル)トレイン、といってもジャズ

なにを隠そう、アトランティック盤やインパルス盤など、とにかくぜんぶを考慮に入れてもいちばん好きなジョン・コルトレインのアルバムが、プレスティジ盤『ソウルトレイン』(1958)。録音は1958年2月7日のワン・デイト・セッションだけど、同年同月4日には、再起動したマイルス・デイヴィス・バンドで録音済み(コロンビア盤『マイルストーンズ』の一部)。

つまりセロニアス・モンク・コンボでの修行を終え、ふたたびこのボス・トランペッターのところへ戻って、しかし以前とは見違える活躍を聴かせるようになりはじめた時期だよね。ボスのコロンビア録音でもその目覚ましい吹奏ぶりはよくわかるし、かつてはオミットされていたリリカル・バラード演奏などでもしっかりソロ・パートを任されるようになっている。

プレスティジ盤『ソウルトレイン』はそんな時期の録音だけに、中身は文句なしに充実している。なんたってぼくはこの一枚のことが、大学生のころから好きで好きでたまらない。アトランティックやインパルスのものに比してもどうしてこんなに好きなのか、自分でも理由がわからないのだが、むかしは A 面のほうをよく聴いていた。いま聴きかえすと B 面分だって同じすばらしさだからなあ。

たぶん、むかしのぼくは「グッド・ベイト」「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」というふたつの曲そのものが好きだったということなんだろうか。緊迫感だって漂うばあいがある B 面(特にラストの「ラッシャン・ララバイ」)と違い、この A 面二曲はたいへんにくつろいだリラクシング・ムード横溢なのが好きだったのかも。

その後、「グッド・ベイト」のことが嫌いになってしまい、なんだ、このほんわかひょこひょこ路線でのどかなメロディは〜っ?!とか思いはじめてしばらくのあいだは、たとえばホレス・シルヴァーやソニー・ロリンズが書く同傾向の曲もやはり嫌いだったから、要はその時期、ユーモラスなファンキー・ナンバーを受け付けなかったってことなんだろう。あれはどうしてだったのか、いまやわからず憶えてもいない。

<ファンキー>とは、決して「モーニン」(ボビー・ティモンズ)みたいなゴスペル調アーシー・ジャズのことだけを指すのではなく、同じく黒人教会にルーツを持ちながらもユーモア感覚を活かしたスカしてクールな感覚でもあるんだと、これに気付きはじめたのはスライ&ザ・ファミリー・ストーンを知ったころだ。そして、中村とうようさんがそんなことを明言してある文章にも、すこしあとに出会った。

それで、たとえばボビー・ティモンズ他はスライと(そのままだと)つながりにくい気がするけれど、ホレス・シルヴァーのファンキー・チューンなんかはあんがい簡単につながっているなあと、するとファンキーと呼ばれるこのクールなユーモア感覚は、たとえばいわゆるジャイヴ・ミュージック(系ジャズ)からの流れかもしれないし、アフリカ音楽のなかにもあるなあとか、こんな理解ができるようになったのは、本当にごくごく最近の話だ。

ふりかえって、トレインが『ソウルトレイン』でやる「グッド・ベイト」のことも評価しなおすようになって、むかしみたいにもう一回好きになっているけれど、愛好の中身が今度は違っている。あるいは、大学生のころに、こんなくつろぎユーモア・タイムがいいなあと聴きながらぼんやり感じていたのは、なにかを察知していた?いやいや、それはないだろうね。

「グッド・ベイト」でもそのほかの曲でも、トレインの例のシーツ・オヴ・サウンド手法が完成に近づいているのを容易に聴きとれるけれど、この点はみなさんが、というかそもそもレコード初版時からアイラ・ギトラーが指摘していることだから、いまさらぼくが言うことなんてなにもない。ただこれ、息継ぎ(ブレス)しんどいだろうなぁとも思う。

アルバム2曲目のきれいなリリカル・バラード「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」。A 面のなかではどっちかというとこっちのほうが好きだった。これはいまでも変わらない。そしてこのプレスティジ録音以後トレインの定番レパートリーになって、インパルス時代にもライヴではしばしばやっていた。あの長すぎるカデンツァ付きでさ。あまりにも長いんだ。その吹奏内容も時代によって変化している。

それらひっくるめて、この1958年初演が、いまではいちばんしっくり来る気がしている。それだって10分以上もあるけれど、必ずしもトレインの独擅場じゃなく、ブロック・コード・ワークが美しいレッド・ガーランドのピアノ・ソロ、かなり内容がいいポール・チェインバーズのベース・ソロも聴かせるものだ。トレインの吹奏も、わりとシンプルでストレートなのが、このラヴ・ソングのチャーミングさをきわだたせている。そう、近年、ぼくはこういった嗜好に変化していて、凝った複雑なソロ展開は遠ざけはじめているんだよね。

B 面に入って「ユー・セイ・ユー・ケア」はまあまあテンポが速いけれど、それでも急速なフィーリングじゃなくリラクシングなのがいい。トレインのフレーズ創りもぴったりいい感じだし、ドラムスのアート・テイラーってうまいんだなあってわかる。次の「シーム・フォー・アーニー」ってあまり知らない曲だけど、これもポップ・スタンダードなんだっけ?トレインがここでとりあげなかったら埋もれちゃっていたものかも。

ラスト「ラッシャン・ララバイ」はアーヴィング・バーリンの書いた正真正銘スタンダードで、ジャズ・メンもよくやる。ヴィク・ディキンスン(トロンボーン奏者)の中間派ジャズのヴァンガード盤のものも有名だよね。あのヴァージョン、大好きなんだよね、ぼくは。

そんなバーリンの曲をトレインが激速調にアレンジして吹きまくる。鬼気迫るというか、アトランティック〜インパルス時代を予告したような勢いだよなあ。すごいの一言。マイルズ・コンボでも1960年の欧州ツアーではアホみたいに吹きまくってボスをあきれさせた、あの超多弁ぶりがすでにここにある。そんな饒舌トレインに、ぼくは心から共感する。トレインの心中になにがあったのか、わかるわけもないけれど、ぼくなりに…、ね、まあなんだかちょっとさ…、わかるとは言わないんだけど。

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