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2018/12/15

ジャコーを中心に、バンドリンを囲むベテランと新進と

(個人的には)ブラジル・イヤーだった2018年。ジャコー・ド・バンドリンの生誕100周年でもあった。言っときますがショーロ史上最重要人物のひとり。そこで2018年に同じ楽器バンドリンのベテラン、ジョエール・ナシメントと新進、ファビオ・ペロンを組ませてジャコー曲集をやらせてみようというのは、だれの発案だったんだろうなあ。プロデューサーがカルロス・アルベルト・シオンとエンリッキ・カゼスだから、そのどっちかってことかな。

二名のバンドリン奏者ジョエール・ナシメント(8弦、ベテラン80歳)とファビオ・ペロン(10弦、新進28歳)にくわえ、エンリッキ&ベトのカゼス兄弟、7弦ギターのジョアン・カマレーロ(これはエンリッキ・カゼス・トリオ?)と、この五人が演奏の中心になっている。曲によってはフリューゲルホーンやアコーディオンその他が参加する。やっているのはもちろんすべてジャコーの曲で、アレンジはエンリッキ。

できあがったアルバムが『ジャコー・ド・バンドリン 100 アノス センティメント&バランソ』(Jacob Do Bandolim 100 Anos Sentimento & Balanço)。収録の12曲ぜんぶがジョエールとファビオの共演ではない。ふたりのタッグが聴けるのはアルバム冒頭の1、2曲目と終盤の11、12曲目の四曲。そのあいだはそれぞれ単独での演奏。7「De Coração A Coração」だけはデュオ演奏で、ジョエールのバンドリンとジョアンの7弦ギターのみ。

そのバンドリン+7弦ギターのデュオ「De Coração A Coração」にもはっきり表れているこの湿った泣きの情緒、これがショーロのショーロたるゆえんで、歌心を全開にし、しっとりと雨がそぼ降るかごときフィーリングをこれでもかと表現しているのが実にいいね。むろんジャコーの曲がもとからいいってことだけど、ジョエール&ジョアンのデュオ演奏が美をきわだたせているなあ。

そうそう、以前ピシンギーニャ関連で言ったような気がするけれど言っていないかもしれないんだが、ジャコーはそこまで古いひとじゃないにせよ、ショーロの古典名曲って、だいたいだれがやってもふつうに演奏すればいい感じに聴けるように仕上がるって思わない?ぼくはそう感じている。つまりこれは、クラシック音楽の名曲なんかと同じで、ある種の普遍性・永続性を持っているという証拠なんだよ。ショーロって、ポピュラー音楽でそんな曲が最も多い世界かも。

アルバム『ジャコー・ド・バンドリン 100 アノス』収録のジャコーの曲は、上で書いたような、ゆったりしたテンポでのサウダージ全開の泣きのショーロ心情と、快活なリズムを持つ楽しく愉快なショーロ(それってショーロがもとから持つストリート感覚の発露?)に大別できるようだ。くわえて、ややエキゾティックなリズムやニュアンスを持つものだってある。

しっとりした泣きのショーロが1、3、7曲目。快活ダンス・ショーロが2、4、5、9、12あたりかな。どっちとも言えない中間的なのが8と10。エキゾティック・ショーロというか、要するにスパニッシュ(系ラテン含む)音楽要素を色濃く反映しているのが6と11だ。(ベトのソロがある)9はこっちかも。6「Assanhado」、11「Santa Morena」は、どっちもジャコーのオリジナルからしてこんな感じになっていたもの。後者はフラメンコ。こういったエキゾティック・リズムのショーロでは、ベトのパーカッションも大活躍している。

ベトを除き(基本)ストリング・アンサンブルで構成されている音楽なので、複数のバンドリンやカヴァキーニョや各種ギターなどがからみあいぶつかりあって、音のキラメキが生まれ輝いているのがとってもいいね。同系楽器が複数からむときには、たとえば金管アンサンブルなんかでも同様の効果が生まれると思うんだけど、ギター型弦楽器中心のショーロだと、これまたえもいわれぬ独特のキラキラさがあるなあ。

そんな世界の先駆者にして世界を確立したジャコー・ド・バンドリンの生誕100周年に、同じ楽器の古参と新進二名を共演させ、偉大なる先達の名曲の数々をとりあげて21世紀に再現し、不朽の音楽美、音楽享楽を味あわせてくれる 〜 こんなことはブラジルのショーロ界のほかではなかなかむずかしいことじゃないかなと思う。

『ジャコー・ド・バンドリン 100 アノス』もまた2018年を代表する傑作とかじゃない。落ち着いた佳作といった程度。だけど2018年にしか生まれえなかった作品には違いないし、バンドリンを通じての世代を超えた心と技術の交流、人間的あたたかみを感じられるアルバムで、好感度は高い。

とってもハート・ウォーミングな音楽だしね。まあショーロってそういうものだけどさ。

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