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2018/11/20

爽快な無垢さから変態露悪趣味へ 〜 初期プリンス

1984年の『パープル・レイン』で大爆発する前のプリンスだと、前作の『1999』(82)は相当いいよね。あの世界ができあがっている。デビュー作の『フォー・ユー』(78)もあんがい?いいぞ、きれいにまとまっていて好きだ。これら二作についてはすでに書いたので、それ以外の『プリンス』(79)『ダーティ・マインド』(80)『コントロヴァーシー』(81)について簡単にまとめておきたい。

二作目の『プリンス』が発売された1979年には、エピックに移籍しクインシー・ジョーンズと組んだマイケル・ジャクスンの『オフ・ザ・ウォール』もリリースされている。もちろんバカ売れしたのはマイケルのほうで、シングル・レコードも売れ、一躍時代の寵児となった。しかし同年の『プリンス』の内容が、わりと似たようなものなんだよね。

西海岸的で爽快な明快さ、キャッチーでわかりやすいソウル〜ディスコ調の曲つくり、歌詞内容は無垢な青春謳歌のようなもので、しかもシンセサイザーも多用されているし、歌とギターはもちろん自前だが、くわえてマシンを中心とするサウンド・メイクがある。『オフ・ザ・ウォール』と『プリンス』は、やっぱりあの時代の産物だったね。圧倒的にマイケルが売れたのは、キャリアと知名度ゆえだ。

すぐ次の『ダーティ・マインド』で顔を見せるようになるねちっこい淫靡さは、『プリンス』にはない。一曲「バンビ」を除いてはね。それから『プリンス』では、歌なしのインストルメンタル・パートがけっこう長かったりもする。1曲目「アイ・ワナ・ビー・ユア・ラヴァー」のアルバム・ヴァージョン後半もそうだ。延々と三分以上ジャムっている。これはダンス・フロア用ってこと?ディスコかなんかの?

「セクシー・ダンサー」も基本ディスコだけど、ここで聴ける乾いたシャカシャカっていうギター・カッティングはのちのちにつながっていくものだと思う。この1979年当時だとナイル・ロジャーズとかロジャーみたいなひとたちに通ずるファンク・ギターと言えるけれど、もっとあとになればプリンスがぶっち切りの No. 1として君臨することになるものだ。『フォー・ユー』でこういうギター、聴けましたっけ?ファンク・ギター奏者のプリンス誕生?21世紀になってからの『ワン・ナイト・アローン...ライヴ!:アフターショウ』とかを知っていると、なかなか感慨深いものがある「セクシー・ダンサー」だ。歌詞はやっぱり屈託ない。

そんな屈託なさが聴けたのに、『ダーティ・マインド』『コントロヴァーシー』では早くもそれが消えかけて R-18 的な世界が展開されはじめている。サウンドも、ソウル/ディスコというより、この1980年前後のいわゆるニュー・ウェイヴっぽくて、『1999』の予告にもなっている。さらにノリが直線的で、踊ることを拒否しているかのようなビート創りも聴ける。ぼく的にはそんな部分はイマイチだけど。

そいで、ちょっと近い時期のシンディ・ローパーにも似ているよね。シンディをニュー・ウェイヴって呼んでいいんだっけ?曲としてシンディが歌った「ウェン・ユー・ワー・マイン」があったり(前作にもシャカ・カーンがやった「アイ・フィール・フォー・ユー」があり)するのは、キャッチーなポップス志向というだけのことだろうけど。

ノリもサウンドも歌詞もねちっこく粘り気があってめまいがするようにハードな幻惑ファンク路線をプリンスがとりはじめるのは『パレード』からかな、と思うんだけど、それまでは明快でキャッチーなロック/ポップスっぽい音創りが、セクシー・バラードや、ソウル/ディスコ調の曲と並んでいたかも。『ダーティ・マインド』『コントロヴァーシー』らへんは、そんなプリンスの幕開け二枚だったかもなあ。

この『ダーティ・マインド』『コントロヴァーシー』には鮮明にあるけれど、それ以後はプリンスの音楽の表層からは消え伏流水となり、ほんのときおり垣間見えたり、有機的になにかのなかに養分として溶け込んだりだけするようになったのが、懐古調のオールディーズ/ロカビリーふうなポップ・チューンだ。「ウェン・ユー・ワー・マイン」もそうだけどそれ以上に、「ゴナ・ブロークン・ハート・アゲン」「ジャック U オフ」など。

もっとも、「ジャック U オフ」のほうは直截的なセックス・ソングなので油断ならないんだけれども。そんな露骨な部分は、やはり『ダーティ・マインド』よりも『コントロヴァーシー』のほうが増えていて、エロ度が強くなっている。っていうか、これは露悪ナルシズムだから、もはやエロとかセクシーでもないのか。だから、このころからプリンスは気持ち悪いっていう音楽ファンが増えたのかなあ。

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