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2019/01/31

無国籍な青春サウンドトラックとしてのスティーリー・ダン(1)〜 『エイジャ』

1974年だっけな、バンドとしては崩壊しライヴ活動を停止したスティーリー・ダン。以後スタジオ・ワークに専念し、主にジャズ/フュージョン系の辣腕ミュージシャンたちをどんどん起用するようになって誕生したのが77年『エイジャ』、80年『ガウーチョ』。このころは、ドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカー、ゲイリー・カッツ(プロデューサー)の三頭体制だった。

ところで、現在ぼくが聴いているスティーリー・ダンの CD は、と言っても『ガウーチョ』までの話だけど、ぜんぶ紙ジャケットの日本盤で、SHM-CD 仕様のリマスタード・アルバム(2000年発売)。復帰新作にあわせてリマスターされたってことかな。七枚をぜんぶいちどに買ったはず。音質がいいんだよね。スティーリー・ダンのような、特に『エイジャ』『ガウーチョ』あたりの作品を聴く際には、ここは重要になってくることだ。

『エイジャ』にしろ『ガウーチョ』にしろそうなんだけど、一種のサウンドトラック、言いかたを換えれば BGM のようなもんだとぼくは思っているわけ。上質なそれを創りだすために、三人が凝りに凝ったスタジオ・ワークの繰り返しでこだわって練りに練って作業したけれど、そういった専門方面にばかりスティーリー・ダン関係の話が行ってしまうのには、ちょっと違和感を持つこともある。

スタジオ・レコーディング作業に通じているわけでもなければ音楽の専門家でなく演奏家や歌手でもないぼくなんかには、やはり『エイジャ』も聴きやすいスムース・ロックに聴こえるわけだよ。なかなかすごいことが展開されているなとは聴けばわかるんだけど、そこにこだわりすぎずに、できあがった作品から得られる質感にこそ耳を向けていきたい。というか、ずっと長いあいだ、そうしてきた。

『エイジャ』のばあい、このアルバム題兼曲題とジャケット・デザインのおかげで、極東のイメージがちょっぴりあるかもしれないが、これはまあはっきり言っって<なんちゃって>なのだ。いい加減というか、コリアでも日本でもチャイニーズ・ミュージックでもない、三人が抱くなんとなくのインチキ東洋イメージ。それが『エイジャ』のバックボーンだ。

しかも曲「エイジャ」にはラテン音楽ふうのニュアンスだってあるよね。ウェイン・ショーターのサックス・ソロが入るパートでスティーヴ・ガッドがどんどんたたみかけるドラミングを聴かせるが、ここの荘厳な迫力はものすごい。爽快感だってある。しかも一曲を通し、ピアノが弾くフレーズが跳ねていて、だからそのせいでもラテン風味があると言える。しかし、歌詞にちょびっと出てくるものの、東洋イメージはホントいい加減だなあ。っていうか、どこにあるのか?

こんなことは『エイジャ』全体をとおし言えることで、ドナルド・フェイゲンやウォルター・ベッカーの少年・青春時代へのノスタルジーのなかにあるチープなまがいものミュージック、それはつまりテレビ・ドラマや映画などのサウンドトラックなんだけど、そんなようなものをグッと上質化して一流のアダルト・オリエンティッド・ロック、すなわちジャズ・フュージョン的ロックに仕立て上げたのが、アルバム『エイジャ』なのだ。

そうするために、上等なフェイク音楽作品を創りあげるために、気持ちと時間とお金と時間と人員を惜しみなくフル稼働させ、練り上げた。スティーリー・ダンでも、これ以前の作品ではここまで明確じゃなかったと思うんだけど、ジュヴナイル・ノスタルジーのサウンドトラックとして創った音楽ってことがさ。だから、『エイジャ』には、アルバム全体をとおし、なんだか独特の甘酸っぱさみたいなものがあるね。

関係ない話かもしれないが、アルバム『エイジャ』では、2曲目のタイトル曲のほか、4曲目「ペグ」、ラストの「ジョジー」もかなり好き。どれもミュージシャンたちの最高級の辣腕技術がなかったら音にならなかったものだけど、この部分にだけこだわりすぎるのもよくない。もっと、こう、できあがっていま聴ける曲としての、青春回顧サウンドトラック的な受け止めかたを大切にしたい。

(特にフェイゲンの)そんな志向は、自作『ガウーチョ』でも続き、そしてなにより、この二部作の事実上の続編であるソロ作『ザ・ナイトフライ』(1982)でもフル展開されている。

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